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異世界で人間辞めました  作者: つばき
3.5章
34/133

セシリアの小さな出会い

タイトルから分かると思いますが、今回はセシリア視点です。




 私は今、北の森と呼ばれる広大な森の中にいます。もちろん、私のご主人様であるノゾム様や、先輩奴隷であるリンさんとサキさんも一緒です。私たちは採取依頼の為にこの森に来ました。

 今は皆さんとは別行動で目的の物を探しています。


 「なかなか見、つからない…です」


 私は目的の物が見つからず、つい独り言を呟いてしまいました。

 今、町では風邪が大流行しています。それも薬が足りなくなるほどに。

 私たちが探しているのは解熱草という、熱を下げる薬草です。普段ならすぐ見つかるほど生えているのに、今は全然見つかりません。多分この辺りのは採取された後なのでしょう。

 

 私は気をとり直して、別の場所を探そうと移動する事にしました。


 (シクシク…)


 しかし、それは突如として聞こえてきた声により叶わぬものになりました。


 「誰、かいる…のです、か?」


 私は聞こえてくる声に怯えながらも、勇気を出して話しかけてみます。だって、聞こえてくる声は小さな子供の声で泣いていたから。


 (ひっぐ…お、お母さんどこぉ?)


 どうやら声の主は迷子のようですね。あと、こちらの声は届いてないようです。ただ、気になるのは私の気配感知に反応が無いことです。まさかアンデット系の魔物って事はないですよね…。とりあえず普段使っていない魔力感知を発動して声の主を探す事にします。


 「え、っと…。…っ!? う、嘘?」


 魔力感知に切り替えて探ったところ、反応は5mほどしか離れていない所にいた事に驚いてしまいました。兎に角、反応のあった所を探そうと近づいてみる事に。


 「うっ、うぅ~。お母さ~ん」


 そこにいたのはアンデット系の魔物ではなく、身長10cmくらいの背中に羽の生えた小さな女の子?でした。


 「あの、どうし…たんで、すか?」


 「ぴっ!」


 私は泣いている小さな女の子に声を掛けてみましたが、女の子は急に声を掛けられた事に驚き、何処かへ飛んで行ってしまいました。


 「あっ!ど、どうしま…しょう」


 私は呆気にとられてしまい、暫く固まってしまいました。そして、硬直から戻った私は、あの子を追うか迷いました。

 普段の私なら、絶対追いかけないと断言できます。それどころか、最初に声を掛ける事も出来なかったはず。だけど、実際には声を掛けてしまった。つまり、あの子は私の中では恐怖の対象ではないという事です。


 「………よしっ!」


 私は少し迷いましたが、追いかける事にしました。

 この森で、あんな小さな子が1人で泣いているのを放ってはおけないと思ったからです。それに私から逃げた先で魔物に襲われたなんてなったら、私のせいですし…。




 再び魔力感知で探す事、10分程度で見つける事が出来ました。幸いにも魔物に襲われている事もなく、先ほどと同じように泣いているだけでした。


 「お母さんどこ~?ミーリ疲れたよ~」


 今度は女の子を驚かせないように、少し離れた所から声を掛ける事にしました。


 「あ、あの!どうし…たんです、か?」


 私はつっかえながらも、驚かせないように、ギリギリ聞こえる大きさの声で話しかけてみました。


 「ふぇ?」


 今回は驚かせない事に成功したのか、女の子は声のした方向、つまり私の方に目線を向けてくれました。


 「あ、あぁ!ヒ、ヒトだ。…ミーリは疲れて逃げれないから、捕まっちゃうんだ!お、おかあさ~ん!」


 女の子は私を見ると、何かを呟いて泣き出してしまいました。聞き取れた言葉は『ヒト』でしたが、もしかしてヒト族と間違えられたのでしょうか?


 「も、しかして、ヒト族と…思ってます、か?私、はヒト族じゃ…ないで、すよ?」


 私は女の子に近づいて自身の頭の上に付いている耳を見せました。


 「ひっく…。わぁ!」


 私が耳を動かすと、女の子は泣き止んでくれました。


 「私、はセシリ、アって言い…ます。あな、たは?」


 「ミーリはミーリって言うの!」


 女の子はミーリと言うようです。自己紹介を済ませたので、私はミーリがどうして泣いていたのか聞いてみる事にしました。


 「それ、でミーリは、どうし…て泣い、ていたんで、すか?」


 「ミーリはお母さんと散歩してたんだけど、お母さんがいなくなっちゃったの…」


 ミーリはお母さんとはぐれたようです。ミーリはお母さんがいなくなったと言ってますが、多分ミーリが知らないうちに、お母さんの傍を離れたんだと思います。


 「そ、れじゃあ、お…母さんを探、すの手伝、います…よ?」


 「ほ、本当に!ミーリの事捕まえないの?」


 「そん、な事し…ないで、す。だか、ら、泣きや…んで下、さい」


 「あ、ありがとう…」


 私の事を少しは信用してくれたらしく、泣き止んでくれました。そしてミーリちゃんのお母さんを探し始めました。


 お母さん探しをしている中、私はミーリちゃんの事を色々と教えてもらいました。

 ミーリちゃんは妖精という種族だそうです。

 前に、サキさんから教えてもらった妖精という種族は、魔力をが実体化したような種族だと言ってました。そしてとても珍しいらしく、非合法な取引で莫大な金額になるみたいなので、見つかったら捕まえられる事がほとんどだそうです。そのため、妖精は人前には姿を見せないそうです。

 

