合流、そして…
「ひとまず、あれは、私がなんとかするわ。サキとセシリアはノゾムの回復をお願い」
「分かった」
「リンさん、お気を付、けて」
突如、現れたリンたちを僕は、ただ呆然と見ているしか出来なかった。
これは、夢だ。もう助からない僕が見ている幻想だ。じゃなければ、こんな都合のいいタイミングで、助けが来るはずがない。
「ほら、ノゾム君。いつまで惚けているの。リンさんの時間稼ぎだってそんなに長くは持たないんだよ? 早く、再生を使ってよね」
「体力は、ポー、ションで回復させま、すので、ノゾム様は、傷の回復に…努めてください」
「えっ? いや、だって…」
「あぁ~もう! セシリア! ポーション貸して!」
サキは、いまだに夢だと思って、思考停止している僕に、セシリアからポーションを受け取り、僕の口に無理矢理ねじ込んできた。
「ングッ! …ゴホッ!」
「ほら、しっかり飲んで」
咽せているのに、笑顔で瓶を押さえるサキが怖くて、頑張って全部飲み干す。
「ゲホッ! ゲホッ! ゆ、めじゃ…ない?」
「こんな状況なのに、よく夢とか言ってられるね」
「ノ、ゾム様、今は回復…を」
「あ、あぁ。それにしても、3人がここに来るとは思わなかったよ」
僕は、セシリアの言葉に従い、再生とポーションで回復に努めながら、思ったことを口にする。
「それに関しては、リンさんが頑張ったと言うか、何て言うか、凄まじかったの」
「???」
サキの要領を得ない回答に首を傾げると、セシリアが、詳しく教えてくれた。
「リンさんは、ターニ、ンからここまで、休憩…なしで走り続けた、んです。私た、ちを抱えて」
「はい?」
いや、僕も同じ事はしたけど、それにしたって…
「ノゾム君が何を考えているかは凄く分かるよ。けど、君からの手紙を読んだ後のリンさんは…」
「それに、ノゾム様がいな…くなってからの」
「セシリア。それ以上は長くなるから、後にしよう? それで、ノゾム君?」
サキが、長くなると言う理由で、セシリアの話を途中で遮る。何があったのか凄く気になるんだけど…。
「う~ん。体力はポーションを飲みまくっているから、ひとまずは問題ないかな?」
代わりにお腹たぽんたぽんだけど…。
「じゃあ、もう戦える?」
「そっちは、もう少しかかるかな? 動くだけなら無理をすればだけど、まだあちこち骨が折れているから…」
「…ちなみに、ノゾム君は、戦えるのであれば、あれに勝てる?」
サキは、少しだけ不安そうな表情をしながら、僕に問いかける。
サキが、そんな表情なのは、多分僕が、死にかけていたからだろう。隣にいるセシリアも同じ表情だ。
だから、僕は2人の不安をなくすためにも、自信たっぷりな笑顔で質問に答える。
「勝てるよ。僕1人だったら無理だったけど、3人が来てくれたおかげで、ね!」
「ノゾム君」
「ノゾム、様」
2人は、僕の言葉と表情を見て、ホッとする。
…ちょと簡単に信じ過ぎじゃないですか?
