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イーベの町へ

遅くなりました。

本当に申し訳ございません!!


前回のあらすじ


エルフの村で出逢った青年フォーカスが弟子になり、修行開始して2カ月が過ぎた。




 さて、フォーカスはどう対処するかな?

 魔物と対峙しているフォーカスを見ながら、僕はそんな事を考えていた。



 唐突だけど、僕とイリスさんとフォーカスの3人は、イーベの町に向かっている途中だ。


 そもそも、何でイーベの町に向かっているのかと説明するには3日前まで、さかのぼる…。











 「今日のメニュー終わりましたよ、師匠」


 修行を始めてから2ヶ月が経ち、フォーカスは今のメニューにだいぶ慣れたようだ。

 僕はこれからの訓練メニューの事を考えていると、フォーカスがいまさらな質問してきた。


 「そう言えば、師匠って冒険者なんですよね?」


 「ん? そうだけど、それが?」


 「いえ、ふと、気になったんですが、冒険者ならいつまでこの村にいるのかなぁと、思いましてね」


 「いつま…で?」


 フォーカスの言葉に、僕は何か重大な事を忘れているような気がしてきた…。


 「だって、村にはギルドが無いじゃないですか。依頼をこなしてお金を稼ぐ事が出来ないのに、お金は大丈夫なのかなって思いましてね」


 「…ギルド? …いつまで?」


 「あ、あれ? 師匠?」


 僕は、フォーカスが話しかけてきているのを無視して、必死に思い出そうとしていた。そして…


 「あーーーーっ!!」


 僕はようやく思い出した。と言うより、なんで忘れていたんだろう!? いや、多分原因は、『弟子を育てる』って事に夢中になったせいだと思う…。

 昔から一つの事にのめり込むと、他の事なんて気に留めなくなる事がある。僕の悪癖の一つだ。最近だと、リンに魔法を教わった時が最後だと記憶している。

 兎に角、今は急いでギルドに行かないと!!


 「し、師匠、どうしたんですか?」


 「気にしなくていいわよ。どうせ、自分がこの村にきた理由を思い出しただけでしょうから」


 急に叫んだ僕を心配するフォーカスにイリスさんが正解を言い当てる。いや、憶えていたなら教えて下さいよ…。


 「あなたが憶えていると思ったから、言わなかったのよ」


 僕がイリスさんにジト目で睨んでいたら、何を言いたいのか察したらしく、そのような答えが返ってきた。それを聞いて、僕は何も言えなくなった。


 「そう言う訳で急だけどフォーカス、悪いけど修行はこれで終わりでいい? 僕は急いで、イーベの町に行かないと…」


 「え? それって僕もついて行く事は出来ないんですか?」


 どうやらフォーカスはついてくる気満々のようだ。しかし、僕としては1日でも早く、イーベに行きたい…。

 そんな事を考え始めたところにイリスさんが口を開いた。


 「まさか、自分の都合だけで、こんな中途半端な終わらせ方するのかしら?」


 「うぐっ!」


 まさに正論です。最初から期間を決めていなかったんだから、ある程度は1人でも大丈夫だと思えるレベルまで面倒を見ないといけない。


 「それにイーベって町がどこにあるか知らないけど、彼がいるいないで、到着が大幅に遅れるわけでもないんだから、本人が望むなら連れていってあげればいいじゃない」


 さらにイリスさんが言葉を続ける。僕はとっさに彼女の言葉を否定しかけたけど、ぐっと堪えた。


 「イリスさん…」


 フォーカスが感動している。多分、イリスさんが自分の味方をしてくれているのが、嬉しいんだと思う。


 「…分かりましたよ。フォーカス、さっきの言葉は取り消すよ。その代わり、明日の朝にこの村を発つよ。遅れないでね」


 「は、はい!!」


 冷静になって考えれば、イリスさんも僕についていくのに、ステータスの数値任せの強行軍は出来ないよな…。それは名前以上に隠さないといけない事だしね。

 まぁなんにせよ、フォーカスも連れて行くのは決定したんだし、今日は明日からの旅の準備をして早めに寝るとしますか。




 翌日


 「おはようございます師匠!」


 僕とイリスさんが宿から出ると、そこには大きな荷物を背負ったフォーカスがいた。


 「「おはよう…」」


 フォーカスが背負っている大きな荷物に気圧されながらも、何とか朝の挨拶を返せた僕とイリスさんだった。

 ちなみに、どれぐらい大きいかと言うと、フォーカスの身長が僕と同じぐらいの165㎝ほどなんだけど、そのフォーカスが後ろからだと、半分は隠れるぐらいと言えば伝わるかな?

