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ダンジョン挑戦その3




 ダンジョンの転移水晶で入り口まで戻ってきた僕たちは、疲れた体に鞭を打ってギルドで素材を売る事にした。そしてギルドに着いたのは日も完全に落ちた頃だった。


 「こんばんは。本日の御用は何でしょうか?」


 「ダンジョンから戻ってきたので、魔物の素材を売りたいのですが…」


 「分かりました。こちらでも大丈夫ですので、ギルドカードと素材を出してもらっていいですか?」


 僕たちは言われた通り今日倒した魔物全てを出した。


 「えっと、ちょっと待ってくださいね。私1人だと時間が掛かってしまうので、他の職員にも手伝ってもらいますので…」


 受付のお姉さんがそう言うのも無理は無い。僕たちが出したのは素材じゃなく、魔物そのものなのだから。ダンジョン攻略の為に魔石を取り出す以外の素材は剥ぎ取らずにそのまま収納して時間短縮していたのだ。


 「ノゾムさん、お待たせしました。魔物そのものの持ち込みだったので、なので金額を多少引かせてもらいました」


 待つこと10分ほどで買取の金額が出たらしい。


 「今回の合計金額は5万ギルです。それにしてもこれだけの魔物何日ががりで倒したのですか?」


 「半日掛かってないですが?」


 「うそっ? 半日? ノゾムさんはCランクですよね? しかも3人だけで!?」


 「え? 何かおかしい事でも? 新しいダンジョンって中級ですよね? それなら、そこまで驚く事ではないのでは?」


 「それってグザリアの迷宮の事ですか?」


 「多分それです。名称はさておき、どうなんです?」


 「いえいえ、普通ではないですよ。確かにCランクでも、何日か掛ければこの量を狩る事も出来ますが、半日では到底無理ですよ。参考までに聞きますが、どんな風にすれば半日で、この量の魔物を倒せるんですか?」


 「普通に倒して歩いていただけですよ?」


 「?」


 おや? 理解してもらえないぞ?


 「ですから、探索して魔物と出会い、魔物を倒して魔石を取り出して探索を再開の繰り返しですが?」


 「………あの、休憩はとらないのですか?」


 「?…休憩は階層を降りたときにとってましたが?」


 「なるほど、理由が分かりました。ノゾムさんは普通の冒険者が取る、戦闘後の休憩を取らないから半日足らずであれだけの魔物を倒せるんですよ」


 「え? あの程度の魔物で休憩を取る必要が?」


 「…ご主人様だけですよ。そんな事言えるのは」とリンスレット。


 「…確かにそうですね。ノゾム様だけですよね」とサキ


 あれ? おかしいのは僕の方らしい?


