ドラゴン
明けましておめでとうございます。
今年も今作品をよろしくお願いします!
1月13日午前11時30分
ご指摘がありましたので、シーンを追加しました。
「…絶対、今日って厄日だ」
僕は、今日の自分の運は0なんだろうなぁ…っと、軽く現実逃避しています。
だって、目の前にドラゴンが現れたんだから…。
「さて、あなたは、余計な事を知ってしまったので、始末させてもらいます。私でも、十分だと思うんですが、あなたの後ろにいる勇者を解放されると、私では勝てなくなってしまうかもしれない。なので、本来なら、兵士を処理した時点で役目が終わっていた彼に、もう一仕事してもらうことにしました」
そう言って、奴はドラゴンの横へと移動する。
ドラゴンは地球で言うところの、蛇型の東洋ドラゴンではなく、トカゲ型の西洋ドラゴンだ。ひとまず、観察を…。
【名 前】 グラドドラゴン
【年 齢】 39歳
【種 族】 ドラゴン
【職 業】
【レベル】 83
【H P】 85943/85943
【M P】 74288/74288
【筋 力】 70490
【防御力】 64439
【素早さ】 60493
【命 中】 65435
【賢 さ】 72493
【 運 】 23
【スキル】
爪術LV5 威圧LV5 ブレスLV6 風魔法LV4 咆哮LV4 オートヒールLV2 気配察知LV5 熱源察知LV5 魔力察知LV4 状態異常耐性LV6
【固有スキル】
龍の鱗
龍の逆鱗
【所有者】
スロウス
龍の鱗
大人のドラゴンになった証。
・耐物理、耐魔法の特性を備える。
龍の逆鱗
怒りに触れた時に発動するスキル。
・HPとMPが一定量消費され続ける代わりに全ての能力が上昇する。
・怒りの原因をどうにかしないとスキルの解除は難しい。
ちょっ!? これって、かなりピンチじゃないんでしょうか? 耐物理とか、耐魔法って何!? 全能力UPってどれくらい!? って言うか、僕のステータスって、今どれくらいだっけ!?
ドラゴンのステータスを視て、僕は、パニックになってしまった。
だって、ヴァンパイアのステータスになってから、初めて、自分より格上の相手を目の当たりにしたのだから。
そんな僕を見て、奴はニッコリと笑い、さらに追い打ちをかけてきた。
「おやおや? 先ほどまでの余裕がなくなってますよ? 流石ドラゴンですね。しかし…まぁ、いいでしょう。さぁ、グラドドラゴン! 目の前にいる人間を全て始末しなさい!」
「GAAAAAAAAAAA!!」
あいつ何て言った? 目の前にいる人間全員? つまり、勇者も?
「待て! 勇者を浚う任務はどうするんだ!」
僕は、つい大声を出してしまった。
「それは、もういいです。いち冒険者ごときに敗れるようなのは、いりません。まぁ、そうなると、私がこちらまで来た事自体無駄なんですがね。…ついでです。グラドドラゴン、ここの処理が終わったら、王国を攻めなさい」
「なっ!?」
「では、さようなら」
それだけ、言い残し、奴はその場から忽然と消えてしまった。
「くそっ! あいつ、何て命令をしてくれたんだよ!」
と、言っても、本人は既に、いないからこれはただの愚痴。
それにしても、あの最後の命令のおかげで、逃げるに逃げれなくなっちゃた。今、1人で逃げるのは、王国に住む人たち全てを、見殺しにするようなものだ。これが、吉田たちだけなら逃げても、よかったのに…。
「あぁ、くそっ! やっぱり、今日は厄日決定だ」
「GURURURURURURURU」
「分かりましたよ。やればいいんでしょ! やれば!」
目の前にいるドラゴンを厄介者扱いにしたら、怒った感じを全面に出した威嚇で返されたの、僕は、やけくそ気味に戦闘態勢に入る。
ひとまず、僕は、背後にいる吉田たちから離れる為に、ドラゴンの気を僕に向ける事にした。
「はぁぁぁぁぁ!」
僕は、ドラゴンに向かって、駆けながら、素早くアイテムボックスから剣を取り出し、右前足を横薙ぎで斬り付ける。
だけど、僕の一撃では、ドラゴンの鱗にかすかな傷しか残せなかった。
「…一撃で駄目なら、斬れるまで、斬り続けるだけだ!」
僕は、なりふり構わず、斬りつけ続けた。
ドラゴンは、僕が、鬱陶しくなってきたのか、僕が斬りつけていない左前足で僕を払いのけにきた。猫パンチならぬドラゴンパンチで…。
