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終盤~スキル~




-ルージュ-


 「早速だが、終わりだ!」


 いきなり私に向けて無数の魔法がほぼ(・・)同時に放たれる。


 私の相手(獲物)の魔族の男は、もう自分の勝利を確信したみたい?

 け ど 、甘ぁいです。私を殺りたいならぁ、最低でも範囲系の魔法で逃げ道を完全に潰さないと♪ ただの数による弾幕じゃ、私は殺れないよぉ?


 私は内心で思った事を実証するべく、回避行動に邪魔になる鎌をアイテムボックスへとしまい、迫り来る魔法を回避し続ける。

 体捌きを基本軸に、どうしても体捌きだけでは無理な場合は、魔法で相殺し道を作る。


 「なにっ!!」


 私が魔法を回避しきると、魔族の男は驚愕する。


 「何を驚いているんですかぁ? いくら何でも~、舐めすぎです」


 こう見えても、回避スキル持ちです。ご主人様の攻撃に比べたら、魔法の弾幕攻撃なんて屁でもないです!




 今、私はセシリアさんと一緒に西にある転移陣の元へと到着し、そこにいた魔族の男と戦闘をしている。

 セシリアさんは魔族のみなさんが、対私たち用にわざわざ転移陣の向こうから連れてきた魔物と魔族3人を相手にしています。

 ヴェーラーとソリューには周囲で蠢いている蟲や植物たちの相手をお願いしています。フェリルは相性の問題で今はお休みです。ホールはもしもの時の為の予備戦力です。




 ここに来るまでの蟲や植物系の魔物を倒したおかげで、ご主人様たちと別れた時よりもレベルが上がったのは有り難かったです。じゃなきゃ、さっきの魔法弾幕はある程度のダメージを覚悟しなきゃいけなかったのです。


 「次はこっちの番なのです♪」


 私はアイテムボックスから鎌を取り出し、接近を試みる。

 私の魔法スキルでは、魔族相手に遠距離戦だと不利ですからね。勝機を見出すためにも、接近戦に持ち込む必要があるのです。


 「そのスピードで、接近戦に持ち込もうなんて、バカじゃないのか? 今度こそ蜂の巣にしてやる! 『ガトリングフレア』!!」


 魔族は私の接近速度を鼻で嗤うと、先ほどの魔法弾幕で私の接近を阻害しに出る。


 火魔法のガトリングフレア。

 この魔法は、ファイアボールを連続発射し続ける魔法で、連射速度と持続時間は使い手の魔力と練度によって変わってくるらしいです。


 さっきのと今のを見る限り、この魔族はかなりの練度だと思いますが、さっきも言った通り、弾幕攻撃で私を殺ろうなんて考えは、甘いんですよぉ♪


 今度は鎌をしまうことも、魔法による相殺もせず、接近速度も維持したまま、ガトリングフレアの弾幕の壁へと突っ込む。

 私にはとある理由から、『魔法が被弾するかもしれない』と言う恐怖は沸いてこない。

 恐怖心がないので、目の前まで迫ってきている火球にも目を瞑ることもなく、冷静にどの方向に避ければいいのか、先を見て考える余裕すらある。



 「ば、バカな。動きから推測するに、お前はそんなにレベルは高くないはずだ。それなのに何故、そんな簡単に避けれるんだ!?」


 ガトリングフレアの弾幕を突破し鎌を振るう私が、自分の理解の範疇を越えたらしく、魔族の男は迫る鎌を避けながら、そんな事を喚き散らし始めた。


 「た し か に~、私はみんなの中でも、ぶっちぎりで弱いですし、レベル以上の強さを発揮する才能(スキル)も無いです」


 レベルも40にギリギリ届くぐらいですし、才能(ユニークスキル)も無い。固有スキルは色んな意味で使えないモノです。そんな私が、ご主人様たちのような天武の才を持つ人たちについて行くのは一苦労なのです。

 そんな私だけど、ご主人様との訓練で気付いた事があるんです。


 「そんな弱いお前が、何故俺の魔法を避けれる!!」


 あまりにも五月蠅いので、特別に教えてあげましょう。ただし、それまで生き残れたらですが♪ アハハハハ♪


 「しょうがないですねぇ。じゃあ質問でぇす。スキルって何ですか?」


 「は? って、うお!?」


 私は攻撃の手を弛める事なく、魔族へ問いかける。魔族は、いきなりの質問に回避行動が一瞬遅れ、鎌を避け損ないそうになるも、ギリギリ回避に成功する。チッ!


