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終盤~キマイラVSキメラ~

 -セシリア-


 「はぁ、はぁ…。くぅっ!!」


 私は自身の武器である二本の短刀で迫り来る数多の触手を斬り落としていきます。ただし、この行為自体に意味はありません。何故なら…。


 「また、再生ですか」


 私と相対しているソレは、私が斬り落とした触手を再生させるのだ。既に、2桁以上繰り返した一連の流れに、溜め息が漏れる。





 現在、私ことセシリアがいるのは、島の西にある転移陣の所。

 そこに向かうことになったのは、私とルージュちゃんだった。

 蟲や植物系の魔物の大群を斬り抜けて辿り着いたこの場所には4人の魔族がいた。

 私たちを見た魔族たちがとった行動は、転移先で待機している強力な魔物をこちらに連れてくる、だった。

 そして4人の内、1人がルージュちゃんを任せてくれとか言って、他の3人がそれを了承。私たちは、4人の手によって分断されてしまった。

 だけど、それが残り3人にとっての地獄の始まりでした。


 最初は何の変哲もない魔物だと思って、襲いかかってきたソレを一閃のもとに斬り捨てたのですが、それが間違いでした。

 私が斬ったソレは、周囲にいる蟲や植物系の魔物に触手を伸ばし、捕食し始めました。そしてソレは、捕食した魔物の身体を使い、自分の身体の再生と強化を開始しました。

 そこで私は、ようやくこの魔物の名前を思い出しました。

 この魔物の名前は、パラサイトキメラ。

 何種類もの生物が混在して1つの身体となる普通のキメラとは違い、このパラサイトキメラは、自身で捕食したモノを使い、常に自身を強化していく、と言う厄介極まりない魔物なのです。

 私がこの魔物の正体に気付くのが遅れたのは、基本的にパラサイトキメラは自身の強化をある程度している個体での目撃例しかなかったからだ。


 魔物の正体に気付き、一気に焼き尽くそうと試みましたが、周辺にいる蟲や植物系魔物が多すぎて焼き尽くす前に、自己修復してしまいます。

 焼き尽くそうとする私に対してパラサイトキメラがとった行動こそ、この魔物の一番厄介な点でした。

 パラサイトキメラは自分の後ろに控えている魔族たちをも捕食し始めたのです。

 しまった! と思った時には既に手遅れで、パラサイトキメラは3人の魔族を取り込み終えてしました。そして、燃えている自分の身体に自らの水魔法で消火し始めました。

 パラサイトキメラの一番厄介な特性は、捕食した生物のスキルを使用できるようになる事です。




 そのせいで、炎で焼き尽くす方法は封じられ、今は『触手で攻撃→斬り落とす→再生→触手で攻撃』と、同じ事を繰り返しています。

 相手が、触手以外で攻撃してこないのは、私の体力切れを待っているんだと思います。もしくは、じわじわと獲物を追い詰める事を楽しんでいるのか。徐々に触手の数も増えていますし。


 「くぅっ!!」


 今のは、少し危なかったです。1本だけ斬り落すのが間に合わない触手があったけど、ギリギリ回避をし、距離をとることで難を逃れられました。


 「早く、突破口を見つけ、ないと…」


 時間がないの。既に、()()()()()()()()()()()()()


 つまり、今の攻撃は、5倍となっている私の身体能力をもってしても捌けなかったと言う事。今のパラサイトキメラの力は、中級ドラゴン程度の実力があると思われます。


 私が5本の尾を出しているのに、まだ弄ばれている苛立ちと焦りに、触手を捌く手が雑になってしまった。

 そんな隙を見逃す相手ではない。先ほど、1本だけ捌けなかった数以上の触手による追撃が私に押し寄せてきます。


 「…7本!!」


 5本の身体能力では、到底捌ききれないと判断した私は、尾を7本まで増やす決断をする。

 基礎能力の7倍まで身体能力が跳ね上がったことにより、迫り来る触手を難なく全て斬り落とす。そして、相手が私の身体能力に対応しきる前に終わらせるため、一気に攻勢に転じる。


 が、相手の周囲に何か漂っているのが、太陽の光によってちらちらと見えたので、急ブレーキをかけ止まります。


 「この粉は…? ……っ!? まさか、毒!?」


 粉の正体は判らないので、無闇に突っ込むのは無理そうです。

 せめて、パラサイトキメラがどの魔物を捕食したか判れば、毒かどうかも判るのですが…。

 それにしても、本当にどうしよう。残り時間も気にしないといけないのに、接近戦も封じられた。この状況で使える手札も、今使うには状況的に厳しい。せめてパラサイトキメラの捕食対象をどうにかしないと…。