 「…もしかして、今日の探索辛かった?」


 「………」


 「………」


 ちょっと2人とも何とか言ってよ。それにリンはステータス的には全く問題なかったじゃん。





 そんなこんなのギルドでのやりとりを強制的に終わらせて、僕たちは宿屋に帰ってきた。


 「それで、2人ともギルドでは何で『ご主人様』なの?」


 「だって、私たちは奴隷なのよ?」


 「あたしたちのせいでノゾム君が酷い目にあうのは嫌だから、外ではああしようってリンスレットさんと決めてたの」


 なるほど、ちゃんと理由があったのか。あの場ではビックリしたのを我慢したけど、内心では何の嫌がらせかと思ったよ。


 「そう言う事を決めていたなら、僕は何も言わないよ。それよりダンジョンで言ってた、ステータスの確認をしようか」



 【名 前】 リンスレット

 【年 齢】 17歳

 【種 族】 ヴァンパイア

 【職 業】 魔術師

 【レベル】 12

 【H P】 5234/5234

 【M P】 432/16324

 【筋 力】 5327

 【防御力】 4536

 【素早さ】 4672

 【命 中】 5021

 【賢 さ】 7392

 【 運 】 31


 【スキル】

 火魔法LV8 水魔法LV7 風魔法LV7 土魔法LV6 闇魔法LV9 無魔法LV9 詠唱破棄 偽装


 【固有スキル】

 ヴァンパイア


 【ユニークスキル】

 魔眼


 【所有者】

 ノゾム・サエキ



 【名 前】 サキ

 【年 齢】 15

 【種 族】 魔族

 【職 業】 剣士

 【レベル】 18

 【H P】 351/843

 【M P】 3021/3021

 【筋 力】 1002

 【防御力】 408

 【素早さ】 1092

 【命 中】 1210

 【賢 さ】 602

 【 運 】 25


 【スキル】

 剣術LV4 居合いLV1 縮地LV3 見切りLV2 体術LV1 直感LV1 


 【所有者】

 ノゾム・サエキ



 2人ともしっかりレベル上がってるようで安心した。それにしても…


 「リンのステータス上昇率は恐ろしいな」


 「え? リンスレットさんのステータスって、上昇率もおかしいの?」


 「サキさん? 『も』って何ですか?」


 「それは、あのステータスを見れば、誰だってそう言うのは当たり前ですよ?」


 まぁ、そう思うのが普通の感性だろうな。そう思う僕はだいぶ感性が麻痺してるんだろうなぁ。


 「…サキさんは新しいスキルを習得していますね」


 リンは話題を変える為にサキのスキルについて触れた。


 「居合いですね。多分、ボス戦の最後に放った攻撃がそうだと思います」


 「あれですか。かなり強力な攻撃でしたね」


 「あれはLV1だし、そこまで強力ではないと思うよ? あれは結構ダメージを与えていたからお陰でもあるんと思うよ?」


 僕はスキルの詳細が分かるのでリンの勘違いを正しておく事にした。

 ちなみに居合いスキルの詳細はこうなっている。


 【居合い】

 ・刀を納刀状態からの抜刀速度を利用した神速の一撃を放つスキル

 ・スキルの攻撃力はスキルLVX術者の筋力値

 ・ただしLV1の時だけスキルの攻撃力は1,5X術者の筋力値になる

 


 確かに強力ではあるけど、まだLV1ではそこまで強くないはず。


 「確かに説明を聞く限りではLV1ではそこまでじゃないわね」


 「それは2人のステータスに比べたら強力ではないけど…。普通なら奥の手になりますよ?」


 そんなサキのツッコミを聞きながらお互いのステータス確認をして、翌日の予定を決めて今日は休む事にした。







 翌日、僕たちはそれぞれ休息日にする事にした。

 リンとサキはターニンの町を散策すると言っていた。僕はグザリアの迷宮へ1人で潜ることにした。理由は昨日は何もしていないから。だから今日のうちに昨日手に入れたスキルの使い方を覚えるのとレベル上げをしようと思ったのだ。


 「流石に6層に行くのは止めて、1層から5層までにしておくか」


 そんなこんなで、1日かけて5層のサンドゴーレムまで倒してきた。途中でかまいたちのスキルを持ってきた魔物と遭遇したので、しっかりスキルを回収しておいた。レベルは2上がっていた。スキルの使い方も使いこなすレベルまではいかないけど、多少は使い慣れたと思う。

 その日の戦果をギルドで清算する時は受付のお姉さんはかなりビックリしていた。まぁ昨日は3人だったけど、今日は1人だからしょうがないか…。そうそう、魔物を無理やりアイテムボックスに入れていたら、無魔法のレベルが少し上がって容量が増えたのは嬉しい誤算だった。

 そう言えば、サンドゴーレムを倒したって言ったら、受付のお姉さんがグザリアの迷宮は6層から広くなるから地図作成のスキルが必要になるって言ってたっけ? まぁ何とかなるでしょ。





 休息日の翌日、僕たちは再びグザリアの迷宮への探索を再開した。


 「じゃあ、転移水晶で6層から始めよう。2人ともいい?」


 「いいわよ」


 「あたしもいいよ」


 2人とも昨日1日で疲れはとれたらしく、とても元気だった。この分なら今回も2人だけで何とかなりそうだ。そうして僕たちは6層に転移した。


 「6層は2層と同じ森林かぁ。…密林? ……いやそれも違…う?」


 「ノゾム? 何を1人でぶつぶつ言ってるのよ? 先行くわよ?」


 僕は6層のステージ自体に疑問を感じていたげど、リンは特に気にも留めずに先に進んでしまった。サキも何かを感じていたらしいけど、気のせいと判断したらしくリンの後を追いかけていった。僕も2人を見失うわけにはいかないので、疑問は一旦放置して2人を追いかける事にした。