「っとと! さすがに、攻撃の速度も向こうの方が上か…。これは、本当にヤバい…。けど、今の攻撃で注意を引く事には成功したみたいだ」
ドラゴンパンチをわりとギリギリで躱し、距離をとった僕は、次の行動に移る。
「あとは、こっちに気を引きつつ、この場から離れないと」
僕は、自分に向けた気を他に逸らさせないようにする為に、あえて、ドラゴンの顔めがけて、ファイアーボールを連続で放つ。
「それにしても、無詠唱のスキルはかなり便利だな。魔法を放つまでの時間が、魔力を練る時間だけしかかからなくなるなんてな。下級魔法なんかは、並列思考があれば、弾幕が張れるよ」
魔力が有り余っている僕は、ここぞとばかりに、魔力に物を言わせて、魔法の弾幕を張る。まぁ、ダメージは無いだろうけどね。
「GUGAGAGAGAGAGAGAGAGA!!」
ドラゴンが吼える。僕の魔法がそれだけで、ドラゴンに届く前に爆発していく。これは、咆哮のスキル? まさか、こんな形で、無力化されるなんて。
「GAAAAA!」
僕の魔法弾幕を破ったドラゴンは、僕へと向かって、動き始めた。どうやら、さっきから攻撃をしている僕を、最初の標的に定めたようだ。
それにしても、どうしたものか…。いくら、気を引いて、この場から移動する事に成功しても、倒せないと意味が無いんだよな。ん~、ここは、あれを試してみるか。けど、これで駄目ならほぼ打つ手なしになるんだよね。
僕は、これから試してみる事を考えながらも、ドラゴンへの牽制を時折しつつ、吉田たちから離れる為に、移動し続ける。
「そろそろ、いいかな?」
南の森から1㎞ほど移動し、僕は、さっきから考えていた事を、実行に移すために、足を止めて反転し、ドラゴンと向き合う。
「まずは、あいつに咆哮を使わせないと…」
ドラゴンにスキルを使わせるために、僕は、また魔法弾幕を開始する。
「GAGAGAGAGAGAGAGAGAG!!」
ドラゴンは、魔法弾幕が始まると、すぐさま咆哮で対抗してくる。
「今だ! 合成魔法! 『青い炎』!!」
咆哮を使って、無防備になっているドラゴンの顔面に合成魔法を放つ。
放たれた青い炎は、ドラゴンの顔面にしっかりと命中した。
「GUGAGAGAGAGAGA!!」
煙が晴れて、ドラゴンの顔が見えた。そこには、わずかながらだけど、鱗が焦げていた。
つまり、多少とはいえ、ダメージを与える事に成功したのだ。そして、ドラゴンもダメージを与えられた事に、怒りの声をあげていた。
ドラゴンにダメージを与えた、合成魔法とは、2つの魔法を合わせて、新しい魔法を作るスキルだ。ちなみに、先ほどの青い炎は、ファイアーボールとファイアーボールを合わせた魔法だ。
威力は、使用した魔法の数倍にまでなるけど、欠点もある。それは消費する魔力が相当なものだと言う事。具体的には、合成に使う魔法の5倍以上の魔力を必要とする。
以前、魔法の練習の時には、分からなかったのは、実際に使ってなかったからだ。合成するまでは、合成する魔法だけの魔力でいいんだけど、放つと時に、使用した魔法の5倍程度の魔力をさらに消費する事が判った。まぁ、魔力チートの僕には欠点とは言えないんだけどね。
閑話休題
「突破口は、見えた! あとは攻めるのみ! 『水蒸気爆発』」
ドカーーン!!
「GUGYAAAAAA!!」
爆発を受けた、ドラゴンの体は、ところどころ鱗が剥がれていた。
よし、効いてる! これなら何とかなるかも?
ドラゴンは、地上にいると魔法の餌食になると判断したのか、背中の翼を羽ばたかせ、空へと逃げた。
「空なら、射程外だと思ったか? しかし、そんな事はないんだよ。 『雷暴風』!」
上空100mぐらいのところで、こちらの様子を見ていたドラゴンに雷を纏った暴風が容赦なく襲いかかる。
流石、雷系は速度が違うわ。とは言え、ステータスが5桁ぐらいになると、油断さえしなければ、回避出来るんだけどね。つまり、あいつが、今、暴風の餌食になっているのは、油断以外の何物でもない。
「GYAAAAAAAAAA」
ズドーーーーン!!
ドラゴンが雷のせいで、麻痺したのか、空から落ちてきた。その衝撃で軽い地震が起きたけど、僕は、このチャンスを生かすために、ドラゴンに接近する。
ドラゴンは、雷暴風のせいで、あちこち鱗が剥がれていた。僕が狙うのはただ1つ!
