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過去の自分に似た青年

暖かくなったと思ったら、急に寒くなる。

この時期は体調管理が難しいですね。

皆様も風邪などには気を付けて下さい!




 エルフのゴロツキを瞬殺して広場を後にした僕たちは村を歩き回り、食事が出来る所を探していた。


 「ねぇ! さっきのって並列思考よね? あなたって前衛じゃなかったの?」


 「…それより、何か食べ物買いませんか?」


 イリスさんは、先ほどの僕の戦い方を見て、僕を問いただそうとしてきだけど、僕はそれに答えないで食事を提案した。イリスさんもお腹が空いているのか、それ以上問いただしてはこないでくれた。


 イリスさんの質問に答えないまま、村を歩き続け、ハンバーガーのような物を売ってる屋台を見つけたので、2人分購入して、先ほどの広場とは違う人気のない場所に移動した。


 「はい、これはイリスさんの分です」


 僕たちは適当に座って先ほど買ったハンバーガーもどきを2人で黙って食べ始めた。



 「…それで、さっきの質問には答えてくれるのかしら?」


 ハンバーガーもどきを食べ終わったイリスさんは、先ほどの話の続きと言わんばかりに切り込んできた。


 「答えるも何も、見たとおりですよ。そんなことより、僕はこれからどうするかを決めたいですよ」


 「…あっそ」


 僕の質問に対する答えに納得していないようだけど、それ以上僕が話さないと分かったのか、イリスさんは素っ気なく返事をするだけにとどめてくれた。


 「さて、昨日は何も決めずに休んじゃいましたが、これからどうしましょうか?イリスさんは1ヶ月ほどは森を出ない方がいいんですよね?」


 「そうしてもらえると助かるし、あなたにも余計な迷惑を掛けないで済むと思うわ」


 「そうなると、それまでどうやって過ごすかが問題か…」


 さて、どうしたものか…。僕1人なら、森に入ってスキルのレベル上げって手があるけど、イリスさんがいる今、そんな事はできるはずもないし…。


 「ちなみにイリスさんは、これからの1ヶ月ほどで何かしたい事とかありますか?」 


 考えた結果、特にやりたい事が無かったので、僕はイリスさんの希望を聞いてみた。


 「………そうねぇ。身を隠している期間にしたい事って言われると、特にこれって言うのは無いわね」


 どうやら、イリスさんもやりたい事はないらしい。そうなると、何もしないでだらだら過ごすかレベル上げをするために森を散策するかぐらいしかやることが無いような気がする…。

 ちなみに村の人と交流するってのも考えはしたけど、先ほどのゴロツキたちの事があったから、気が進まないんだよなぁ。

結局、この日は何も決まらずに時間だけが過ぎてしまった。




 次の日は前日とは違い、割と早い時間に起きることが出来たので、宿で朝食を食べれた。

 朝食を食べ終わった後は、する事もないのでぶらぶらと歩き回る事にした。イリスさんには『他人に僕の情報を話すな』と命令しているので、自由行動でいいですよ、と言ったのに僕と一緒に行動している。


 村の中をだいたい歩き回り終えたので、今後の事も考え、森で魔物の素材集めでもしようかと思って、村の外に向けて歩いていると、昨日聞いたゴロツキたちの声が聞こえてきた。


 「ったく。昨日は散々な目に遭ったな」


 「まさか、ヒトに不意打ちでやられるなんてな」


 連中も森に行くらしく僕たちと同じ方向へ歩いていた。連中と関わりたくないと思ったので、別ルートで森に出ようと進行方向を変えようとした時に、連中から何か違和感を感じた。


 「…あれ? 昨日より1人増えてる?だけど、あれって…」


 よく見たら昨日より1人増えて7人になっていた。だけど何かおかしい?7人の内、1人だけ妙に肩を落して歩いているせいで、ものすごく浮いている。

 連中には関わりたくないと思っていた僕なのに、その1人が気になって、気付いたら連中の後を追っていた。



 連中を追ってたどり着いた場所は、道を外れて少し進んだ所にあった拓けた場所だった。広さ的には、昨日僕が連中を返り討ちにした村の広場よりは狭い、だいたい半径10mってところかな?。