 この階層は草木や樹木が多い茂っているので、生息する魔物も2層と同じ昆虫系がメインだと思ったら、出てくる魔物は肉食動物系の方が多かった。例えば体術を使うカンフーベアや魔法を接近戦に利用するマジックタイガーなど、癖のある魔物が増えてきた。まぁそれらもレベルの上がったサキの敵ではなかった。ちなみに、この階層は障害物が多いのでリンは魔法の使用を控えている。


 6層の探索を始めて3時間ほど経った辺りから僕たちは違和感を覚え始めていた。


 「そろそろ下に降りる階段が見つかってもいい頃じゃないかしら?」


 「う~ん、いくら階層が広くなったって言ったって、3時間も探して見つからないってどれだけ広くなってるんだ?」


 「魔物はそこまで強く感じないのが救いだね」


 それにしてもさっき忘れる事にした違和感が気になる…。あれは何だったんだろう?


 「とりあえずもう少し探索してみましょう?」


 「そうですね。ここで悩んでいてもしょうがないですし」


 




 探索を再開して2時間がさらに経過した。ここまでくると全員が階層の広さよりこの階層自体がおかしいと思い始めた。


 「もしかして私たち迷子になった?」


 「いや、迷子以上に不味いかも…」


 「ノゾム君?」


 「これを見てほしい」


 僕は2人に1つの樹を見てもらった。


 「この樹がどうしたの?」


 「ノゾム、この樹に巻きついてある糸は何?」


 リンは僕が樹に仕掛けた糸に気付いた。


 「それは2時間ほど前に僕が巻きつけた糸だよ。多分ここは樹海なんだ。何も準備もしないで挑めば方向感覚がなくなり、同じ場所をぐるぐると回る事になるんだと思う。地図作成のスキルが必要ってこう言う意味だったのか…」


 「けど、ノゾム君の糸を使えば何とかなるんじゃ?」


 「悪いけど、スキルのレベルが低くて距離が開きすぎると糸は消えちゃうんだ」


 「なら、この樹海を破壊しながら進めばいいんじゃないかしら?」


 サキの案を僕が無理と伝えるとリンが物騒な案を出してきた。


 「それは流石に無理があるよ。魔物だけじゃなく冒険者まで呼び寄せちゃうよ。その中には同業者狩りしているヤツもいるかもしれないんだよ?」


 「むぅ~」


 リンは納得のいかない顔をしていたけど、無視する事にした。そしてどうにか下の階層か転移水晶の場所を見つけれないか探索を再開した。











 あれから2日ほど経過したけど、一向に見つからない。あれから糸を巻きつけた樹にすら戻れなくなっていた。この樹海と言うより、ダンジョンを甘く見ていた。

 ここは中級ダンジョンだ。普通の冒険者パーティーなら初級ダンジョンでダンジョン攻略に必要な経験を積んでから中級に来るだろうから、ダンジョン攻略にどんなスキルが必要なのか経験から学んでいるはず。だけど僕たちはその経験なしでここに挑んでしまったから、今かなりヤバイ状況になっている。

 ただし肉体的には問題ない。食料は魔物の肉を現地調達出来るし、夜は交代で寝ているから。だけど、出口の見つからない現状は精神的にじわじわとくる。


 そんな現状に変化が起きたのは2日目のお昼ぐらいだった。


 「誰かこっちに向かってくる!? …これは人間だ!」


 「「!?」」


 僕の気配察知に反応が出たのだ。その反応は一直線にこちらを目指して進んでいる。僕は2人に戦闘態勢をとらせ、謎の人物との接触に備えた。










 「いたいた。キミったら何でそんなに警戒しているのさ?」 


 樹海の奥から現れたのは、蒼い髪のお姉さん。そのお姉さんを見た僕はビックリして警戒を解いてしまった。

 だって、そのお姉さんは、僕がターニンの町に着いた初日に。町の路地で出会った占い師のお姉さんだったのだから。



ありがとうございました。


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