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修行

お待たせしました。

連載を再開します。




 フォーカスの修行を始めて3日が過ぎた。

 修行の内容は午前中はひたすら森を走り込み、午後は各種筋トレをしている。

 初日、フォーカスは泣き言ばかり言っていたけど、なんとか最後までやり遂げた。

 2日目は初日とはうって変わって一切無駄な事を喋らなかった。多分筋肉痛が酷くては泣き言を言っている余裕がないんだと思う。走り込みは初日の半分以下の距離しか出来ず、筋トレは初日より倍の時間が掛かって、終わった頃には日付が変わっていた。

 3日目はフォーカスの様子を見て、さすがに座学に変更しようかと思って、本人に提案したのだけど、「まだ、3日目ですよ? 僕は大丈夫です!」と言い、いつものメニューをこなした。





 そして、修行開始の4日目の今日から武器を使った素振りを加える予定だ。


 「師匠、おはようございます。今日も昨日と同じメニューですか?」


 フォーカスは修行開始4日目って事もあるせいか、多少は修行に慣れてきたようだ。


 「おはよう。今日から筋トレの後に新しいメニューを追加するよ。内容はその時までのお楽しみで」


 「え゛っ!?」


 「そんな声だしても内容は代えないよ。それにまだまだ基礎の内容だから、死ぬことはないし安心していいよ」


 「それって、この先は死ぬかもしれない訓練があるって事ですよね、師匠?」


 フォーカスは先の事を気にして何か言っているけど、無視、無視。


 「そんな事より早く始めないと、終わるのが今日も日付またいじゃうよ」


 「うわっ! それじゃあ、行ってきます!!」


 フォーカスは慌てて走り込みへ行ってしまった。

 ちなみに、サボらないでしっかり走っているかの確認は、感知スキルで確かめている。

 今のスキルレベルだとだいたい半径5㎞が限界なので、フォーカスには広場を中心とした半径5㎞を走り込んでもらっている。

 途中で魔物が近づいても、それぐらいならすぐ駆けつけられるので、安心して走り込んでくれと、フォーカスに伝えたら、嬉しいようで悲しいような、不思議な表情になっていた。



 「さて、こっちも始めますか…」


 フォーカスが走りにいたのを確認して、僕も自分の訓練を始める。

 僕自身の訓練内容は吸血スキルで集めたスキルに慣れること。

 スキルレベルが低かった頃は問題なかったんだけど、レベル4を越えたぐらいからレベルに合った動きが出来ていないように感じ始めた。なので、ちゃんとスキルを使いこなせるように訓練するようになった。


 剣を振り始めて少しして、イリスさんが広場にやってきた。


 「あれ? イリスさんは今日もここにいるんですか?」


 「まぁ、何もする事がないからね…」


 彼女には、今回の件が始まった時に自由にしていいと言ってある。だけど、やっぱり僕の傍を離れる気はないようだ。ちなみにイリスさんが今広場に現れたのは、単に寝坊しただけ。彼女は朝にあまり強くないようだ。追われている身なのに、危機意識が足りないように思えたから、そこのところを聞いてみたら、『追っ手が大勢の人前に現れることはほとんどないわ』とのことだって。




