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SSランクの冒険者たち

 「だから、SSランクの残りは、バカ脳筋バカ変人バカなんですよ」


 間抜けな声を出した僕に対し、フリーシアさんは再度、バカを3連発する。


 「…えっと、バカだけじゃ、どんな人なのか判らないんですが…」


 「ノゾムさんは、SSランクの冒険者の事、知らないんですか?」


 …そう言えば、不思議なくらい耳に入ってこなかったな。

 SSランクって言えば、普通に考えれば冒険者の憧れと言ってもおかしくないはずなんだけどな?


 「恥ずかしい事に、何一つ情報を持っていませんね」


 「まぁ、自分で調べない限り、情報が出てこないのがSSランクの特徴でもありますしね」


 「それって、ギルドが情報を規制しているからですか?」


 調べようと情報が出てこないと言われて、いの一番に思いつくのは、ギルドによる情報規制だ。

 SSランクの冒険者に関する情報を第三者に伝えたら罰則があるとか、兎に角、情報が漏れないようにしているのだと思い、フリーシアさんに訊いてみたら、笑いながら否定された。


 「違いますよ。理由は、みんなが自主的に口を閉ざすんですよ。そのせいで、私たち(SSランク)の事って噂話にも滅多に上がらないんですよ。

 まぁ、私たちも自分がSSランクだって言わないのも噂に上がらない理由の一つだと思いますけどね」


 「ちなみにですが、何で自主的に口を閉ざすんですか?」


 「それについては誠に不本意なんですが、私たちSSランクが世間一般で人外と呼ばれているせいですね」


 「…?」


 「その反応は分かってませんね? つまり、バケモノ認定されている私たちの不興を買わないようにしているんです」


 「…あぁ」


 フリーシアさんが語る、SSランク冒険者の情報が出回らない理由を聞いて納得してしまった。


 「そんな訳です。それで、ノゾムさんの質問に戻りますが、残りの3人は突進バカと脳筋バカと錬金バカです」


 「もう少し詳しくお願いします。せめて、名前と性別、あとは種族ぐらいは…」


 なぜか残りの3人の事になると辛辣なコメントになるフリーシアさんに、追加の説明を求める。


 「…分かりました。まず、突進バカこと、ゼルフ。男性で種族は熊人。何でもかんでも突撃していく様は熊ではなく猪だと言われています。

 次に、脳筋バカとこ、ヴォルツ。こちらも男性です。種族はドワーフ。戦闘は全てを筋肉で解決してきた生粋の脳筋です。

 最後に、錬金バカこと、ユティシア。3バカ唯一の女性です。種族はエルフ。基本的に自然と共に生きる種族であるエルフなのに、錬金術に魅入られた変わり者です」


 獣人にドワーフにエルフか。聞いた感じじゃ、癖のありそうな3人だな。


 「一応の確認ですが、SSランク内の実力差って、あるんですか?」


 「私が見た感じですと、ノゾムさん以外はほぼ同じ戦闘能力です」


 「僕以外って…」


 「北の島で、少しだけノゾムさんの実力を見させてもらいましたが、私たちよりも頭一つ二つは飛び抜けた実力を持っています。多分ですが、私たち5人が束になっても、ノゾムさんには勝てないと思います」


 フリーシアさんの言っているのは多分、暴食の闇(ブラックホール)を使ったことだろう。

 けど、あれをぬきにしたら、あの騒動でかなりレベルアップしたとはいえ、フリーシアさんクラスを5人同時に相手にするのはちょっと大変そうなんだよなぁ…。


 そんな事を考えていると、どこかの部屋から話し声が聞こえてきた。


 「だか…、………と突っ込んじゃ…ば……じゃねえか!」


 「…ハァ~~~」


 その声を耳にした瞬間、フリーシアさんが深い深いため息をついた。


 「どうしたんですか?」


 さすがに今のため息を聞かなかった事には出来なかったので、本人に訊いてみた。


 「…いえ、相変わらず聞くに堪えない声だと思いまして」


 「もしかして、今の声の主って…」


 「ノゾムさんの考え通りです。今の声は猪の声です」


 フリーシアさんが辛辣な物言いになったので、3人の誰かだと思ったが予想通りだった。


 猪って事は、ゼルフ? だったっけ?


 「ちなみに、バカらがいる部屋は、マスターの部屋です。ここから5つほど先の部屋です」


 そんな先の部屋から声が聞こえるって…。どんだけ、大声なんだよ?


