銀髪になった女の子
皆様のおかげででランキングの日間にランクインしました。
ありがとうございます。
2月19日12時現在
ランキングの日間の総合部門で114位にランクインしました。(;゜д゜)
本当に皆様ありがとうございます。
2月19日22時現在
ランキングの日間の総合部門で67位になってました!
ただただ驚きでいっぱいです。
これも全て皆様のおかげです。
ありがとうございます。
2月20日7時現在
ランキングの日間の総合部門で37位になりました。
ランクインしてからのアクセス数が今までの10~100倍に増えてビックリしております(;・д・)
皆様これからもよろしくお願いします。m(__)m
誤字修正しました。
話しかけると、一応誤るのは止めてくれた。
↓
話しかけると、一応謝るのは止めてくれた。
あれからどれくらい言葉を失っていたんだろう?10分?20分?それとももっと?だけど実際は5分にも満たなかったんだと思う。
誰も言葉を発せないままでいたこの空気を破ったのは、その原因である銀髪になった狐人の女の子だった。
「んぅっ、う~ん…」
どうやら目を覚ますようだ。多分ポーションで体力が回復した為だろう。
目を覚ましていきなり知らない男が声を掛けるよりは同じ女が声を掛けた方がいいだろう。と判断して、リンに対応を任せてみた。
「目が覚めたようね?大丈夫?」
「ひっ!?」
「大丈夫だから落ち着いて。あなたに危害を加えるつもりはないから」
「(ガクガク)」
どうやら女の子相手でも恐怖心が先行しちゃってるっぽい。これが僕だったらどれだけひどい状況になったのか想像つかないな…。
リンの粘り強い対応のおかげで、何とか落ち着いた彼女と会話をし始めた。
「まずは自己紹介をしましょうか?私はリンスレット。あなたの名前を教えてもらえるかしら?」
「………セシリ…ア」
「セシリアって言うのね。それじゃあ、セシリア。あなたは奴隷として売られていたんだけど、覚えている?」
「…覚え、ていま…せん」
「そっかぁ…」
「ひっ!?ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいもうぶたないでください。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
リンがため息をついたのを聞いたセシリアはいきなり怯えながら繰り返し謝り始めた。この事態にリンはどうしていいのか分からず固まってしまった。
「…やっぱり、この子は親に見捨てられてからのあたしと同じ扱いを受けてきたんだ…」
オークション開始前からずっと黙っていたサキがようやく口を開いた。しかし出た言葉は昔の自分と同じだと言っていた。
「どう言う事なのですかサキさん?」
「このセシリアって子は物心ついた頃から行動のほぼ全てを否定されて今まで育てられたんだと思うの。そうじゃなければため息一つでここまでならないから」
「行動の全…て?否定?」
リンはサキの言っている意味を理解できずにオウム返ししてしまった。
「例えば、質問に答えられなかったとか望む答えじゃなかったとか、ご飯を食べたからとか、睡眠をとったから、果てには、そこにいるから」
「ちょ、ちょっと待って下さい!それってただの言いがかりじゃ?」
「そうだよ?そして、否定を表す行動が暴力。答えられなかったから、望んだ答えを返さなかったから殴られる、ご飯を食べているのが見つかったら殴られ、睡眠を取っているのが見つかったら殴られ、見かければ殴られ…。そうやって長い間否定され続けた結果が今のその子なのよ…」
「そんな事って…」
リンはサキの言葉を聞いて言葉を失ってしまった。
「今の話を聞くとサキも同じ経験をしたんでしょ?それでサキはよくセシリアみたくならなかったね」
僕はセシリアと同じ経験をしたであろうサキに理由を聞いてみた。
「あたしの場合は魔法が使えなかったのが原因だと自分でも理解していたし、そんな生活も5年だけだったから。だけどその子は違う。その子は物心ついた頃からそんな生活だったと思うし、なにより自分がどうしてそう言う扱いなのか理由を知らないのよ。だから殴られても謝るしか出来ないの。あたしみたく理由を知っていればまた違ったと思うけど、その子は知らないが故に、相手の機嫌を損ねないように謝って生きるしかなかったのよ。じゃないと暴力が止まないから…」
なんだかんだで僕も毎日殴られていたけど、学校だけだったし、期間も1年ぐらいだったからサキやセシリアに比べたら、どれだけマシだったかとか、比べるのも失礼だな…。
それにしても、サキの話を聞く限り、セシリアのあれは体に染み付いたものらしいからどうすればいいのかな?
