招かれざる来訪者
何とか年内に間に合いました!
さて…。吉田を倒して、2つの分裂体の状況を確認していたけど、両方とも無事倒せたようだ。あとは、戻って来るのを待つだけか。
僕は、分裂体が戻ってくるまでの間、3人をこれから、どうするか考えることにした。
「う~ん…。まぁ、生かして王国に帰すのは決定なんだけど…」
勇者である吉田たちが今回の任務を失敗した事を王国が知れば、エルフを戦力としようと考えていた王国は帝国との開戦を延ばすはず。そのためには任務失敗を伝える人が必要だ。
まぁ、伝える人は誰でもいいんだけど、本人たちから証言した方が信憑性は増すと思う。それに今ここで、吉田たちに死と言う名の救いを与えるつもりはない。
僕的には、もっと、今までの自分たちの行いを反省してもらう為にも生きてもらわないと、と考えているくらいだ。
そうなると、吸血でのスキル没収して、身体能力を十全に発揮出来なくなるように、後遺症を残すように傷を負わすのでいいかなぁ? どうすれば、回復魔法や回復薬がある、この世界でも後遺症が残せるかは、あとでフォーカスかイリスさんにでも聞くとしよう。
あとは、奴隷商人たちだけど…まぁ、どうでもいいか。
吉田たちの扱いについて考えていたら、思いの外、集中いたようで、音がするまで分裂体が戻ってきたのに気づけなかった。
とりあえず、吉田たちを起こすために、アクアバレットをそれぞれの顔にぶつける。
「ぶはっ!?」
「げほっ! げほっ!」
「うっ?」
どうやら、伊藤だけはアクアバレットがそのまま、口内に入っていったらしく、1人だけ咽せている。
「…目覚めたか?」
「「「なっ!?」」」
僕が、吉田たちに声をかけると、3人は声が聞こえた僕の方を見て、そして、揃って驚愕した。
「さ、佐伯が3人?」
伊藤が化け物でも見るような目で僕を見る。そして、その原因を言葉にする。
そう、僕はまだ、分裂のスキルを解除していないのだ。
「な、何かのスキルに決まってる! こんな世界なんだ。何が起きてもおかしくねぇ!」
吉田は、僕が3人もいるのはスキルだと当ててみせた。まぁ、吉田の言う通りスキルや魔法なんてものがある世界だ。向こうでは考えられない現象が起きてもおかしくはない。
「確かに、これはスキルだ。だけど、そんなことよりも、自分たちがどうゆう状況なのか分かっているのか?」
僕に指摘されて、吉田と伊藤は自分が身動き出来ないようにされていることに気付いたようだ。原に関しては、1人だけ氷漬けにされていたので、嫌でも、自分の状況を分かっていた。
ちなみに、原の氷漬けは首から下となっている。
「てめぇ! こんな事をしてタダで済むとおもってるのか!」
「なら、どうするのさ? まぁ、お前らぐらいなら、どうとでもなるし。ってか、僕に負けたから、今の状況なんだろ?」
「ぐっ!」
捕まっているのに、威勢良く吠えてきた吉田に、軽く言い返したら、吉田は言葉を詰まらせる。
「さて、お前らにこれ以上、時間をかけたくないから、さっさとする事をするか」
「何をする気だ?」
原が、僕の言葉から不穏な空気を感じたようで、これから僕が、何をするのか聞いてきた。
僕は、教えても問題ないと思ったので、教えることにした。
「最初にお前たちのスキルを没収するんだ」
「!! そんな事出来るわけねぇだろ! 出鱈目ぬかすんじゃねぇよ!」
「そうだ! あの佐伯にそんな事が出来るはずねぇ!」
「………」
「…本当にそう思うのか?」
吉田が口にした言葉を肯定する伊藤。しかし、原だけは苦虫をかみ潰したような苦い顔をしている。たぶん、僕の言葉が本当のことだと、感じたんだろう。
「まぁ、お前たちがどう思おうとも、別にいいけど。…それに、出来るか出来ないかは、嫌でも分かるから、後で確認すればいいよ」
そう言って、僕は吉田たちにサンダーショックを使い、意識を奪う。そして、ここで、ようやく分裂を解除する。
ちなみに、あいつらの意識を奪ったのは、騒がれてもうるさいだけだし、吸血のスキルを見せる理由もないからだ。分裂を解除しなかったのは、ただ単に、恐怖心を植え付けようと思っただけ。まぁ成功したかは分からないけどね。
それにしても、スキル発動にはこうしなきゃいけないと分かっているけど、それでも、こいつらの血は吸いたくないなぁ…。