「これ以上、空には逃げないでね! はっ!」
「GYAAAAAAAAAAA!!」
僕は、落ちてきたばかりの動きの鈍っているドラゴンの片翼を切り落とす事に成功した。
が、そのせいで、気が少し緩んでしまった。
ぞくっ!
「え? 今、悪寒が…ぐあっ!」
体に悪寒が走ったのを感じ、原因を探ろうとした次の瞬間、僕は、とてつもない衝撃が右半身を襲い、気付いたら、ドラゴンの背中から数十mも吹き飛ばされていた。
「GUGYAAAAAAAAAAA!!」
「う、うぐっ! い、今のは一体?」
僕は、痛む半身に再生を使いながら、起き上がって周囲を確認する。そして、目に飛び込んできたのは、さっきまでとは、纏っている空気が全然違うドラゴンだった。
「もしかして、これが、龍の逆鱗の効果なのか?」
さっきの攻撃は、僕がいた場所からして、たぶん尻尾だと思うんだけど…、って、あいつ、こっちにくるスピードがさっきまでの移動の時とは、比べ物にならないんだけど!
僕が、打開策を考えようとしても、あいつはそれを許してはくれないみたいだ。痛む体に鞭を打って、臨戦態勢をとる。もう、遠距離から魔法で攻撃するのは無理だと判断した。ほぼ直感だけど…ね。
「GAAAA!」
ドラゴンは、縦に割れた瞳の瞳孔を開かせ、完全にブチ切れていると言わんばかりの形相で、前足を振り下ろしてきた。最初のドラゴンパンチとは、比較にならない速度と威力に、完全な回避も防御も無理だと思い、少しでも威力を減らすために、身体強化と硬化のスキルを全開にし、剣を自身の頭上に構えて防御姿勢をとる。
バキャッ!
「がっ!?」
しかし、襲ってきた衝撃は、そんな小細工をあざ笑うような、威力だった。
その証拠に、構えていた剣は折れ、強化系スキルの効果も全く意味がないほどで、僕の体に3本の爪痕を残した。
僕が今の一撃で、膝から崩れ落ちたところに、ドラゴンは容赦なく追撃をしてくる。幾度となく踏みつけられ、さらに、尻尾で弾かれて、強制的に距離をとらされた。
「な、何で…」
「GUAAAAAAAAAAA!!」
あれだけ怒りに任せて攻撃をしてきたのに、何故、距離をとるような行動をしたのか、疑問に思い、立ち上がろうとした瞬間、ドラゴンの咆哮と共に、何か、強力なエネルギーの塊と爆発が僕を襲った。
「…がはっ! ごほっ、ごほっ! い、今のは…何だ?」
僕は、何が起きたのか、確認する為に、必死に首を動かす。今の僕には、立ち上がる事も出来ないぐらいので、首しか動かせないと言うのが正しいんだけど…。
周囲を見てみると、自分の横たわっている位置が、地面より一mぐらい低い事に気付く。
「ま、まさか、これがブレスなのか?」
僕は、ブレスの威力に驚きながらも、再生を使い、頑張って起き上がろうとするも、体が動かない。
すると、ドラゴンは、再び僕を尻尾でつかみ、先ほどと同じぐらいの距離が空くように投げ捨てた。
「もし…かして、これってもう一発、ブレスな…のか?」
もはや、僕に次の一撃を耐えれるだけのHPは残っていないんじゃないかな?
いや、数えられないぐらい踏みつぶされた上に、ブレスも直撃しているのに、まだ意識を失ってないので十分でしょう?
ってか、このクラスのドラゴンをこの世界の住人はどうやって討伐してるんだよ?
ブレスの準備を始めたドラゴンを見ながらもそんな場違いな事を考えてしまう。だって、体が動かないんだから。現実逃避でもしないと。
「再生、も間に合わな…いし、これで、終わりな…のか?」
「GAAAAAAAAッ!? GYAAAA!!」
二発目のブレスを放とうとしたその瞬間、ドラゴンの口が急に閉じた。と言うよりは、下から叩き上げられたように見えた。そのせいで、準備していたブレスが暴発したみたいだ。ドラゴンが痛みでもがいている。
「い、一体、何が?」
訳が分からなくなっている僕の前に、3人の人影が現れた。
「やっと、見つけたと思ったら、何、死にかけているのよ!」
「と言うより、何でノゾム君は、ドラゴンと戦っているの?」
「ノ、ゾム様、しっかりして下、さい」
それは2か月前に、離れ離れになってしまった、僕の仲間だった。
ありがとうございます。