ドラゴン討伐戦
ドラゴン戦決着です!
「セシリア!」
「もう大丈夫…なのです、か?」
「心配かけたね。彼女のおかげで、予想よりも早く回復できた。これから、彼女にも参加してもらう。回復役に集中してもらうから、よろしく」
「イリスよ。よろしくね、可愛らしいお嬢さん?」
「っ!! よ、よろ…しく、お願、いし…ます」
ドラゴンとの戦闘に加わる前に、セシリアにイリスさんを紹介する。セシリアは、イリスさんに声をかけられた為か、出逢った頃のような、喋り方に戻ってる。
「じゃあ、僕は行くけど、サポートよろしくね!」
「は、はい!」
「死なないようにね」
僕は、2人の声を背に受けながら、リンとサキの元へと急ぐ。
「サキ! そっちに尻尾!」
「了解!」
2人に近づくと、リンが指示を出しているのが聞こえてきた。
なるほど! リンが魔眼で攻撃を読んで、サキに指示を出す事から、サキは攻撃に参加出来ていたのか。
「2人とも!」
ドラゴンの攻撃を回避した2人の元へ駆け寄る。
「ノゾムぅ…」
「もっとかかると思ったけど、随分早いね?」
2人は、僕を確認すると、それぞれ、全く違うリアクションしてくれた。
リンは、感極まって、涙目になっている。まぁ、再開した時に死にかけていればしょうがないか。サキは、ある程度回復した僕を見ているだけに、結構冷静だった。
「ある人のおかげでね。それよりも、今は…」
「そうだね。それで、あたしたちはどうすればいいの?」
ドラゴンの攻撃を避けながら、2人にこれからの作戦を伝える。実際は作戦なんて言える物ではないけど…。
「まずは、あの暴走状態を解除する為に、僕が吸血を使う。2人には、その間、ドラゴンの行動を制限してほしいんだ」
「了解。かなり厳しいけど、頑張ってみるよ」
「頼りにしているよ。ってリン? 聞いてた?」
僕は、黙り込んでいるリンに声をかける。
「………えぇ、聞いてたわよ。それよりも、ノゾム?」
「な、なに?」
急にリンから、謎の威圧感が襲いかかってくる。僕は、その威圧感に耐えながら、恐る恐る返事をする。
「あの邪魔なトカゲを処理したら、納得がいくまで、話してもらうから覚悟してね?」
満面の笑みで、恐ろしい事を口にするリン。ってか、ドラゴンをトカゲ扱いですか…。
「…ちなみに聞くけど、話すって何を?」
僕は何故か冷や汗をかきながら、リンに何の事か聞いてみた。それを聞いたリンは、目だけが笑っていない笑みで答えてくれた。
「白を切るつもり? そんなの決まっているじゃない? 今、セシリアと一緒にいる女の事よ」
イリスさんの事ですか…。ってか、リンさんかなりご立腹ですよ…ね。
「イリスって言うのね?」
「…リンさん? 今は、あれをどうにかしないと、ゆっくり話せないよ?」
リンが魔眼でイリスさんの名前を読み取り、さらに問い詰めようとしたところで、サキが助け舟を出してくれた。
「ノゾム!」
「は、はい!!」
リンは不機嫌オーラを出しながら、僕の名前を呼ぶ。僕は、本能で従わないと、と感じ、素直に返事をする。
「さっさと終わらせるわよ!」
「イエッサー!」
僕は、返事と共に駆け出す。目指すはドラゴンの首! 決して、リンの近くにいるのが怖かった訳じゃないです!