 「だから、私たちのステータスに表示されるスキルですよ~。あれは何ですか?」


 「そんなの、自身がっ、修得していっる、技能の事、だろ? それと、お前が魔法をっ! 避けれたのと、何の関係が! ある!?」


 魔族は鎌を避けながら質問に答える。


 「正解なのです♪ 剣術スキルがあれば、剣を振るうのに補正がかかったり、魔法スキルなら、その属性の魔法が使えるようになるのです」


 もしくは、ある一定の水準に達したのが数値化して現れるのがスキルとも言われていますね。ご主人様曰く、『卵が先か鶏が先か』だとか。


 「だから、それが何だ!!」


 魔族の喚き声をまるっと無視をして、私は話を続けます。


 「そんなスキルですが、その種類は数知れず。さて、次の質問です♪ 私は回避スキルを持ってますが~、この回避スキルとは、どのような補正効果があるでしょう~か?」


 「回避スキル? さっきの魔法をっ! 避けれた、のは、そのスキルの…、おかげか? なら、避けるヒマも、与えなけ、れば、いいだけだ! 『スラッシュ』!」


 私が無視したように、魔族も私の質問を無視する。そして、魔法で私を牽制し、出来た隙を突いて距離をとる。


 「今度こそ終わりだ! 『イラプション』!!」


 魔族が新たな魔法を放つ。すると、私の足下が盛り上がり始める。


 ッバーーン!!


 そして、爆音とともに大地から火柱が上がる。


 「は、はははははは! これでようやく終わりだ。あとは、あの狐人を、っ!?」


 背後からの奇襲。首を跳ね飛ばそうとしたのたけど、寸前で気付かれ避けられてしまった。しかし、完全にとはいかず、鎌は魔族の右肩を掠めた。


 「あらら、完全に殺ったとおもったんだけど、殺気が漏れちゃった? けど、完全には避けきれなかったみたいですねぇ♪ 鎌から肉を引っかけた感触が伝わりましたよぉ♪」


 あぁ、やっぱり肉を斬るのは癖になるのですぅ♪


 「てめぇ、なんでまだ生きてやがる!」


 魔族は肩を抑えながら、私を睨んできます。よほど、先ほどの魔法で私を殺した気になっていたようです。


 火魔法、イラプション。

 一定範囲内を火柱で焼き尽くす魔法。熟練者になると半径10mほどまで広がるらしい。

 今回は半径5mほどだった。


 「そんなの避けたからに決まってるじゃないですか~」


 「嘘だ! いくら回避スキル持ちでも、無傷で避けれるはずがない!!」


 「嘘じゃないですぅ~! それに無傷なはずないじゃないですか」


 確かに、目立った外傷はないですが、それでも所々火傷はありますし、服だってあちこち焦げているんですよ?

 それに、避けたのだって、スキルの先読みで、地面から吹き上がる火柱の軌道を予測。火柱が起こった事で出来た地面の破片を足場兼盾にしつつ、その場を離脱。どうしても次の足場までの間に、炎に身を曝される場面は、水魔法でその場を凌いだんですが、まぁ、そこまで丁寧に教えてあげる筋合いはないですがねぇ。


