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キース・フライヤ

感想にてタイトルにご指摘がありましたので変更いたしました。


2月22日の日間ランキングで7位になっていました。

これからも飽きられないように頑張っていきますのでよろしくお願いします。

 「だから、模擬戦だって言ってるじゃないか、キミも冒険者なんだろ?だったら欲しい物は実力で勝ち取らないと」


 いきなり模擬戦で家を購入する権利を決めようとぶっ飛んだ事を言い出した青年はキース・フライヤと言うらしい。


 どうしてこうなったかって言うと、簡単に言えばギルドのミスだ。本来購入希望者が住居の案内に別の購入希望者とはち合わせする事はないらしい。それは隣で僕とキースの事を忘れて、後輩を説教しているお姉さんが言っているので間違いはないと思う。

 そしてギルドの職員がああなのをいいことに、勝手に話を進めるキース。面倒なことにキースは冒険者でもあるが貴族でもあるだそうだ。これはあくまでも本人が言っていることなので、今の所は自称貴族が僕の中でのキースの位置付けである。


 「兎に角、模擬戦で決めるからとりあえず今晩はうちに食事に来てよ。そこで模擬戦の詳細を決めよう。あっ、食事には奴隷の子3人とも連れてきてね!」


 「何で、あんたがそれを知っている?」


 僕は初対面であるはずのキースがリンたちの事を知っていたことに警戒する。


 「何言ってるのさ、僕は昨日のオークション会場にいたんだよ?あれだけ目立っておいて、そんな事言うの?」


 「うぐっ!」


 あの場にいたならリンたちの事を知られていても不思議ではない。


 「まぁそう言うことだから!あぁ屋敷の場所はギルドに伝えておくから必ず来てくれよ」


 キースは言いたい事を言うと颯爽と帰ってしまった。僕はいまだに説教中のお姉さんとその後輩を見て面倒な事になったなぁとため息をついた。

 




 「それで?なんでこんな事になってるのよ?ノゾムは家を探しに言ったはずよね」


 宿に帰ってきた僕はキールとの一件を話したらリンの説教が始まった…。おかしい。僕に悪い点は無いはずなのに…。


 「それにしてもノゾム君って色々巻き込まれるよね。話には聞いていたけど、これが例の運関連?」


 「ノゾム、様は、運に関…する特…別な、スキルがあるん、ですか?」


 サキは僕の事を事前に話していたので確認程度に聞いてきたけど、セシリアには何も説明していなかったので、ちょっと勘違いしたようだ。僕はリンの説教から逃げるついでにセシリアに僕たちの全てを説明した。


 「皆さん、ヒト、族ではな…かったの、ですね」


 説明を聞き終えたセシリアはちょっと嬉しそうだった。心なしか頭の上にある獣耳も嬉しそうにピコピコ動いている。


 「ノゾムに関しては人間かも怪しいけどね」


 「ちょっとリン?しっかり聞こえてるよっ!?」


 リンは僕が説教から逃げた事がお気に召さなかったようで現在はご機嫌斜めだ。そのせいか要所、要所でこうして毒を吐いてくる。

 その後はリンのご機嫌取りに時間を取られてしまった。気付いたら日が沈みかけていたので僕たちはキースの屋敷へ行く為にギルドへ向かった。

 


 「ようこそいらっしゃいました。こちらにどうぞ」


 僕たちはこの町でも1,2を争うぐらい大きな屋敷に来ている。ギルドで聞いた場所は住宅街とは正反対の所だった。そこにポツンと建っていた屋敷がキースの家らしい。


 ちなみにターニンの町には貴族街と呼ばれる、貴族たちの住む豪邸ばかりある住宅街は存在しない。理由はこの町が貴族たちにとっては、港町としての産業(メリット)より迷宮の町(デメリット)として映っているかららしい。戦闘の出来ない貴族にとってダンジョンが近くにあるのは、いつか魔物が溢れて町を襲うかもしれないと精神的に不安になるらしい。なのでこの町にいる貴族はかなり少ない。鍛えればいいじゃんと思うが、大半の貴族様はお金と地位の事以外に労力を割きたくないらしい。