「GAAAAAAAAAAAA!」
ドラゴンは僕が単身向かってきたのを、右前足の薙ぎ払いで対処してきた。
が、それは、リンによって防がれる。
「『ストーンウォール』! 『ストーンウォール』! 『ストーンウォール』!」
僕とドラゴンの前足の間に、3つの石の壁が出現する。
土魔法のLV2ストーンウォールは任意の場所に石の壁を作りだす魔法だ。しかし、いくらリンの魔法でも、一瞬しか足止め出来なかった。
しかし、僕にはその一瞬がありがたかった。ドラゴンの攻撃で壊れた石の壁の破片に身を隠しながら、ドラゴンの攻撃をやり過ごすのと、同時にドラゴンの視界から姿を消すことで、あいつは、僕を見失ってくれた。だけど、あいつはすぐに、僕を見つける。
「ちっ! あいつの察知能力、性能良すぎだろ!」
そして、奴は、足を振り下ろす。しかし、その足は僕のいる場所とは、違う所に振り下ろされた。僕は、それがセシリアの幻術の効果だとすぐに理解する。セシリアが作ってくれたその隙を使って、僕は背中へと登り、そして、首にたどり着く。
「さて、これだけデカいと、どれくらいかかるか分からないけど…」
そう呟いて、鱗の剥がれている部分に牙を突き立てる。
「GA? GYAAAAAA!!」
僕が吸血をし始めると、ドラゴンは暴れだした。
多分、本能で危険だと察知したんだと思う。奴は僕を振り落とす為に、首を振り回し始めた。遠心力で飛ばされそうになるけど、必死にしがみ付く。
「あ ば れ る ん じゃないわよ!」
「GYAAAAAAAAAA!!」
首を振り回すドラゴンに対して、リンは、尻尾の方で何かしたみたいだ。おかげで、ドラゴンは悲鳴を上げる為に首を振り回すのを止めた。
「りんさん? 普通は素手でドラゴンの鱗は剥がせないと思うんだけど?」
どうやら、鱗を剥がしたよう…だ?
「そんな事より、この邪魔な尻尾を斬ってよ」
「簡単に言うけど、あたしじゃ出来るか分からないよ? …はああああぁぁぁぁぁ!!」
「GYAAAAAAAA!!」
「やっぱり、居合いを使っても、一回で切断まではいかないか。…なら!」
「サキ、離脱!」
「GURAAAAAAAA!!」
サキが、再度攻撃をしようとするのをドラゴンも黙って見ている筈もなく、僕を振り落とそうとする動きから、サキを排除しようという動きに変わる。リンはサキに指示を出して、いったん距離をとる。
だけど、そんなドラゴンが急に沈んだ。
「え? 何? って! これは、マッドプール? しかもこの大きさ。…もしかして、これってリンさんが?」
「違う、私じゃない。セシリアに、こんな大きなマッドプールは作れないし…。そうなると…」
2人ともドラゴンの反撃に備えて距離をとったところで、急にドラゴンが沈んだものだから、困惑している。聞こえてきた話からすると、このマッドプールはイリスさんのアシストのようだ。リンもその事には気付いたみたいだ。
「誰の魔法であれ、チャンス! 今の内に、今度こそ尻尾を!」
「私も手伝うわ! 『スラッシュ』! 『スラッシュ』! 『スラッシュ』!」
「GYAAAAAAAAッ!!」
リンの魔法と、サキの斬撃音、そして、ズーンっという音とドラゴンの叫び声が辺りに響く。どうやら尻尾の切断に成功したみたいだ。
「GAAAAAAAAAA!! …GU?」
ドラゴンは、尻尾を斬ったリンとサキにブレスを放とうと、力を溜めようとするも、全く力が溜まらないようだ。どうやら、痛みでのたうち回っている間に、吸血も完了したみたいだ。
僕は、ドラゴンから口を離し、離脱する。
「2人とも、お疲れ」
「その言葉は、まだ早いわよ、ノゾム?」
「そうだね。ドラゴンもまだ生きているんだから」
ドラゴンから離れた僕に、駆け寄ってくる2人に、ねぎらいの言葉をかけるも、逆に注意をうけてしまう。
「確かに、そうだね。それじゃあ、僕は準備があるから、その間のドラゴンをその場に留めてほしいのとと、僕の準備が出来たら、これを足に突き刺して、動きを止めてほしいんだ」