「…さて、吸血も済んだし、久々にステータスでも確認するかな?」
【名 前】 ノゾム・サエキ
【年 齢】 18歳
【種 族】 ヴァンパイア
【職 業】
【レベル】 9
【H P】 17867598/17867598
【M P】 57912863400/57912863400
【筋 力】 7589431 (-99.1%)
【防御力】 6207259 (-99.1%)
【素早さ】 5988233 (-99.1%)
【命 中】 6542907 (-99.1%)
【賢 さ】 7321784 (-99.1%)
【 運 】 100~0
【スキル】
異世界言語 剣術LV5 短剣術LV3 槍術LV5 斧術LV3 盾術LV4 体術LV5 魔法剣LV3 魔法拳LV2 豪腕LV3 身体強化LV6 身体硬化LV6 魔法強化LV5 オートヒールLV2 MP回復速度LV3 攻撃範囲強化LV5 空歩LV3 忍び足LV3 威圧LV5 雄叫びLV5 気配察知LV6 熱源察知LV5 魔力察知LV2 突進LV2 かまいたちLV4 火魔法LV5 水魔法LV4 風魔法LV4 土魔法LV6 氷魔法LV2 雷魔法LV2 光魔法LV3 闇魔法LV3 無魔法LV5 魔法合成 気絶耐性LV3 直感LV3 並列思考LV5 糸生成LV3 無詠唱 夜目 魔力操作 奴隷契約 偽装 観察 (違和感)
【ユニークスキル】
武器生成
【固有スキル】
ヴァンパイア 吸血 再生 分裂
【所有奴隷】
リンスレット
サキ
セシリア
イリス
おや? 筋力強化が無いんだけど…。もしかして、豪腕のスキルの下位スキルが筋力強化なのか? それで、豪腕へと吸収されたの…か?
…とりあえず、先に、ユニークスキル武器生成を調べてみよう。
【武器生成】
・魔力を元に武器を創りだせるスキル。
・武器の種類や形状に関しては、使用者の想像力次第となっている。
・生成された武器の強度は、使用した魔力量によって変化する。
・生成された武器は、製作者の元を離れると、一定の時間経過により消滅する。
予想以上に使い勝手がいいスキルのようだ。これは、後で色々と実験して、しっかりと性能を把握しないとな。
一通りステータス確認を終えた僕は、3人と奴隷商人たちを森の外へと運んでいた。森の外の異変に気付いたのは、森の外からの風に嗅ぎなれないけど、嗅いだことのある臭いが混ざっていたからだ。
「これは…。血の臭…い?」
しかも、噎せ返るほど、大量の血の臭いだ。僕は、急いで森を出る為に駆け出した。
「…おや? 勇者一行が出てきたのかと思ったら、別の人ですね。あなたは誰です?」
森を抜けた僕が見たのは凄惨な光景、それと、この凄惨な光景で聞くには場違いと思えるほど明るい声が聞こえてきた。
僕が目にした光景とは、噎せ返るほどの血の海とおびただしい数の死体だった。これは、僕が倒した王国の兵士たちだ。あちこちに、王国の兵士が装備していた防具が落ちているのだから、間違いないだろう。
死体は上半身だけなかったり、何かに引き裂かれたみたいに、バラバラになっていたりと、五体満足な死体は1つもなかった。
気配察知で周囲の死体の中に生存者がいないか確認したけど、残念ながら生き残りは1人もいないみたいだ。
「…無視ですか? まぁ、この光景を目にすれば、無視と言うよりは、現実から目を背けて、茫然としているだけでしょうが…」
僕は、再度、声をかけられてようやく、声のした方へと視線を向けた。
そこにいたのは、褐色肌の男だった。
「ようやく反応がありましたか…。それでは、もう一度質問しますが、あなたは誰ですか?」
褐色肌の男は、見た感じは、肌の色以外は、どこにでもいる真面目そうな青年に見える。だけど、この場においては、その印象が与えるのは、違和感でしかない。
だって、目の前には1000人の死体があるにも関わらず、それを気にする素振りが全くないんだから。
「…人に名前を聞く時は、自分から名乗るものだと教わらなかったのか? 魔族さん?」
僕は、青年からの質問に答えないで、青年の種族を口にした。
「それは、すみませんでした。基本的に日陰者でして、他人に名前を教えると言う習慣がないものでして。私の名はレキアです。それにしても、やはり、この容姿はいけませんね。魔族だとバレると行動がしにくくなるんですよね」