「それなら、あたしたちは、ノゾム君が回復するまでリンさんの手助けをするね」
「ドラ、ゴン相手は大変で…すが、頑張りま、す!」
「えっ? あっ! ちょっと!」
そう言って2人はドラゴンの元へと駆け出ししまった。僕は、止めようとしたけど、まだ体が思うように動かせなくて、立ち上がる事も出来ずに、前のめりに倒れてしまう。
そんな僕に、影が差す。
「…誰?」
僕が顔を上げると、そこにいたのは、イリスさんだった。
「誰とは、失礼ね。それにしても、これはどういう状況なのよ? フォーカスに聞いた通りに、森の外に来てみれば、村を襲った奴が、入り口で縛られて倒れているし、ドラゴンが暴れているのは見えるし、あんなたはいないからもしやと思って来てみれば、あなたはボロボロ、それに知らない娘たちがドラゴンと戦っているし、説明してくれる?」
「そ、そんな事より、丁度良い時に来てくれた! お願いだ! 僕を大至急回復してくれ! そうじゃないと、3人がドラゴンに殺される!」
状況説明を求めてくるイリスさんを無視して、僕は、自分の回復を頼む。
しかし、イリスさんは、ドラゴンの方へ目を向けながら、諭すような口調で僕に問いかけてきた。
「ねぇ? あれを見ても本当にそう見える? 私には、均衡は保たれているように見えるのだけど?」
「えっ?」
あまりにも落ち着いた声に、焦っていた僕は我に返り、改めてドラゴンと戦っているリンたちを見た。
そこには、決して、優勢とまでは言えないけど、あの格上のドラゴン相手に、均衡を保っている3人がいた。
見たところ、リンが前衛で、サキが遊撃、セシリアが後衛のようだ。
リンは包帯を外しているので、魔眼を使っているのが分かる。多分、魔眼の力でドラゴンの攻撃を先読みしているんだと思う。その証拠に、ドラゴンが行動するよりも早く行動している。攻撃を回避したり、逆に攻撃をして、ドラゴンに攻撃させないようにしている。
サキは、リンが作った隙をついて、鱗の剥がれた部分を攻撃しては離脱のヒットアンドアウェイでドラゴンの標的にならないようにしている。
セシリアは、尾を4本に増やして、魔法や幻術を駆使して、リンとサキの援護に徹している。
「………」
リンたちの攻防を見て僕は、言葉が出てこなかった。それは、リンたちがドラゴンと渡り合っている事よりも、2か月前に比べ、遥かに強くなっている事実に驚いたからだ。
「確かに、あなたが慌てていた理由も分かるわ。今は大丈夫でも、あれでは、いずれ劣勢になる。だからと言って、それは今すぐじゃない。今、あなたに出来る事は、その傷をしっかり治す事と、あの娘たちを信じる事よ」
イリスさんは、そう言って、僕に回復魔法を施し始める。
「…ありがとう、イリスさん」
「どういたしまして。それよりも、少しはこの状況を説明してよね。回復している今は、何も出来ないんだから、それぐらいは出来るでしょ?」
「分かった。簡単に説明するよ…」
僕は、回復するまでの間に、森を出てからの経緯をイリスさんに話した。
「つまりあいつは、この後、王国を襲撃するように命令されている。で、あなたはそれを阻止する為にドラゴンと戦って死にかけたのね?」
「…そうです」
「…あなたってバカね」
イリスさんに説明し終わったのだけど、なぜ僕は、説教を受けているみたいになっているんだろう? これも、イリスさんが年上だからだろうか?
「うぅ…。と、とりあえず、もう回復は大丈夫です」
僕は、この空気から逃げる為に、立ち上がり、体の調子を確かめる。
「嘘つかない。子供じゃないんだから、都合が悪くなったからって逃げないの!」
イリスさんは、呆れた顔で僕を睨んできた。
「嘘じゃないですよ。イリスさんの回復魔法のおかげで、もう戦えますよ」
まぁ、あの空気から逃げたのは嘘じゃなけど…。
「…あなたって、…いや、何でもないわ」
体の調子を確かめる為に軽く体を動かしている僕に対して、何か言いかけたイリスさん。
「ところで、イリスさん? 僕はこれから、あれを倒しにいきますが、手伝ってくれませんか?」
「別にいいわよ。と言うよりも、あなたには人探しを手伝ってもらわないといけないから、死なれても困るんだけど?」
「そう言えば、そうでしたね。では、あの狐人の子と一緒に後方支援をお願いします。僕は前衛に加わるので」
「いいわ。けど、いきなり連携出来ると思わないでね」
「もちろん分かってますよ。イリスさんには、回復役に集中してください。じゃあ、行きますよ?」
イリスさんに最後の確認をすると、何も言わずにうなずいたので、僕らはリンたちに元へと走り出す。
さぁて、リベンジマッチの開始だ!
ありがとうございます!
本来なら今回で、ドラゴン戦は終わる予定だったんですが、思いの外長くなってしまったので、分けました!
決着は明日投稿します!
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