僕はそう言って、剣を1本生成する。だいたい3mぐらいの大剣だ。1万ほど魔力を注ぎ込んだから、今のドラゴンの鱗なら問題なく貫けるはず。
ちなみに、リンたちが来る前に、これを使わなかったのは、奴のスキル『龍の鱗』と『龍の逆鱗』に対して、どれだけの魔力で生成すれば通じるのか分からなかったから。失敗をフォローしてくれる仲間がいないのに、そんな危うい賭け出来ませんよ。吸血も似たような理由で実行出来なかった。
「ノゾム? なんでそれを私に渡すのかな?」
大剣を渡されたリンが無表情で質問してくる。
正直ドラゴンよりこw…。何でもありません。
リンの背後に見えてはいけない系のモノが見え始めたので、思考を中断し、リンの質問に答える。
「…怒らないでね? そ、それを扱えるのが僕以外にリンしかいないからだよ。見た目から分かると思うけど、かなりの重量なんだよ。サキにこれを持たせたら、ドラゴンの攻撃なんて避けれなくなるよ?」
「…後で覚えときなさいよ?」
「ノゾム君。…頑張ってね」
リンは、恐ろしい言葉を残し、渡された大剣を持って、ドラゴンへと向かう。サキは色々と含んだエールを残し、リンの後を追っていった。
「よし、始めますか」
2人を見送った僕は気を取り直して、セシリアと、イリスさんの元に行き、魔法の援護を止めてもらう為に、これからの行う事について説明する。
2人に説明を終えた僕は、一振りの小刀を生成する。そして、その小刀を自身の掌に突き刺す。
「いてて…。っと、次は…」
僕はアイテムボックスから7枚の紙を取り出す。取り出した紙に自分の掌から出ている血を染み込ませていく。7枚の紙が真っ赤に染まったので、掌の刺し傷を再生で治し、次の行動に移る。
新しくロングソードを生成し、ドラゴンを囲うように円を描く為、剣を地面に突き刺し、そのままぐるりとドラゴンの周りを一周する。
ドラゴンを円で囲ったら、その円の線上6か所に先ほどの紙を設置する。これで、即席の魔法陣が完成だ。ちなみにこの時、6か所が均等になるように設置しないと駄目。しっかりと6望星にならないと効果が減少しちゃうからね。
とは言っても、今は急いでいるから、多少のズレは目をつむる。そのズレによる効果減少を補うのが、最後の7枚目だ。こいつをドラゴンに付けてっと。
「よし、下準備は終わった。あとは、魔法の準備で終了だ。…2人とも! もう準備が終わるから、足止めよろしく!」
「分かったわ!」
ドラゴンの背中から、下にいる2人に声をかけると、リンが返事をする。
リンからの返事を確認した僕は、すぐ円の外へと退避して、魔法の準備を始める。
「せーっの!」
「GYAAAAAAAAAAッ!」
リンは振り下ろされた右の前足を避けると、その足に持っていた大剣を思いっきり突き刺した。大剣は問題なくドラゴンの鱗を貫通したようで、ドラゴンが悲鳴を上げる。
「2人とも、早くこっちまで下がって!」
2人は、僕の指示を聞いて、ドラゴンから離れる。そして、2人が魔法陣の外に出たのを確認し僕は、ドラゴンにトドメの魔法を撃ち込む。
「裁きを与えよ! 雷神の鎚!!」
僕が、魔法を放つと、まず最初に、ドラゴンに付けた紙が僕の魔力に呼応して、光始める。さらにその光に反応するように、魔法陣の6枚の紙も光を放ち始める。そして轟音と共に、魔法陣内全てに降り注ぐ極太の雷がドラゴンを襲う。
「GAAAA…GAAA、A、A、…GA…G…」
次第に弱まっていくドラゴンの声。
5秒ほどで雷神の鎚は降りやみ、そこに残されたのは、雷神の鎚のせいで出来たクレーターと全身が黒焦げになり、絶命したドラゴンだけだった。
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あと数話でこの章も終わります。
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