 

 

 キースの屋敷で案内された場所は酒場のような部屋だった。厨房にカウンター、それにいくつものテーブルに椅子。僕たちが屋敷に似合わない部屋に唖然としていると、厨房からキースが出てきた。


 「来てくれたんだね。もう少しで料理が出来るから座って待っていてくれないか?」


 とりあえず、キースが厨房にいるのはわきに置いて、僕は招待に乗った理由を取り繕いもせず伝えた。


 「あなたが貴族じゃなかったら来なかったよ。あとで変な因縁つけられても困るから来ただけだよ」


 「それでもいいよ。兎に角もう少しだから待ってて」




 キースに言われるまま、僕は席に着いて、リンたちは僕の後ろに控えて待つこと10分ほどで、キースが料理を運んで厨房から出てきた。


 「ほら、奴隷の3人も席に着いて一緒に食べようよ」


 「いやいや、なんであなたが料理作ってるのさ?仮にも貴族なんでしょ?」


 キースが作ったと思われる料理は、貴族が食べるような上品なものではなく、酒場などでよく目にする一般人向けの料理だった。


 「だって、料理人に任せると、堅苦しい料理を作りそうだったから。それなら、僕が作った方が僕もキミたちも、気を使わなくて済む物を作れるから作ったんだけど?」 


 「そんな理由でいいの…」


 キースが料理を作っていた理由を聞いて貴族のイメージが崩れつつある僕だった。


 「兎に角奴隷の3人を座らせてあげなよ。特に狐人族の子は長時間立たせてたらかわいそうだ」


 僕はセシリアの事を言われたのでキースの言葉に甘えて3人を席に着かせた。


 「そうだ、食べ始める前に自己紹介をしようよ!そっちの奴隷のお嬢さん方の名前も知りたいしね。それにキミの名前も聞いた覚えもないし。と言うわけで、僕の名前はキース・フライヤ。一応フライヤ家の1人息子だよ。それと冒険者でもある。ランクはAだよ」


 そう言えば僕の名前言ってなかった。と言うより、言う暇がなかったというべきか…。って!キースって冒険者の上にAランクなの!?


 「ほら、僕にだけ自己紹介させて、そっちは黙ってるつもり?」


 僕が色々驚いて固まっているとキースがちょっと不機嫌に自己紹介の催促をしてきた。


 「ごめん、色々驚いて。えっと、僕はノゾムでこっちの金髪のオッドアイの子がリンスレット。黒髪のこがサキ。そして金髪(・・)の狐人族がセシリアって言うんだ」


 リンはこの屋敷に来る前から包帯を外して魔眼を使えるようにしていた。リン曰く罠に掛けられないようにする為だとか。

 セシリアも銀髪から初めて会った時の茶に近い金髪になっていた。セシリアに聞いたところ、妖術の一種らしい。その気になれば姿を丸々変えられるらしい。ただしそれ相応にMPを常時消費する為、今のところは長時間は出来ないそうだ。髪の色を変える程度ならそれほどMPを消費しない為、1日ぐらいは持つらしい。

 セシリアに何故髪の色を変えるのか聞いたら、「銀髪、だと…たくさ、ん殴ら、れる…から」と答えた。その為、髪の色を変える習慣がついたらしい。一応気にしなくて良いと伝えたけど、「ノ、ゾム様、に…余計な、迷…惑を、掛けたく…ない」と言われてしまい僕が引き下がる形となった。それにしても狐人族の銀髪は一体なんなんだろう?今度調べてみようかな?