 よく背負っていられるなと思ったけど、そこはこの2カ月の修行のおかげらしい。変なところで修行の成果を見せないでほしい…。


 「とりあえず、そんな荷物背負って旅なんか出来ないから、荷物を減らすところから始めるか…」


 僕は愚痴りながら、フォーカスの荷物を選別していくことにした。

 30分ほどで、荷物を1/3まで減らせたから僕たちは、改めてイーベの町へ出発した。




 「それにしても、すごい量の荷物だったわね」


 出発してから少しして、イリスさんが先ほどまで、フォーカスが持ってきていた荷物の事を思い出し、苦笑い気味に呟いた。


 「うぅ…。すいません。なにせ、旅に出るのは初めてでして、何が必要なのか判断できなかったんです。なので、思いつく物を手当たり次第纏めたら、あんな大荷物になっちゃったんです…」


 「まぁ、足りないのは問題だけど、ありすぎる分は、今回みたく経験者が選別すればいいだけだからね。それに今回の経験は、次回以降に生きてくるから」


 実際に、僕も最初の旅はリンが買い出しをしているのを見ているだけだったし…。


 「さて、それよりもこれからの道中の事だけど、せっかくだから、魔物は全てフォーカスに任せようと思うんだけど?」


 「え゛っ!?」


 早速、フォーカスが反応した。


 「まぁ、いきなりは無理だから、今日は僕かイリスさんが魔物の相手をするよ。その時に魔物の特徴や攻撃方法などを教える。そして、明日からはなるべく1人で頑張ってもらうって流れ」


 「そ、それなら…。け、けど、集団で来たら助けて下さいよ。師匠!」


 フォーカスは必死だ。確かに戦闘初心者がいきなり、1対多数をやれって言われても勝てるはずがない。例外でチート持ちならそうでもないだろうけど…。僕だってそこまで鬼畜な特訓はさせる気はないんだけどなぁ…多分。


 フォーカスの必死の訴えを軽く流し、その日はこの森に出る魔物の攻略方を説明して過ぎていった。




 翌日は朝からフォーカスの顔には緊張の色しかなかった。今日から1人で魔物と戦わないといけないのだから、その気持ちは分からないでもない。だけど、魔物はそんな事お構いなしで出てくるんだよね。







 そんな感じで現在、フォーカスはハニービーと対峙している。

 フォーカスは、バックラーを装着している左腕を胸の辺りで水平にしている。よく見ると、震えているようだ。修行を開始してからの初めての実践で、緊張しているのか、それとも、魔物に恐怖しているのか、どちらだろう?


 ハニービーはそんなフォーカスにお構いなしにこちらを威嚇している。

 本来、こちらから手を出さなければ比較的安全な魔物が威嚇をしていると言うことは、つまり、誰かがちょっかいを出したと言うことだ。


 「し、師匠! 何で石を投げたんですか!! そのせいで、ハニービーが怒ったじゃないですか!!」


 犯人は僕でした。


 「ちょうど一匹しかいなかったからだけど?」


 「だからって、こっちにも心の準備ってものがあるじゃないですか!!」


 僕があっけらかんと答えると、フォーカスが泣き言を叫ぶと、それを合図にハニービーが襲ってきた。


 「ひぃっ!」


 ハニービーは腹部の針を出した状態でフォーカスに向かってきた。フォーカスは短い悲鳴をあげながらも、何とか左腕のバックラーで防御する。


 防御で最初の攻撃をしのいだのはいいけど、魔物を過剰に恐れているせいで、フォーカスは反撃しない。ハニービーは反撃がこないのをいいことに、針や口で絶えず攻撃を仕掛けている。


