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SSランクからの情報




 「あ~、やっとここまで戻ってこれた。疲れたよ」


 「確かに、ここまで戻ってくるまで大変だったわね」


 「まさか、魔物同士で潰し合っているとは思わなかったよね」


 ようやく、集落へと戻ってきた僕たちは、それぞれ疲れが滲み出る。

 僕たちがこれほど疲れている原因は、サキの言葉通り、魔物同士の潰し合いをしているのが原因だったりする。

 多分、大罪スキルから解放されたからだろう。元々、種族の垣根を越えて協力し合うと言う概念のない魔物だ。味方たらしめていた要因が無くなれば、こうなるのが当たり前だ。

 そんな状況の中、集落まで戻ってくるのに、魔物同士の戦いに巻き込まれないはずがない。下級の魔物なら大した事はないんだけど、上級の魔物の対処は、疲れた体には結構堪えた。


 「みんなは戻って来てるかな?」


 「多分、私たちが一番最後だと思うわよ? それよりも、自分たちの心配をしないとね。みんなから、遅いって怒られと思うわよ?」


 サキの心配にリンがあっけらかんと答える。

 後半の怒られる云々は置いとくとして、僕たちが一番最後ってのは正しいだろう。

 集落から一番遠いし、何より魔人との戦闘に時間がかかった。これで、僕たちよりも遅い組があったら、それはそれで問題だ。


 「ノゾム様!」


 「ご主人様!」


 「主様!」


 「望君!」


 そんな事を考えていたら、集落からセシリア、ルージュ、イリスさん、アイラさんの4人が飛び出てきた。多分、セシリアの索敵スキルで僕たちに気付いたのだろう。


 「ただいま。みんなも無事みたいだね」


 僕の腹に容赦なく飛び込んできたセシリアを受け止め、駆け寄ってきた残り3人の様子を見て一安心する。


 「それはこっちの台詞よ、望君?」


 ボロボロの僕をジト目で睨みつけてくるアイラさん。

 傷とかは、戻ってくる最中に粗方治したんたけど、服や防具はそうもいかなかった。


 「あははは~。まぁ、みんなのおかげで、生き残れましたよ。ありがとうございます」


 アイラさんの睨みを笑うことで誤魔化し、本心からのお礼を口にして、しっかり頭を下げる。


 「…ハァー。お礼を言えたから、この場でのお説教は、勘弁してあげる」


 「…アリガトウゴサイマス」


 お説教は確定なんですね。


 無慈悲なアイラさんの言葉に、僕はがっくりと肩を落とす。


 「そんなことよりも、ご主人様。魔物が急に同士討ちを始めたんだけど、何か知ってますよねぇ?」


 お説教が確定した傷心の僕に対し、ばっさりと切り捨て、今の状況について質問してくるルージュ。


 「あ、あぁ。知ってるも何も、今回の件の黒幕を倒したからね」


 「それじゃあ」


 「うん。多分、獣人たちも今頃は正気に戻っていると思うよ? それとアイラさん」


 「何かしら?」


 「タナトスって神について何か知ってます?」


 「私を含め、直接姿を見たことのある神はいないんじゃないかしら? けど、どうしてそんな事を…。ま、まさか!?」


 僕の質問の意図を汲み取ったアイラさんが顔を強ばらせる。


 「その通りです。魔人の背後にはタナトスって神がいます。このタナトスがエルピトスとどう繋がっているのかは判りません。もしかしたら、繋がっていない可能性もあるし」


 タナトスって神がアイラさんと同じ目的《打倒管理神》で動いている可能性もある。

 だけど、配下の魔人は人類を滅ぼそうとしている。

 例え最終目的が一緒でも、過程でやろうとしている事《人類滅亡》は見逃せない。

 別に正義の味方を気取るわけじゃないけれど、こっちにも死んでほしくない人がいる程度の繋がりはある。


 「…確かに。タナトスに直接問い詰めない限り、敵か味方か判らないわね」


 「アイラさん。それは違うよ」