 「とりあえず、さっさと耳障りな声を黙らせに行きましょう」


 「…あ、はい」


 僕は、不機嫌な彼女に逆らえず、ただただ後を追うことしか出来なかった。











 「相変わらず、五月蠅いんですよ! 部屋の外にまで響いてますよ! 何度言えば判るんですか、この猪!!」


 フリーシアさんはノックもせず、会議室? の扉を開け放ったと思ったら、いきなり怒鳴りつけた。


 「猪じゃねぇ!! てめぇだって、俺は熊だと何度言えば判んだよ、この色物が!!」


 「その呼び方で、私を呼ぶなぁぁぁぁ!!」


 フリーシアさんの言葉に反応したのは、がっしりとしたがたいの大男だった。

 身長は2mぐらいで焦げ茶の体毛に頭の上には熊の耳。見た感じだと40代と言った感じかな?


 それにしても、フリーシアさんの事を色物と呼んだけど、何のことだ?

 それに対してフリーシアさんは、殺気全開でゼルフを睨みつける。

 あれは、マジ切れしてますね。彼女の事を色物と呼ぶのは止めよう。理由は判らないけど。


 「フリーシア、落ち着け。猪と言い争うとか、お前さんは猪と同レベルか?」


 「…チッ!」


 「誰が猪だ! この筋肉達磨! 俺は熊だっつってんだろ!!」


 マジ切れしているフリーシアさんを宥めるのは、身長130㎝ほどの筋肉ムキムキのおっさんだった。立派な髭も生やしているので、見たまんまドワーフと判る。彼がヴォルツだろう。

 ってか、フリーシアさん。舌打ち聞こえてますよ。


 「脳筋にたしなめられるなんて、色物も単細胞って事かしら?」


 「エルフ1の嫌われ者に言われたくないわね。変人。それに私の事を色物と呼ぶなと言ってるでしょ? いい加減、そのいつ死んでもおかしくない顔通りに殺してあげましょうか?」


 「出来もしない事を口にしない方がいいわよ? その綺麗がけが取り柄の顔が見れないような醜い顔になったら、嫁の貰い手もなくなるわよ? あっ、ごめんなさい。今でも無かったわね」


 「よし、死にたいのね? 言ってくれれば、しっかりきっちり殺してあげるのに。それで、どんな死に方がお好みかしら?」


 ゼルフとフリーシアさんの言い争いが終わったと思ったら、別方向から聞こえた一言により、再び言い争いへと発展した。ってか、フリーシアさん、さっき以上にマジだ。殺気の圧力で室内の椅子や机がギシギシと軋んでるんだけど…。


 今、フリーシアさんを挑発したのは、目の下にドデカいクマを作っているエルフだった。彼女がユティシアなのだろう。

 ユティシアはエルフ特有の長い耳がなければ、エルフには見えないほど、幸の薄い顔をしている。さらに身嗜みを気にしないのか、髪はボサボサで着ている白衣はヨレヨレだ。ぶっちゃけ、戦闘どころか、運動すら出来なさそう。


 とりあえず、フリーシアさんとユティシアの言い争い? は放置して、部屋の中を見渡すと、セイドリックさんとフローラさんもいる事に気が付く。そんな2人は、目の前での言い争いに対し、我関せずを貫いている。

ひとまず、セイドリックさんに挨拶をする。


 「お久しぶりです、セイドリックさん」


 「話は聞いている。ずいぶんと好き勝手に暴れてきたそうだな?」


 「何を言っているんですか。頼んでいた調査結果が中々出ないので、自分自ら捜査に行っただけですよ。それのおかげで、向こうでの騒動に人数を割かなくて済んだじゃないですか」


 セイドリックさんは、僕がギルドに何も言わずに北の島へと行った件に対して嫌味を言ってきたのに対し、僕は笑顔で自分の行動を正当化する為の言葉で対抗する。


 「……………」


 「……………」


 しばし、無言で見つめ合う僕とセイドリックさん。


 「…相変わらずの狸じゃな」


 「何のことだか判りませんが、褒め言葉として受け取っておきます」


  「よく言うわい。はぁ~、どうしてSSランクはこうも扱いにくいんだ?」


 時間の無駄と判断したらしいセイドリックさんからの捨て台詞を笑顔で受け取る。

 そして、SSランクの冒険者全員が面倒くさい認定された。解せぬ。


 「お前ら! そろそろ話し合いを再開するから、静かにせんか!!」


 鶴の一声。

 セイドリックさんの一喝により、言い争いをしていた2人は勿論、いつの間にか言い争いを始めていたゼルフとヴォルツも即座に黙る。


 そして、僕を含めたSSランクの冒険者全員が席に着いたのを確認してからセイドリックさんが本題を話し始めた。


 「では、先ほどまで話し合っていた王国と帝国の戦争に対し、自由都市はどのような対応をするか決めるぞ」



ありがとうございます。


誤字脱字があれば、教えていただけると助かります。

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