【名 前】 レキア
【年 齢】 21歳
【種 族】 魔族
【職 業】 魔術師
【レベル】 40
【H P】 2892/2892
【M P】 13923/13923
【筋 力】 1817
【防御力】 1832
【素早さ】 3392
【命 中】 3239
【賢 さ】 5474
【 運 】 38
【スキル】
剣術LV1 体術LV2 水魔法LV4 風魔法LV5 闇魔法LV4 無魔法LV4 遠見LV6 魔力操作 詠唱破棄
【固有スキル】
転移
どうやら、偽名ではないようだ。しかし、何で魔族がこんな所にいるんだ? しかも、最初に声をかけられた時の感じだと、勇者絡みでこの場に来たように聞こえたんだけど…。
「…僕はただの冒険者だよ。名乗るほどの者じゃないよ。それに、あなたが探している勇者なら、僕が引きずっている連中がそうだよ」
「おや? その人相ですから、盗賊かと思いましたよ」
言われてるぞ、善人面じゃないって。
「こんなのでも、勇者ですよ。それで、勇者に何の用ですか?」
「それこそ、ただの冒険者さんには関係の無い話ですよ」
情報を探ろうとしたけど、さっき名乗らなかった事を楯にかわされてしまった。しょうがないので、少し情報を開示する事にした。
「…はぁ。これから勇者たちを王国に送り返さないといけないんだ。なのに、この惨劇を作ったであろう人物が、勇者に用があると言われたら、その内容が気になるじゃないか」
「なるほど。言われればその通りですね。…それにしても、まさか勇者がただの冒険者に負けるほどまでに弱いとは、予想外でした。本当なら、ここでエルフともども、勇者を頂く予定でしたのに…」
ん? こいつ、何で吉田たちがエルフを連れてくる事を知ってるんだ? この事は王国しか知らないはずじゃ?
「おっと、すみません。私とした事がいらない事を口走ってしまったようですね。まぁ、いいでしょう。特別に教えてあげましょう。私は勇者をここで攫い、帝国へと連れていく任務を受けているのです」
どうやら、顔に出てたみたいで、奴は僕のを顔を見て、自分の失言に気付いてしまったみたいだ。しかし、聞いたからにはもう少し突いてみよう。
「帝国が今回の一連の騒動を裏で仕組んでいたのか? もしかして、エルフの村にあったギルドが退去したのもか?」
「ええ、そうですよ。詳しい事は秘密ですが、そこからすでに今回の計画は動いていたんですよ」
「って事は、帝国は魔人に支配されていると思って間違いないのか?」
「……あなた、一体、どこで魔人の事を耳にしたのですか?」
魔人の名前を出してどうゆうリアクションをするのか見たくて、口にしてみたけど、警戒させるだけだったようだ。ちょっと失敗したなぁ…。
「そこは内緒だ」
「…まぁ、いいでしょう。どこで聞いたかは知りませんが、帝国はヒト族の国ですよ。あの方々が人間を支配しているなんて事はありませんよ」
「…随分と、親切じゃないか。もしかして、何か企んでいるのか?」
奴があまりにも親切に教えてくれる事に、僕は、驚きながらも、警戒心を強めた。
そして、それは結果として正しかった。
「それは、そうですよ。だって、これから死に逝く者に対する私なりの慈悲なんですから」
「何だって?」
「あなたは、この光景を生み出したのが、私かもしれないと言ってましたが、正直な話、私に出来ると思いますか?」
「………」
出来る出来ないで言うなら、出来ると思う。何故なら、ここにいた兵士たちは皆、戦闘不能状態だったからだ。しかし、それにしては、不可解な事が幾つかある。
それは、あいつのMPが減っていない事と服が汚れていない事。つまり…。
「出来なくはないでしょうが、今回のは、私じゃなく、彼がやったんですよ」
ピィィィィィィィィィィィ!!
あいつは、それだけ告げると、指で輪っかを作り、口に銜えて、天に向かって笛みたく合図を出した。
「GIGAAAAAAAAAAAAA!!!!」
大きな叫び声を上げながら、空から降りてきたのは…
「ど、ドラゴン!!」
体長10m近くはあるんじゃないかと言う、ドラゴンだった。
今年一年間、ありがとうございました。
来年も頑張って執筆していきますので、よろしくお願いします。
それでは、皆さまよいお年を!!