 「フォーカス! お前のせいで、昨日は大変だったんだからな!」


 「俺なんて、足に穴が開いたんだぞ!」


 「そ、それは僕のせいじゃないよ」


 「いいや、お前のせいだ! お前がヒトが来たなんて言わなかったらよかったんだ」


 「そ、そんな…。外部からの来訪者が来たら、報告しろって言ったのは、エギたちじゃないか」


 「言い訳するなよ! 兎に角、お前のせいで俺たちは村の笑いものだよ。」


 どうやら、昨日の一件は村に到着した一昨日から始まっていたみたい。多分、冒険者ギルドの事を訊いてる時に、あそこで責められている青年に聞かれて、連中に報告したようだ。

 それにしても、連中は村の笑いものになったのか。自業自得だからなんとも思わないけど、あの青年はとばっちりもいいところだろうなぁ…。


 「フォーカス! お前、俺たちの魔法スキルの上達に付き合えよ」


 「えっ? いや、それって…」


 「嫌とはいわないよな? お前のせいでこっちは笑いものになったんだから」


 「けど…」


 「兎に角、始めるぞ! 水よ敵を撃ち抜け『アクアバレット』」


 「う、うわ!」


 連中のやりとりを見ていると、1人が魔法を青年に向けて放った。青年は必死に回避したのでその魔法が当たることはなかったけど、それをきっかけに残りの5人もそれぞれ魔法を放ち始める。

 青年は回避にすることに必死で、反撃する隙がない。そんな青年を見ていると、僕はなぜかイライラする。僕が青年にイライラしているのを我慢している間も連中は魔法を撃ち続けている。


 「どうした? 頑張って避けないと死んじゃうぞ?」


 「大丈夫じゃね? 回復魔法でちゃんと治してもらうからさ。そういう訳だから安心して、もっとくらっていいぞ!」


 そう言いながら連中の魔法は過激になっていく。最初はレベル1の魔法だったのに、徐々にレベル2の魔法が混じり始めた。青年はあちこち被弾してそろそろ動くのも辛そうだ。連中もそれが分かっているのか、わざと当たらないように足元を狙ったりして、楽しんでいる。多分、昨日の僕も普通だったらこうなっていたんだろうな。


 流石にそろそろ連中を止めないと、青年が死んじゃうじゃないかと思って、出て行こうとしたら、誰かがこっちに近づいてきているのに気が付いた。


 「ちょっと! あんたたち、またこんな事しているの?」


 出てきていきなり怒鳴り散らしたのは、とても美しいエルフの女性だった。


 「ちっ! うるせえのが来たな。帰ろうぜ」


 女性の登場により、場が白けたのか連中は青年を置いてさっさと帰ってしまった。連中が帰ったことによって攻撃が止まったので、青年はその場で倒れてしまった。


 「フォーカス!?」


 女性は青年に駆け寄ると青年に回復魔法を使用し始めた。


 「…うっ」


 「気が付いた?」


 「…アン?」


 「よかったぁ…。フォーカスがあいつらに連れて行かれたって聞いて、探していたのよ」


 「…そうか、僕はまた君に助けられたんだね」


 「いいのよ。私が勝手にしているんだから」


 「僕はよくないんだ…。お願いだから、僕に構わないでくれ」


 「フォーカス…」


 目を覚ました青年は女性と少し言葉を交わすと回復しきっていない体に鞭を打って立ち上がり、森の奥に行ってしまった。女性は青年を追いかけることはせず、とても悲しそうな表情のまま、村に帰ってしまった。多分何度も同じようなやりとりをしているんだと思う。



 「結局、最後まで見ていたけど、どうしたの?」


 イリスさんが誰もいなくなったのを確認してから僕に話しかけてきた。


 「…あの青年が気になりましてね。なんだか昔の自分を見ているようで」


 そう。青年の女性に対する態度を見て、なぜあの青年が気になったのか、やっと分かった。彼はこの世界に来る前の自分のように見えたんだ。いじめられている自分に関わって、その人にもいじめの矛先が飛び火するのが嫌で、誰とも関わろうとしなかった昔の自分に。


 「あなたが? 彼と同じ?」


 僕の過去を知らないイリスさんはとても信じられないといった顔をしていた。


 「イリスさん。ちょっと、あの青年を追いかけてもいいですか?」


 「私は構わないけど、どうしたの?」


 「どうしても彼が放っておけないようなので、様子を見に行こうかと…」


 「まぁ、いいんじゃないかしら?どうせ、する事もないんですし」


 「ありがとうございます」


 イリスさんも反対しなかったので、僕は彼を追いかけて、森の奥に向かって歩き始めた。




ありがとうございました。

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