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港町ターニン

ダンジョンの説明で指摘がありましたので、訂正しました。




 サキと出会ってから3日が経って僕たちはようやく最初の旅の終着点である港町ターニンに到着した。

 


 「大きいな町だね。港町って言うイメージからもっと小さいのかと思ったよ。これは町っていうより街って言った方がいいかも」


 「それよりも変な匂いもするわ。これって、なんの匂い?」


 「リンスレットさん。これは海の匂いですよ」


 リンは海の近くに来たのは初めてなので潮の香りも知らないようだ。一方でサキは大陸に渡って来ただけあって、潮の香りについては知っていた。


 「さて、それじゃあまずは宿の確保だけど、リンとサキに任せてもいい?」


 「私はいいけど、ノゾムは?」


 「あたしも問題なしだけど?」


 「僕はギルドでダンジョンの情報収集をしようかなって、それと、奴隷商館の事も聞こうかな」


 僕がそう言うと2人の視線が鋭いものになった。


 「だ、だってしょうがないじゃん? ギルドに2人みたいな美少女をお供にギルドへ連れて行ったら、絶対に余計な因縁つけられるから! それに、そんな状態でさらに奴隷商館の話を出そうものなら、僕この町で夜歩けなくなるよ!」


 僕が1人で行動する理由を話すと何とか2人の視線がマシになった。


 「けどノゾム君的には、襲ってきた相手を返り討ちにして、スキルを奪えばいいだけだから、そっちの方が都合がいいんじゃない?」


 「サキはなんて事言うの!? そんな事したらこの町にいられなくなるよ!」


 サキには僕とリンのヴァンパイア種の事やスキルなど人には話せない事もちゃんと話した。そのあとで命令を使って他言無用にしたけど…。命令内容は『僕とリンとサキの情報は僕の許可なく第三者に話さない』だ。これはサキを信用していないんじゃなく、何らかの手段でサキから情報を抜き取ろうとしたときの為の保険のつもりだ。もちろんリンにも同じ命令をしてある。それに2人もこの件に関しては了承してくれている。


 「と、とりあえずそういう訳。着いた初日ぐらいは穏便に過ごしたいから、ギルドには1人で行ってくるよ。だから、宿の確保はお願いね」


 「「は~い」」


 「じゃあ、集合は町の中央広場にしようか。時間は…4時ぐらいで」


 集合場所と時間を決めて僕たちはターニンの町で別行動を開始した。あの二人なら並みの冒険者が絡んできても返り討ちに出来るから心配はいらない。むしろリンがやり過ぎないか心配なぐらいだ。とりあえず、何も起こらない事を祈りますか。




 2人と別れて僕は1人でギルドに来ていた。中に入ると王都のギルド並みに賑わっていた。ギルドの造りはどの町も同じようで、酒場っぽいスペースが絶対にある。そこには酒を飲む人やパーティーメンバーと打ち合わせをしている人など活用法は人それぞれのようだ。

 僕はダンジョンの情報を仕入れる為に空いている受付に並んだ。順番は空いているせいもあって、割りとすぐ回ってきた。


 「いらっしゃいませ。見ない顔ですが、どのようなご用件でしょうか?」


 「こんにちは。この町にはつい先ほど到着したんです。この辺りにダンジョンはないかなと思って聞きにきたんです」


 「その様子だとこの町の事を何も調べないで来たようですね?」


 「特に目的も決めない旅をしていたものですから、町については着いてからの楽しみにしていたんですよ」


 受付のお姉さんは納得してくれたようで、ダンジョンについて説明してくれた。


 「このターニンの町は港町と言う事よりも、ダンジョンの町としての方が有名なんです。初心者から上級者用のダンジョンが揃っているので、自分の実力に合わせたダンジョンに挑む事が出来るのです」


 「それで王都のギルド並みに賑わっているんですね」


 「そうですね。あとは最近、中級者向けのダンジョンが新たに発見された事も、この賑わいのお手伝いをしていると思いますよ」


 「新しくダンジョンが発見されたんですか?」


 お姉さんの話だと稀にあることのようだ。

 そもそもダンジョンとは生き物だと言われている。稀に出現しては稀に消滅するそうだ。消滅の時に中に人がいた場合は強制的に排出されるらしい。

 そんなダンジョンだけど、ダンジョンごとに深さが違う。最下層が浅いダンジョンは出てくる魔物も弱く手に入るお宝もレア度の低いものばかりだ。最下層が深くなればそれだけ出てくる魔物もアイテムも比例して高くなる。ちなみに最下層が0~20層までか初心者、21~50層までが中級者、51以降は上級者のダンジョンと目安がある。大体は1層の魔物の強さでそのダンジョンがどれに該当するか判るそうだ。

 今回発見されたダンジョンは、1層の魔物がゴブリンやウルフといった最弱クラスの魔物ではないらしく、中級者用と判断されたらしい。今はどこまで探索が進んでいるか聞いてみると、まだ10層らしい。本当に最近発見されたばかりのようだ。

 ダンジョンに関しての情報はこれぐらいだった。


 次は奴隷商館に向かう事に。そうそう、危うく忘れるところだったけど、カードスの依頼である魔族を目撃した事の報告をしておいた。



 「いらっしゃいませ。ワタクシはこの商館の仕切りをさせていただいております、ミーテルと申します。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 ギルドで商館の場所を聞き訪れた僕を出迎えたのは店長のミーテルって男だった。


