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模擬戦

誤字脱字に対して修正をしましたので、各話とも大分誤字脱字が減ったと思われます。

ご報告していただきありがとうございました。

 キースの屋敷で食事をご馳走になり、模擬戦の詳細を決めてから一夜明け、僕とセシリアは装備を整える為に町に出ていた。

 今回の模擬戦は武器は木で出来た物を使うけど防具は自前のを使う為、現状セシリアだけ防具がないので買いに来たのだ。ちなみに町の外でリンとサキは対人戦の練習中だ。主にリンが接近された時の対処で、サキは遠距離攻撃の敵の対処を重点的に練習しているはず。

 僕としては最初は乗り気じゃなかったこの模擬戦だけど、一晩経って考え方を変えた。

 これを機に一般レベルの冒険者の戦闘ってのを知ろうと思ったのだ。この先もしかしたら依頼で他の冒険者と仕事をするかもしれない。その時にレベルを逸脱した戦闘をして、依頼終了後に面倒な事になるとも限らない。それならいっそこの模擬戦である程度、一般冒険者の動きを観察する事にした。


 「それでセシリアはどんな武器にする? 防具を買うついでに武器も買おうと思うんだけど…」


 「…わ、たしは…短刀、があれば…大丈、夫です」


 セシリアは昨日に比べるとかなり血色は良くなっている。だけど、まだ激しい動きは厳しいだろうと思うから、武器もそれぐらい重さのがちょうどいいのかも知れないな…。それにセシリアは短刀術を持っていたし。


 「それなら、防具は? と言うより、売られる前はどんな装備をしていたの?」


 レベルの事を考えれば魔物と戦った事はあるはずだから、防具に関してはその時のを参考に決めればいいかと思ったけど、セシリアから返ってきた答えは予想外だった。


 「私…防、具無し…で、魔物と、戦って…ました」


 「…そっか。じゃあ、今回は胸当てだけにしとくか。今まで防具なかったんだから少しずつ防具のある戦闘に慣れていこう」


 防具なしで魔物と戦ってたと言われた僕はそれ以上何も言えなくなり、誤魔化し頭を撫でる事しかできなかった。


 セシリアの武器は初心者が使う短刀よりワンランク上の物を2本買った。2本目を買ったのは予備としてだ。剣や刀と違って短刀は投擲にも使えるのも理由である。ちなみに2本以上は今のセシリアの体には枷にしかならない為これ以上買うのは止めた。防具は話した通り胸当てだけにした。ただし、軽さと動きやすさを重視した物にした。


 セシリアの装備も整えたあとは、模擬戦に向けて練習に明け暮れた。リンとサキは先ほど言った事を重点的に、セシリアは装備の重さに慣れる事を重点的に行った。僕はセシリアの練習相手がほとんどだった。



 そして、模擬戦当日。僕たちはギルドに向かうと、ギルドで受付をしていたシューナさんが、模擬戦を行う場所まで案内してくれた。


 「やぁ! 待っていたよ」


 模擬戦の場所は周囲に被害が出ないように町の外で行われるとの事で、その場所まで行くと、すでにキースは到着していた。


 「おはよう。まさか、もういるなんて思わなかったよ。それで、後ろの3人がリンたちの対戦相手でいいの?」


 「僕は時間に遅れた事はないんだよ。後ろの3人が対戦相手で間違いないよ。と、言っても内2人は今日限りだけどね」


 後ろにいる3人はみな女性だ。キースのやつ、こっちに合わせてくれたのかな?


 「それじゃあ、早速始めようか?」


 「ちょっと待って! この模擬戦の立会人ってシューナさん?」


 この場には、僕たちとキースのパーティー以外の人間はシューナさんしかいない。


 「そ、そうなんですよ。実は模擬戦の立会人を務める事が、この間のミスの罰として命じられまして…」


 どうやら、シューナさんはこの模擬戦の原因を作った責任として、ここにいるらしい。


 「まぁ、誰が立会人でもいいじゃないか。兎に角始めよう」


 「それでは、最初の模擬戦はセシリア様とアーニ様の対戦です。両者、武器を取りに来て下さい」


 シューナさんがセシリアと対戦相手に武器を取りにくるように指示を出す。

 相手の女の子はセシリアぐらいの身長で、水色の髪が肩ぐらいまで伸びていて、頭の上には猫耳がある。元気が取り柄と言わんばかりの動きで武器を取りに行った。武器はシューナさんのアイテムボックスに収納されているらしい。

 選んだ武器は片手剣だ。利き腕じゃない方の腕にバックラーを付けている。他の防具は動きやすさを重視しているようだ。


 「よろしくお願いしますね!」


 「…よろし、くお願…いしま、す」


 セシリアも武器を受け取り、お互いに10mほど離れて挨拶をした。


 さて、模擬戦が始まる前に、相手のステータスを視てみようかな。


【名 前】 アーニ

【年 齢】 14歳

【種 族】 猫人族

【職 業】 剣士

【レベル】 12

【H P】 693/693

【M P】 487/487

【筋 力】 332

【防御力】 329

【素早さ】 473

【命 中】 398

【賢 さ】 297

【 運 】 33


【スキル】

剣術LV1 盾術LV1 俊敏LV3



 やっぱり猫だけあって、素早さが一番高いな。ステータスを視る限り、これはセシリアには厳しい戦いになりそうだ…。


 「それでは模擬戦を始めます。………始め!」


 開始の合図と同時に、アーニが駆け出した。ただし、それはセシリアに向かっていくものではなく、かく乱するように右に左にと、動き回りながらセシリアの隙を作り出そうとするものだった。