 「う~ん…。これはちょっと、どうにかしないとダメかなぁ? よし、イリスさん。少しの間だけ、ハニービーの相手をしてもらっていいですか?」


 このままだと進展しなさそうなので、手助けをする事に決めた。


 「倒しちゃダメかしら?」


 イリスさんは僕のお願いを面倒だと言わんばかりに質問してくる。


 「申し訳ないですが、フォーカスにやらせるので、倒すのはなしでお願いします」


 「…分かったわ。けど、あまりにも時間がかかるようなら保証はしないわよ?」


 「十分です。では、早速お願いします」


 イリスさんは石を拾い、ハニービーに向けて石を投げた。石は見事ハニービーに当たり、ハニービーは標的をフォーカスからイリスさんに替えて、こちらに向かって来た。


 「さて、今のうちに…」


 イリスさんが向かってくるハニービーを軽くあしらっている間に僕はフォーカスの元に駆け寄る。



 「し、師匠…。やっぱり、僕にはまだ早いようで、ひっ!?」


 僕が駆け寄るといきなり泣き言を言い始めたので、予定していたよりもきつい荒療治で活を入れる事にした。つまり、威圧スキルによる恐怖の上書きだ。そのせいで、フォーカスは喋っている途中なのに、悲鳴をあげたのだ。


 ちなみにスキルの威圧はレベル差があるほど、効果があるものではなく、ステータスの数値差があるほど、効果が高いものである。

 なので、フォーカスの現状を例えるならば、ドラゴンに睨まれた人間の赤ちゃんみたいなものだ。


 そんな恐怖体験を絶賛体験中のフォーカスに僕は質問する。


 「…僕とハニービーのどちらが怖い?」


 「えっ…? あ、そ…の」


 僕の声を聞いて、フォーカスはさらに恐怖で顔を歪める。それもそのはずで、僕は威圧を解くどころか、強めている。もうフォーカスは涙目になっているし…。


 「師匠で…す」


 しばらく、威圧を強めつつフォーカスの答えを待っていると、フォーカスは声を振り絞るよう出して答えた。


 「なら、あんなのに恐怖するはずはないよね?」


 威圧を解かないままできる限りの笑顔でフォーカスに聞いてみると、必死に首を縦に振っていた。


 「じゃあ、頑張ってね」


 「は、はい!!」


 フォーカスはビシッと敬礼して、イリスさんが相手にしているハニービーの元に駆け出していった。


 イリスさんに襲い掛かる為に空中から降下してきたハニービーにフォーカスがタイミングを合わせて斬りかかる。

 しかし、その攻撃はハニービーに察知され避けられてしまった。攻撃された事で、ハニービーは標的をイリスさんから再びフォーカスに切り替える。イリスさんはそれを見てその場から離れる。

 活を入れられてからのフォーカスは魔物に対する恐怖を乗り越えたのか、訓練と同じような動きをし始めた。ちなみにフォーカスに対する威圧は戦闘の邪魔にならない程度まで弱めているので、魔物に対する恐怖を乗り切ったかは怪しいところだ。


 本来の動きが戻ってきたフォーカスは、ハニービーの攻撃を盾で受けずに足を使って回避するようにして、相手の隙を窺っている。

 そして、5分ほど経った辺りでようやく状況が動いた。

 何度も攻撃を仕掛けていたハニービーは疲れが出てきているらしく、最初のような精彩を欠いていた。そんなハニービーが腹部の針を向けて降下してきた。フォーカスは余裕をもって回避し、すれ違いざまに剣を振るう。その一撃がハニービーの頭部と胸部を永遠に別れさせた。






 1人での初戦闘を終えたフォーカスは心身ともに疲れていた。


 「それで、初めての1人での実践はどうだった?」


 威圧を解除した僕はフォーカスに今の心境を聞いてみた。


 「……凄く疲れたました。以前に複数人で魔物と戦った時とは、何もかもが違い過ぎて比べものにならないぐらい…」


 「だけど、慣れないとね。これから町に着くまでは1人で戦うんだから」


 心身ともに疲弊しているフォーカスには僕の一言がトドメとなったのか、無言で突っ伏してしまった。


 フォーカスが突っ伏している間に剥ぎ取りを終わらせて、出発の準備を整える。


 「いつまで、そうしているんだい? そろそろ出発するよ?」


 僕が声を掛けると、のろのろと起き上がるフォーカス。


 「今回は初戦闘だからしょうがないけど、次からは剥ぎ取りまでさせるからね」


 「…分かりました」


 フォーカスは顔を引きつらせてながらも返事をした。

 そんなフォーカスを尻目に僕たちはイーベの町に向けての旅路を再開した。




ありがとうございました。


これからの更新なんですが、仕事の忙しさが悪化する一方の為、今回みたく3週間も空いてしまうかもしれません。

読んでくれている方々には申し訳ないのです。

エタる事だけは無いので気長に待っていただけるとありがたいです。

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