 「セシリアさ~ん!! 周囲のつゆ払いは私たちに任せて~! セシリアさんは、その気持ち悪いヤツを殺っちゃって~!」


 本格的に手詰まりだと思ったその時、突然第三者の声が聞こえてきた。

 声の聞こえてきた方へ振り向くと、ボロボロになりながらも、元気に鎌を振るうルージュちゃんの姿があった。


 「これなら…いける! 9本!!」


 ルージュちゃんと言う、予想外の援軍のおかげで、パラサイトキメラの餌となる魔物がみるみる減っていくのを見て、私は切り札をきる。

 私は、自身にかけている幻術を一度解き、尾を9本解放した時にしか使えない幻術を新たに自分にかける。


 「他者の力を、取り込むのが、自分だけの専売特許だと…思わないで、下さい!!」


 幻術を解いたことにより、銀色になった体毛の尾の先、1本1本に火を灯らせていく。9本の尾全てに火を灯した私は、()()()()()()姿をしっかりとイメージする。これからする事は、イメージが全てだから。


 「幻術『幻叡生装(キマイラ)』!!」


 練り上げたイメージを幻術で形にするために、尾に灯った炎が私を包み込む。

 パラサイトキメラはその光景を見て、危険と判断したのか触手による一斉攻撃を繰り出してきた。しかし、ただの触手に突破できるほど軟な炎ではない。一応は私の幻術で生み出した炎で、かなりの力を込めている。じゃないと、イメージ通り()()()()()()から。


 そして、私を覆っていた炎が消え、変身を終えた私の姿が顕わになる。


 幻術『幻叡生装(キマイラ)

 スキル『九尾解放』によって尾を9本出した時にのみ使える幻術。

 自身のイメージを実体で創る幻術である『幻実』で創った肉体を鎧のように身に纏う術です。


 現在私が幻叡生装で纏っている肉体とは…


 「わわっ! セシリアさんの尾がドラゴンになっちゃいました!!?」


 炎が立ち上った辺りからこちらの様子を窺っていたルージュちゃんが驚きの声を上げる。

 ルージュちゃんの言葉通り、私の9本の尾がドラゴンの首となっている。さらに、私の額には20㎝ほどの角が1本生えています。背中にはドラゴンの羽もある為、その気になれば空も飛べます。


 尾はヒュドラ。そのヒュドラから放たれる高火力ブレス。背中の翼による機動力。そして、額の角は幻獣と言われる魔物、ライジュウの角。この角から発生する雷による広範囲攻撃。それらの魔物の肉体を合わせたのが。幻叡生装(キマイラ)の形の内の1つ。名付けて、遠距離型殲滅モード。


ちなみに、この幻叡生装(キマイラ)で完全に魔物の肉体を再現するには条件が存在する。

 それは、魔物を体内に取り入れる事。これを行う事によって、魔物の肉体をただ再現するだけではなく、魔物の全てを再現する事が可能になる。





 「これで終わり…です!!」


 ゴバアアアアアアアアアア!!


 九つの口から吐かれる色とりどりのブレスを1つに纏めた極太ブレスにて、この戦いに終止符を打ちます!


 パラサイトキメラを欠片も残さないように放ったブレスは、文字通り、パラサイトキメラを消滅させました。


 「もう、限…界」


 ルージュちゃんが助けに来るまで、これを使わなかったのは、相手の捕食による再生も1つの理由ですが、もう2つ理由があります。

 1つ目は魔力消費量がバカにならないと言う点です。

 ただでさえ、変身するだけでもかなりの魔力を消費するのに、変身後のブレスや落雷、飛翔など、全て魔力を消費しないと運用できないのです。

 2つ目は、九尾解放のデメリットです。

 幻叡生装尾(キマイラ)は、九尾解放を完全開放しないと使えない幻術です。尾を9本にすると言う事は、戦闘出来る時間が約15分程度しかなくなると言うリスクもあるのです。

 この2点の理由により、もしも討ち漏らしが出た場合、私だけだと殺される確率が高かった為、使えませんでした。


 まぁ、そんな事はさておき、残りの魔物や転移陣の処理は、ルージュちゃんに任せて、私は少し休む事にします。



ありがとうございました。

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