セシリアのあの状態をどうやって落ち着かせるか考えていたら気配察知に反応が出た。
「くそっ!この忙しい時に来るなよ。確かに来る様に餌は蒔いていたけどさ…」
しかも反応は2つ3つではない。オークション会場で見たアイツらはどうやら人数を集めていたらしい。
「リン、人が来る。十中八九敵だと思う。セシリアを守って。サキはリンのサポートをお願い。今回は全員僕がやる」
「任せて!」
「りょうかい」
「セシリア。そのままでいいから聞いて?僕はノゾムって言うんだ。よろしくね?それで本題なんだけど、今からちょっと騒がしくなるけど、ここを動かないでほしいんだけど大丈夫?」
リンとサキに指示を出して、最後にセシリアに話しかけた。セシリアは謝りっぱなしだったけど、僕が話しかけたら謝るのを止めて話を聞こうとしてくれた。体は震えていたけど。
セシリアは僕の話を聞いてコクコクっと頷いてくれた。だから僕はついセシリアの頭を撫でてしまった。セシリアは何をされたのか理解が追いつかないらしく、固まってしまった。
固まってしまったセシリアを尻目に僕たちはここに集まってくる連中が接触してくるのを待つことにした。そして連中は僕たちを取り囲むようにゾロゾロと現れた。大体20人ぐらいかな?
僕たちを取り囲み終えた連中の中から、オークション会場で見た狐人族の男が一歩前に出て僕たちに話しかけてきた。
「あんた、こんな所にいるって事はまだ奴隷商館で契約し終わってないんだろ?そのガキこっちによこしな」
「あの子はオークションで僕が買ったんだけど?それを何故あんたに渡さないといけない?」
「そいつをもう一度、別の町でオークションで売り払う為に決まってんだろ?しかしオークションで買ったのにその場で奴隷契約を結ばないバカがいるとは思わなかったぜ」
狐人族の男はそう言って笑うと周りのヤツらも一緒に笑い始めた。
「あんたこの子の親か?」
僕は笑い続ける狐人の男に質問する。
「あ゛ぁ?」
「だから、お前がセシリアの親かって聞いてるんだけど?」
「そうだよ。それがどうかしたか?」
やっぱりこいつが親だったか…。
「なら何故オークションに売り飛ばした?」
「そんなもんそいつの髪を見れば判るだろ?そいつは狐人族では生まれるはずのない銀髪だからだよ。そのガキ生まれた時は俺と同じ金髪だったのに、ある時一瞬で銀髪になったんだ。そんな気味の悪いもんいらねえだろ。渋々育ててはいたが、金がなくなったから売って金にしようとした。最初は商館に売ろうとしたら、思いのほかいい値段になったから売るのを止めてオークションに出す事にしたんだよ。上手くすれば商館に売るより金になるかもしれないからな」
「…分かった。もういいから喋るなよ」
僕はまだ喋りそうな狐人族の男を言葉を遮る形で黙らせ、セシリアの元に近づいた。
「セシリアちょっとゴメンね。『ここに奴隷の契約を結ぶ』」
僕はそう断ってからセシリアの左手の甲に傷を付け自分の血を垂らした。セシリアは僕に触れられていきなり傷を付けられた事でビクっとしたけど、暴れはしなかった。そして手の甲に奴隷契約の証である魔法陣が浮かび上がった。
「これで契約完了だ。もうあんたはセシリアを売る事はおろか、再び手に入れる事すら出来ない。だからもう帰った方がいいよ」
「お前、スキル持ちだったのか!だけど、詰めが甘いな。ここでお前を殺せばそのガキだけじゃなくお前が連れてる奴隷2人も一緒に手に入るんだぜ?」
「あんたらがそういう行動に出る事を分かって、さっきの言葉を言ったんだけど、やっぱり伝わらないか…。僕はお前らごときに負けないからさっさと失せろって言ったんだけど」
僕は遠まわしに言いすぎたなぁとちょっと反省…。