 そんな妖精のミーリちゃんですが、今は私の頭の上で果実を食べています。


 「美味し、いです…か?」


 「うん!美味しいよ」


 私は魔力感知で周囲を捜索しながら、ミーリちゃんと分けた果実を食べています。

 捜索の方はあまり進んでいません。私の魔力感知のレベルが低いのが原因です。それに捜索を開始してから2時間ぐらいでしょうか?1人でいた時より、魔物が寄ってくるようになりました。それらは見つかる前に離れるので戦闘までには発展しませんが、捜索の邪魔であるのは間違いありません。


 「また魔物、です。どう、してこっちに…来るのです、か?」


 「えっ?」


 「あっ、何で、もないの…です。た、ださっきか、ら、魔物が…私た、ちを目指…して、向って、くる…ので、どうし、てだろうと…思ったの、で」


 どうやら私の独り言が聞こえてしまったらしいので、今の状況をミーリちゃんに説明する事にしました。すると、ミーリちゃんの顔色が悪くなってしまいました。


 「セシリアぁ、ごめんなさい。たぶんミーリのせい」


 「どう、言う…事で、すか?」


 「あのね、妖精は気を張ってないと、魔物が寄ってきちゃうんだって、お母さんが言ってた」


 どうやらミーリちゃん自身はちゃんと理解はしていないようですが、妖精族は魔物を引き寄せる?特性があるようです。もしかして、ミーリちゃんが1人で迷子になっていた時に魔物に襲われなかったのは、ちゃんと気を張っていたのかもしれませんね。ってもしかして…


 「ミーリ、ちゃんの…お母さ、んも、今は気…を張れ、ていない…可能、性があ、ります…ね」


 「セシリア、どうしたの?」


 「もし、かしたら…ミーリちゃ、んのお母、さんが…危な、いかも…しれな、いです」


 私はミーリちゃんに簡単に説明をしました。ミーリちゃんのお母さんがミーリちゃんとはぐれたせいで気が張れなくなって魔物に襲われているかもしれない、と。

 ミーリちゃんは説明を聞いて慌て始めました。


 「お母さん!お母さんが!」


 「ミー、リちゃん…落ち、着いて…下さ、い。そう、じゃな…いと、お母さ、んを…探しに、いけないで、す」


 そう言って私は彼女を落ち着かせます。


 「で、でも!」


 「ミーリ、ちゃんが…落ち、着いてく、れないと、魔…物が、こっちに…寄って、きて、しまうの、です」


 ちょっと酷いかもしれないですが、こちらに魔物が来ないようになれば、魔物はミーリちゃんのお母さんの方に向かうかもしれないので、それを辿ればミーリちゃんのお母さん見つかるかもしれません。そう説明して、ミーリちゃんに納得してもらいました。

 ミーリちゃんが落ち着いたのを確認して、魔力感知から気配感知に切り替え、捜索範囲を拡大しました。捜索範囲が拡大したのと、こちらに魔物が来なくなった事で、魔物がある方向に向かっているのが分かりました。私はその方向にミーリちゃんのお母さんがいると思って、駆け出しました。







 「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」


 気配遮断のスキルを使って、魔物を背後から気付かれる前に倒して進んでいくと、誰かの叫び声が聞こえました。その声にいち早く反応したのはミーリちゃんでした。


 「お母さんの声だ!」


 魔力察知を使うと今まで魔物の反応しかなかった所に魔力の反応が出ました。幸い魔物に囲まれてはいないので、私でも対処できるかもしれません。


 「ミー、リちゃん、魔物…を倒すか、ら静かに、してい…てくだ、さいね」


 今にも飛び出しそうな彼女に魔物の事を伝えると、私の言う通りにしてくれました。

 反応のあった方に向かうと、オークがミーリちゃんを大人にしたような妖精を追いかけていました。私は時間を掛けてしまえば他の魔物も来てしまうと思い、一気に倒す事にしました。と言っても、九尾解放でステータスを強化して背後からの首を斬り落しただけです。




 「お母さ~ん!」


 「ミーリ!」


 オークを倒した私はミーリちゃんのお母さんに声を掛けて、2人を再会させる事に成功しました。最初はミーリちゃんみたく、逃げられそうになりましたが…






 「えっと、セシリアさんでしたよね?私はミーリの母でクリアと言います。娘共々助けていただき、ありがとうございました。あの、何かお礼をしたいのですが…」


 再会できた喜びが落ち着いたミーリちゃんのお母さん、クリアさんは私にお礼を言ってきました。しかし、私はお礼と言われても何も浮かばず、暫く考えている、とこの森に来た目的を思い出し、聞いてみる事にしました。


 「それ…なら、解、熱草が…どこにあ、るか知、りません…か?」


 「そんな事でいいのですか?」


 「元々、この…森に、来た、のはそれ…が目的、でしたの、で」


 私はこの森に来た理由をクリアさんに話しました。クリアさんは納得してくれて、解熱草の生えている場所まで案内してくれました。


 「あり、がとうご…ざいまし、た。これで…目的が、果たせ…ます。私、は帰り…ますので、2人、ともお…元気で」


 私は解熱草を採取して、ノゾム様たちと合流する為にミーリちゃんとクリアさんにお別れの挨拶をして森の外に向かって歩き始めました。 


 「こちらこそ、ありがとうございました。またどこかでお会いしたらその時はよろしくお願いしますね」


 「バイバイ!セシリアお姉ちゃん!」


 ミーリちゃんにお姉ちゃんと言われてビックリして振り向いた時には、2人はそこにはもういませんでした。スキルを使えば追う事も出来ますが、それはしたくなかったので止めました。

 私は少しでも早く、森の外でノゾム様と合流して、今のこの気持ちを話したく自然と駆け足になっていました。

ありがとうございました。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。


個人的にはセシリアは動かしやすい子ですので、彼女の話は筆の進みが速いこと速いこと…

メインヒロインはリンのはずなんですがね(笑)

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