 セシリアは左右に動きながら距離を縮めてくるアーニを、目で捉えようとするも上手くいかず、アーニの動きに翻弄されてしまう。それでも背後に回られる事は阻止しようと、バックステップで距離をあけようとする。しかし、アーニの素早い動きについていけず、ついに背後に回られてしまった。慌てて振り返るもアーニはそこにはいなかった。

 アーニはセシリアが慌てて振り返るのまで先読みして、そのタイミングに合わせて、気付かれないように背後に回っていた。そして、セシリアが自分を完全に見失ったと確信し、剣を振り下ろした。







 タイミングは完璧だったと思う。背後に回ったアーニを追いかけるように振り向いたセシリアだけど、そこに対戦相手であるアーニの姿がなくて、一瞬動きが止まった。その隙を見逃さずに勝負を決めにいったアーニ。誰がみてもセシリアは反応できないで、アーニの一撃をもらうと思った。だけど、セシリアはその完璧なタイミングの一撃を横に転がるように倒れる事で回避してみせた。これには僕たちよりもアーニの方が驚いたようだ。


 「今のよく避けれましたね! 完璧に決まったと思ったのですが…」


 立ち上がってアーニの方に振り向いたセシリアに対して、アーニは今の回避を賞賛した。


 「ふ、不意打…ちは、いつも、の事で…したので…気配、で分かり、ます」


 「不意打ちがいつもの事って…。あなたは一体、どんな生活を送っていたのですか?」


 どうやら、今の回避は気配察知のおかげらしい。確かにセシリアは、レベルに対してスキルのレベルがつり合わないとは思っていたけど、あいつのセシリアへの扱いがそうさせていたのか。


 それからは試合は暫く膠着した。アーニがセシリアの隙を作り攻撃するも、セシリアは気配察知を駆使して攻撃を回避する。セシリアから動く事がほとんどないので、アーニはセシリアの体勢を崩す事もできない。対するセシリアは体力が完全に戻ってない為に、自分から動かずに防戦に徹していた。多分相手のミスを待っているんだろう。そうして、お互いに決め手に欠けた状態で時間だけが過ぎていく。


 時間が経つにつれて、セシリアがアーニの動きを追えなくなってきた。だいぶ肩で息をするようになってきたので、多分、体力の限界なんだと思う。

 幾度目かになる仕切りなおしで、初めてセシリアが攻勢に出た。

 今まで短剣一本だったのに、二本目の短剣を抜いた。そして…


 「い、きま…す」


 その言葉と同時に、セシリア自身に変化が起きた。髪の色が茶に近い金髪からセシリアの本来持つ銀髪に戻り、尻尾が2本(・・)に増えていた。

 セシリアはアーニ以上のスピードで彼女にむかって駆け出す。アーニはセシリアの変化に理解が追いつかず、セシリアが振るった短刀をギリギリ、バックラーで防ぐ。だけど、今のセシリアは止まらない。一度攻勢に出た勢いをなくさない為に、二本の短刀を絶え間なく振るい続ける。


 「ノゾム、セシリアのあれはなんなのよ?」


 リンがセシリアの外見と動きの変化に驚き、その答えを求めて僕に質問してきた。


 「多分だけど、セシリアの固有スキル『九尾解放』だと思う…」


 僕は以前視たセシリアのステータスを思い出しながら答えた。その時は詳しい説明を視ていなかったので、実は僕もセシリアの動きの変化には驚いている。外見の方はスキルの名前から想像は出来ていたので、驚きはしなかった。

 とりあえず、驚いていてもしょうがないので、スキルの詳細を視てみる。


 【九尾解放】

 ・狐人族の選ばれた者のみが使用できるスキル

 ・尻尾の数に応じて、術者のステータスを運以外強化出来る

 ※強化の度合いは、『×尻尾の数』

 ・術者のレベルに合わせた数だけ尻尾を増やせる【現在 2本】

 ・解放出来る時間は『レベル÷尻尾の数=○分』

 ・使用後は解放した尻尾の数の分だけステータスが低下する『ステータス÷尻尾の数』

 ・使用後のステータス低下時間は使用した時間分、低下し続ける

 ・再使用にはある程度時間を空ける必要がある



 …僕はとんでもない子を奴隷にしちゃったみたい。時間制限と使用後の反動があるとはいえ、このスキルは強力すぎるよ。

 そう思いながらも、リンに九尾解放のスキル説明をしたら、「ありえないぐらい強力なスキルね…」と、僕と同じ感想をこぼしていた。ちなみに、隣で一緒に説明を聞いていたサキなんて、顔が引きつっていた。


 スキルの詳細を説明し終えて、試合に意識を戻す。セシリアのあのスキルは強力だけど、今のセシリアには、スキルの説明通りの時間を発動し続ける体力はないと思う。多分3分も発動出来ればいい方だと思う。

 セシリアがスキルを発動してから2分ぐらいが過ぎたけど、セシリアの猛攻は続いていた。その猛攻をアーニは必死に防御していた。普通に考えれば、アーニがここまで耐えられるとは思えないけど、多分セシリアの体力の問題で全力が出せないのが、今もなお耐えられている要因だと思う。

 しかし、その攻防も遂に崩れた。セシリアの右からの攻撃をアーニがバックラーで短刀ごと弾いた。弾かれた事で短刀を手放してしまったセシリアは弾かれた反動に逆らわず、その流れのままに残った左の短刀で攻撃を仕掛ける。アーニもセシリアの攻撃を弾いた流れに乗って剣を振るった。


 「そこまで!」


 立会人であるシューナさんが試合の決着がついたと判断し、試合を止めた。












 「この試合は引き分けとします」


 シューナさんは引き分けと判断した。セシリアは左の腹部に、アーニは左の肩口にそれぞれお互いの攻撃を受けていた。


ありがとうございました。

誤字脱字がありましたら報告していただけると助かります。

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