「お前はこの状況が分かってるのか?やっぱりただのバカなのか?まぁいい。おい、殺っちまおうぜ」
狐人族の男の掛け声で他のヤツらも僕に襲い掛かってきた。
が、その行動が最後まで行われることはなかった。
何故なら、ヤツらは全員2~3歩ほど駆け出したところで、滝のように汗を流しながら立ち止まっていた。
「全く…。威圧を受けて動けなくなるほどのザコなんだから。だから言った通りさっさと失せてればよかったのに」
何故ヤツらは動けなくなったかって言うと、僕が全力で威圧のスキルを発動させたのが原因だ。動けなくなったヤツらを1人1人意識を奪ってまとめて糸生成のスキルで作った糸で捕縛した。
「リンとサキはセシリアを連れて先に宿に戻っていて。僕はこいつらをギルドに引き渡してくる。セシリアはこの2人に付いて行けばいいから」
僕は3人に宿に戻っているように言ってこの場を離れた。背後から微かに聞こえてきた声はサキの自己紹介だった。
ギルドまでの道のりは大変だった。何故なら道行く人がみな僕の事を見るからだ。いや、正確には僕が引きずっている20人ほどの男たちだ。人数もさることながらそれを1人で引きずっているのも目を惹く原因の1つだとは分かっている。だけど色々な人に見られ続けるのは精神的に大変だった。連中をギルドに突き出して宿屋の部屋に戻ると、そこには謝り続けるセシリアとオロオロするリンに一生懸命セシリアを落ち着かせようとしているサキがいた。
「この短い間で一体何があったの?」
僕が3人と別行動をとったのは30分ぐらいだったはずなんだけど…。
僕が戻ってきた事でリンがオロオロするのを止めて何故こうなったか説明してくれた。
「ノゾムが戻ってくるまでに、私たちがセシリアとどうやって出会ったのかと、セシリアがここにいる理由を話したらこうなっちゃったのよ…」
それだとセシリアがこうなる原因が分からないんだけど?
「ノゾム君、リンスレットさんの説明に補足なんだけど、リンスレットさんはセシリアさんを幾らで買ったか金額まで話してしまったの…」
なるほど、それはこうなる訳だ。100万で買ったなんて言われたら、セシリアなら『自分の事で100万も使わせてごめんなさい』って思うだろうな…。
「状況は分かったよ。とりあえずセシリアと話してみるよ」
僕はセシリアに近づき、セシリアの目の高さに合せて座り話しかける。
「ただいま、セシリア。話は聞いたけど、謝るのを止めて僕の話を聞いてくれる?」
「ひっく、っく…」
話しかけると、一応謝るのは止めてくれた。
「セシリアは謝る必要ないんだよ?だってセシリアは謝る事をしてないでしょ?」
セシリアは謝らなくていいと言われて困惑し始めた。
「僕がセシリアを買ったのはセシリアが僕たちには必要だった買ったんだし」
「ひ…つよ…う?」
「そうセシリアを必要としているよ」
「私…必、要?ここに…いても、い…いです…か?」
セシリアが何か心に溜めていたモノを吐き出すかのように聞いてくる。だから僕はそれに答える。
「いいよ。セシリアはここにいていいよ。だから…」
僕はセシリアを抱きしめこう言った。
「これからよろしくね。セシリア」
「う、うぅ…うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん……」
セシリアは僕に抱きしめられたまま感情の赴くままにひたすらと泣き続けたのだった。それを見たリンをサキもセシリアを抱きしめるとセシリアはよりいっそう泣き出すのだった。
その日のセシリアは僕たち3人の服を離さないまま泣き疲れて寝てしまったので、4人で床で寝ることになったのはいい思い出になった。
ありがとうございました。