 「? どういう事?」


 「タナトスの配下である魔人は、人類を滅ぼそうとしている。そんな奴らと味方なんてあり得ない」


 「っ!! ごめんなさい、望君。確かにタナトスは私たちの味方にはなり得ないわ」


 僕の言葉を聞いたアイラさんは、何かに気が付いたのかハッとし、そして頭を下げた。


 「ノゾムさん、お疲れ様でした。って、どうしたんですか?」


 突然話に入ってきたフリーシアさんは、アイラさんが頭を下げているのを見て、困惑する。


 「いやいや、何でもないですよ。それよりも、手助けありがとうございました。それで、今までどこに?」


 「ちょっと海岸の様子を見に行っていたんですよ。向こうは重傷者、死者ともに0でした。もちろん、ノゾムさんの奴隷の方たちも」


 そっか、フェルたちも無事か。


 「わざわざありがとうございます」


 「…そう言えばアナタ、ノゾムに何か用があったんじゃないの?」


 いきなり会話に割って入ってきたリンは、フリーシアさんに話しかける。


 「僕に?」


 そんなリンの口から僕の名前が出てきたのに対し、僕は首を傾げてしまう。


 「そうなんですよ。本当なら、すぐにでも伝えたかったんですが、状況が状況だけに、事態を終息させる方を優先しました」


 「それで、いったい何を伝えたかったんですか?」


 伝えたいと言う案件? を催促する僕。そして、フリーシアさんの口から飛び出した言葉は僕の予想を遥かに越えるものだった。



 「戦争が始まったんですよ」


 「…は?」


 言葉を理解しきれず、呆けた声が漏れた。


 「だから~! 戦争ですよ、戦争。帝国と王国が戦争を始めたんですよ!」


 「始める準備をしているじゃなく?」


 「もう、戦端は開かれているはずです!」


 バカな!? 幾ら何でも早すぎる。各地での魔物の目撃情報が減り始めたのは、ここ1ヶ月ぐらいだ。そこから準備を始めたにしたって、もう戦端が開かれているのはおかしい。準備が完了して出発するならまだ分からなくもないけど。


 「そんな! お父様は、いったい何を考えているんですか!!」


 帝国と王国の戦争と聞いて、ルージュが話に割って入ってきた。


 「お父様?」


 「フリーシアさん。そもそも、王国のシャルトニア・イーベル・14世は何で戦争に踏み切ったんです?」


 ルージュの発言に?マークが浮かんでいるフリーシアさん。そのフリーシアさんの気を反らすために、僕が改めて質問する。


 「あれ? ノゾムさんは知らないんですか? シャルトニア・イーベル・14世前国王は、死去されましたよ?」


 「嘘…」


 まさかの国王の死亡情報にルージュが驚愕の表情になる。


 「いや、初耳ですね。ちなみに、死因は何ですか?」


 驚きのまま固まっているルージュを横目に、気になる死因について訊ねる。


 「詳しくは分かりません。私たちが掴んでいる情報は、新しく国王になったヒトが戦争を推し進めたって事ね。どうやら、新しい国王が戦争に必要な物を全て用意したらしいのよ。そのお陰で、今回の戦争は異例の速さで開戦に至ったらしいわ」


 そう言えば、リンが魔人の彼女から引き出した情報から王国と帝国に魔人が潜入しているとあったな。もしかして、新しい国王が魔人なのか? つまり、今回の戦争も魔人が手引きしている?


 「じゃあ、その新しい国王ってどんな人なのか分かりますか?」


 何気なく口から出たこの一言が、そこまで興味の薄かった王国と帝国の戦争への僕の意識を大きく変える事となった。







 「巷でも有名な事なんでそれぐらいなら分かりますよ。えっと、なんでも一度は異世界に帰ったけど、民の為に戻ってきた勇者。その人が、今の国王ですよ」


 


ありがとうございます。


無事、この章も終わりです。

次回からは戦争編です。

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