 「なるほど、ノゾム、リンスレット、サキ、セシリアだね。覚えたよ。それでランクは?」


 「僕とリンがCでサキとセシリアは持ってないよ。なくても生活には困らないし」


 「へ~。…まぁいいや、とりあえず自己紹介も終わったし食べようか」


 キースが食べ始めるが、僕は食べるのを戸惑っていた。理由は毒を気にしてだ。それを察したキースが笑いながら「毒なんて盛らないよ。そんな事したら模擬戦出来なくなるじゃん」と言った。リンが嘘はついてないと合図してきたので、僕は食べる事にした。


 「3人も食べていいよ。僕は奴隷とか気にしないから」


 食べ始めたのが僕だけだったので、キースはリンたちにも食べるように促した。その言葉を聞いて、魔眼を持つリンが嘘じゃないと分かった為、食べ始めた。それに続くようにサキとセシリアも食事を開始した。





 会話のない食事も終わり、キースが模擬戦の話を振ってきた。


 「さて、食事も終わったし、模擬戦の話を始めようか?」


 「ちょっと待って。そもそもなんで模擬戦なんだい?別に話し合いでもいいだろ?」


 話を進めようとするキースに僕は最も疑問だった事を質問した。


 「どれだと僕がつまらないじゃないか!それに話し合いになると大体は、僕が貴族だからと言って、因縁をつけられないようにする為に、相手は僕の出す条件を全て飲むんだよ。そしてなんの苦労もなく欲しいものが手に入ってしまう。これはとてもつまらないんだよ。だから模擬戦で決めるのさ。欲しい物は自分の力で手に入れる為に!」


 もしかしてキースって貴族である事に不満を持っているのかな?まぁ苦労もなく望む全てが手に入るのは確かに味気なくつまらないだろうとは思う。だから不覚にも、キースが模擬戦にこだわる理由に共感してしまった。


 「ちなみにギルドには、模擬戦の為の場所を確保してもらってるから、ノゾムが拒否しても不戦勝になるだけだから。もちろん勝者にはあの家の購入権とまでギルドに伝えてあるから模擬戦前にあの家を購入することは出来ない」


 ただし、この根回しの良さにはイラッとする。


 「別に新しい物件が見つかるまで宿屋生活すればいいだけだから、模擬戦は不戦勝でm」


 「あと、バックれたらギルドで悪評を流すよ?『公衆の面前で負けたくないから逃げた』とか…ね」


 僕が不戦勝でも構わないと言い切る前にキースは脅しを入れてきた。どうやら僕に受けないと言う選択肢は無いようだ。


 「…ここまで手を回して、模擬戦の話とか言ってもすることないんじゃないの?」


 僕はこれ以上ごねても面倒事がより面倒になるだけだと思い、模擬戦をする方向で話を進める事にした。


 「そんな事ないよ?まずこれに署名してもらいたいんだ」


 キースは僕の前に1枚の紙を差し出した。僕は読む前にキースに尋ねた。

 

 「これは?」


 「誓約書さ。と言っても、模擬戦で負けてもその事に文句をつけないと言った、模擬戦で全てを決めるから終わった後に因縁はつけませんと、誓う事を書いたものだよ」


 読んでいくと、キースの言っている事が書かれていた。あとは模擬戦のルールも。どうやらお互いのパーティー同士で人数を合わせて1対1でやるらしい。そこで気になったのはキースのパーティーメンバーだ。この場にはいないけど…


 「もしかして僕のパーティーメンバーかい?あいにく僕の固定メンバーは今1人しかいないんだ。だから残りの2人はサキ君とセシリア君のレベルに合わせた人を用意するよ」


 「ちょっと待って!セシリアはまだ戦闘が出来る状態じゃない。やるならセシリアは外してくれ」


 「ん~、ノゾムはそう言っているけど、セシリア君はどうしたい?」


 「…わ、私…は戦って、ノゾ…ム様の…役に立、ちたいで、す」


 僕がセシリアを外すように頼むとキースは本人に確認を取ってみた。するとセシリアは戦う意思を示した。 僕は驚きながらセシリアの目を見るけど、セシリアは目線を外さないで僕の目を見続けた。


 「……分かったよ。セシリアも加えてくれ」


 結局僕が折れる事になった。


 「まぁ、別に今すぐやるわけじゃないし。こっちにもギルドにサキ君とセシリア君に合わせた対戦相手を依頼しないといけないから、実際に戦うのは3日後だから安心しなよ」


 それでも安心できるか!と思ったけど、言うだけ無駄だから言うのは止めた。

 そのあとはサキとセシリアのレベルを伝えて宿屋に帰ることにした。



ありがとうございました。

誤字があれば報告していただけると助かります。

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