 イリスさんと合流してから数時間後に、フォーカスが走り込みから帰ってきた。


 「た、ただいま…ハァハァ、戻りました。ハァハァ…」


 フォーカスは暫く息を整えるのに努めた。


 「イリスさん、挨拶がおそくなりましたが、おはようございます」


 「…あなたもよく逃げ出さないわね」


 「自分で頼んだのに、逃げ出すはずないじゃないですか」


 「それなら早速、次の訓練に移ろうか?」


 「うっ!」


 フォーカスがイリスさんの疑問にカッコつけて答えたので、背後からフォーカスの肩に手を置いて脅してみた。


 「い、イリスさん。僕は次の訓練があるので、これで失礼します」


 「フォーカス、ちょっと待って」


 「何ですか師匠?」


 「今日から筋トレは、昨日までの半分でいいよ」


 午後のメニューである筋トレを開始しようとしたフォーカスを呼び止めて、メニューの変更を伝える。


 「師匠…半分になるのは嬉しいんですが、それって、その後の新しい訓練が関係していると分かるので、素直に喜べないんですが…」


 「素直に喜べばいいのに…」


 「喜べないですよ! 兎に角、筋トレします」


 そう言って、フォーカスは僕たちから離れて筋トレを開始した。




 「し、師匠…終わりました」


 「流石に半分だと終わるのが早いね」


 「…早いと言ってもそろそろ日が傾く頃じゃないかしら?」


 イリスさんがツッコミを入れたけど無視して先に進める。


 「さて、フォーカスには、今から武器の素振りをしてもらうんだけど、何か希望の武器はあるかい?」


 「武器…ですか」


 「一応、基本の武器は揃ってるけど、特殊な武器を使いたいなら買わないといけないからね」


 「…師匠は僕にどんな武器を使ってもらいたいんですか?」


 「それは僕のいいなりになるって事?」


 フォーカスの質問の意味が分からなかったので、パッと思いつく理由をあげてみた。


 「違いますよ師匠。えっとですね、多分なんですが、師匠はある程度、僕をどんな風に鍛えるか決めているような気がするんです。ですので、参考までにその方針を聞いてから武器を決めようかと思ったんです」


 なるほど。フォーカスの言う通り、僕はフォーカスをこんな風に鍛えようというビジョンがある。だけど、それはあくまでも僕の理想であって、フォーカスに押し付けていいものではない。

 しかし、フォーカスは参考までに聞きたいと言ってきた。だから僕は、フォーカスの質問に答えることにした。


 「…個人的には片手剣より軽い武器をメインで、足を生かしたスタイルがいいんじゃないかと思っているんだ」


 「理由を聞きたいんですが…」


 「それは、フォーカスが回避のスキルを持っているからだよ」


 「…やっぱり師匠は観察系のスキル持ちだったんですね」


 「あっ!!」


 しまった! 言われて気付いたけど、フォーカスのステータスを本人から教えてもらってない!


 「その反応は当たりですね。おかしいと思ったんですよ。僕のステータスを聞かないまま、修行開始するんですから」


 やっぱり、本人もそこに疑問をもっていたみたい…。


 「…黙って視てごめん」


 「あっ、別に責めている訳じゃないですから、師匠は謝らなくていいですよ。僕は疑問を解消したかったのと、武器選びの参考にしたかっただけですから」


 そう言ってフォーカスは黙って考え込んでしまった。

 う~ん、それにしてもミスったなぁ…。今後は気を付けないと。




 10分ほどして、フォーカスは武器が決まったようでこちらに声を掛けてきた。


 「師匠、決めました。僕は師匠と同じ片手剣にしたいと思います」


 どうやら、僕と同じ武器にするようだ。これはある意味教えるのが楽になるなぁ。


 「それと、小さい盾…ラウンドシールド?でしたっけ? それも使いたいんですが…」


 「それは構わないけど、片手剣と聞いたから、てっきり僕と同じスタイルにするかと思ったんだけどな」


 「そんな無謀な事はしないですよ。僕は武器を使って戦うのは素人ですよ? 身を守る物を使うのは普通ですよ」


 うぅ…。とても耳が痛い…。

 …どうせ僕は最初から剣だけで盾なんて使ってなかったですよ。


 「ま、まぁ、そう言う事なら問題ないよ。とりあえず、武器はこれをあげるから。盾の方は明日までに用意するよ」


 気を取り直して、僕はフォーカスに初心者用のロングソードを渡す。


 「いいんですか?」


 「武器がないと次の訓練も出来ないしね。師匠から弟子へのプレゼントだと思って」


 「あ、ありがとうございます」


 「お礼はいいよ。それより、早速、次の訓練に移ろうか」


 僕がそう言うと嬉しい顔から一転して絶望した顔になるフォーカス。

 そして、その日から走りこみ、筋トレの他に素振りが追加された。



 そして、フォーカスを弟子にして2ヶ月が過ぎた。















 あれ? 何か忘れているような…。


ありがとうございました。

誤字脱字がありましたら、ご報告していただけると助かります。

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