 「ども、初めまして。実は奴隷を購入しようか考えていまして、今日はどのような奴隷がいるのか参考にする為に、奴隷を見せてもらえないかと思って来たのですが…」


 「そうでしたか。それでしたら時期が良かったと言うべきか悪かったと言うべきか…」


 「それはどうしてでしょうか?」


 「おっと、ハッキリしない表現をしたせいで、お客様を不安にさせてしまい申し訳ございません。お客様は最近この町に来たのですね? このターニンではこの時期に奴隷オークションがありまして、どの商館もオークション用の奴隷確保に忙しいのです」


 「つまり、店に訪れても目玉の奴隷は紹介すらさせてもらえないって事ですか?」


 「まことに申し訳ない話ではありますが、そのようにとっていただいて構いません。こちらも商売が掛かっていますので」


 なるほど、オークションで注目を浴びる奴隷を出品出来れば、『○○を仕入れた店』って箔が付いて今後の客足に繋がるのか。その為にはこの時期に目玉になりうる可能性のある奴隷を店で売るのは、バカのすることってか。


 「理由は判りました。が、それを僕に話してもよかったのでしょうか? 普通は黙っていれば分からないと思うのですが?」


 「仰る事はもっともですが、それはワタクシの主義に反しますので。騙すように商売をしていけば、お客様もそう言った裏の人たちしか来なくなります。因果応報と言いますか、類は友を呼ぶと言いますか…。そうすれば裏取引などをさせられたりして、二度と真っ当な商売は出来なくなるでしょう。しかもワタクシたちが扱うのは奴隷です。ただでさえ違法な取引がされやすいのです。ですので、ワタクシは正直に商売しようと考えているのです」


 「素晴らしい考えですね」


 「ありがとうございます。ちなみにオークションは1週間後でございます」


 「1週間後ですか。それじゃあそれまで資金を稼いでいますね。それでは今日は失礼します」





 僕は奴隷商館を出ると広場に向かった。途中で何故か1つの小さな路地で足を止めてしまった。


 「なんだろう? 何かあるわけでも広場への近道って訳でもなさそうなんだけど…」


 なんの変哲もない路地なのにそっちに行った方がいいと、訴えかけられている感じがする。これは直感のスキ…ル?

 僕は感覚に従って路地に入っていく事にした。路地に入って5分ほど歩いた所に1人の占い師がいた。何故占い師と思ったかって言うと、一人用の机に誰も座っていない椅子その対面に座る黒のローブを着た蒼い髪のお姉さん、そして極め付けが机には水晶が置いてある。これで占い師ではければこの人は何だろう?って思うほどだ。


 「そこ行くキミ。こんな路地に入ってくるなんてどうしたんだい?」


 「…特にこれって訳はないんですが、なんとなく足が向いたので」


 お姉さんはここに用もなく人が来るのが珍しいのか、僕の答えに興味を示したようだ。


 「ここで会ったのも何かの縁だし特別にお姉さんが占ってあげるよ」


 「ちなみにどんな占いですか?」


 「私が占うのは単純に未来だよ。ただしその未来がいつ訪れるかは分からない、もしかしたら訪れないかもしれない」


 「それって未来と言えるのですか?」


 なんとなく詐欺っぽく聞こえてきたので質問してしまった。


 「未来の占いって言っても、私が視えるのは数ある未来の1つであって確定の未来じゃないのよ。例えば魔物に殺される未来が視えたって言われて、この先一生町から出なければ、魔物に殺される事はなくなるかもしれない。未来ってそういうモノなの」


 なるほど未来は無限にあるって事か。結局のところ言われた未来を信じて何もしないのも、言われた未来に向かって頑張るのも、変える為に頑張るのもその人次第って事か。


 「あなた面白いわね。普通は今の説明をされたって、そんな考えは中々出来ないわよ? 人は導いてくれる存在がいれば、それに依存しやすい生き物なの。その方が楽だし、間違った時はその存在のせいに出来るからね」


 「もしかして声に出てました?」


 「しっかり出ていたわ」


 うわっ! 恥ずかしい! もしかしてリンたちが僕の考えを読んだと思った時も声に出ていたのかな?そうならこれからは気を付けないと。


 「それでどうする? 占う? 今なら無料だよ?」


 「それなら記念にお願いします」


 「分かったわ。う~ん…」


 お姉さんは水晶に手をかざすとうんうんと、唸りだした。そして1分ほどしてかざしていた手を引っ込めた。


 「視えたわよ。もったいぶるのもなんだから、サクッと結果を伝えるわね。キミと4人の女の子でどこかお城に行くみたいだったわ。誰かを助けに行くようだったわ。誰かまでは分からなかったけど、あなたの恩人? みたいな人らしいわ」


 恩人って誰だろう? それに女の子4人って誰だろう? 今、僕と共に行動しているのは、リンとサキだけだけど、あと2人か…。


 「…恩人も女の子にも心当たりがないのですが、一応心に留めておきます」


 「そうしておきなさい。占いを気にしすぎて、人生狂った人も沢山いるわ。キミはそうならないようにね」


 「分かりました。それでは人と待ち合わせしているのでそろそろ行きますね」


 「またどこかで会いましょうね」


 そろそろいい時間なので、お姉さんに別れを告げた。お姉さんは見る人を惹きつける笑みを浮かべながら僕に手を振ってくれた。僕は手を振り返して、来た道を戻り広場へと急いだ。




ありがとうございました。


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