 「だが、何故だ!! 何故、その程度の火傷で済む!!」


 「だ か ら~。回避スキルを持ってるからです~」


 「そんな訳あるか!! 範囲魔法で避けれないようにしただろ!!」


 「その答えが、さっきの質問にあるんですぅ~」


 「質…問? 回避スキルは何に補正があるかってやつか?」


 魔法を避けた理由がさっきの質問にあると教える。


 「じゃあ、もう一度質問♪ 回避スキルは何に補正があるでしょう~か?」


 「…くっ!」


 「ほらほら、早く答えないと死んじゃうよ~?」


 私は魔族の答えが出るのを待たずに、攻撃を再開する。そもそも、私は結構ギリギリなんです。相手が混乱している今の状況は、私にとって好都合なんです。


 「回避スキルは、攻撃を避ける行動に、補正がかかるんじゃないのか? だから、広範囲を一度に攻撃する事で、逃げ道を無くせば、その効果を発揮出来ないはずだ」


 「それでも正解ですが、今回の場合だと私の求めている回答にはならないんですぅ」


 魔族の男は模範解答を私は一刀両断する。


 「だったら何だと言うのだ!!」


 「仕方がないのです。正解は恐怖心をマヒさせる効果があるんです」


 「何で! 回避スキル如きに、そんな力があるんっだ!」


 ん~。もう少し自分で考えてほしいモノです。いちいち教えるのは面倒なんですよ。


 「そもそも、その考えが間違いなんですぅ。本来、スキルの効果って言うのは、もっと深い所に作用しているんですよ。私たちが思っているスキルの効果って言うのは、結果論でしかないんだよ~」


 つまり回避スキルの本質とは、恐怖心をマヒさせる事。

 それにより冷静な思考が生まれる。その思考が回避率を上げる結果に繋がる為、回避スキル=攻撃が避けるのが上手くなると言うイメージが一般的になっている。


 私が気が付いた事、それはスキルは私たちの知っている効果が実はスキルの本質ではないと言う事。

 それに気が付いた私は、スキルの本質を知る事を始めた。それが凡才の私が、ご主人様たちと肩を並べて歩くための唯一の道だと思ったから。

 


 「それがどうしたって言うんだ! そんな事ぐらいでレベルの差を覆せるはずないだろ!!」


 ええ、その通りです♪ でも、レベルの差を覆せなくても、その差を大きく埋める事は出来る事が、今回の実験で判った。 だ か ら ♪ 


 「なっ!!?」


 魔族の男が私の答えに不満を爆発させた瞬間、男の足が急に凍った(・・・)

 驚いた男が振り返った先には、体長2mを超えた真っ白な美しい毛並みを持つ一匹の狼がその大きな口から冷気を出していた。


 「もうお終いだよぉ~♪」


 「は…」


 白銀の狼に気を取られた隙を突いて、男の首を刎ね飛ばす。男の首は、呆気にとられた表情のまま宙を舞った。


 「はぁ、はぁ…。や、やっと殺った~。テンション上がる~♪ …けど、ギリギリだったよ~」


 相手が私を格下だと舐めてくれていた事。私のレベルに似合わない実力。それらによって生まれた混乱。そして奇襲。これら全てが起きて、やっと互角だと錯覚させる事が出来た。つまり、あの魔族は実力の半分ぐらいしか出せないまま闘っていた。

 そして、最後の背後からの第三者による奇襲。それでやっと、決定的な隙を作る事に成功したのだ。

 やっぱり、格上と殺り合うには絶対的にステータスが足りないなぁ…。


 「ク~ン」


 「フェリエル、お疲れ様ぁ~」


 私の元へとすり寄ってきた白銀の狼こと、フェリエルの頭を撫でて労う。本来、灰色の毛だったフェリエルが白銀の毛になっている理由は簡単で進化したからだ。ただ、戦闘の最初はまだ進化が終わっていなかったので、召喚せずにいた。

 が、私が火柱に飲まれた辺りで進化が終わったので、私を見失った隙に召喚し機会を伺ってもらったのだ。

 ちなみに進化したフェリエルの種族はスノーウルフと言う種になっていた。水魔法以外に、氷属性(・・・)がある事から、アイラ様が仕掛けをしたのがこの種族になった原因だと思う。


 「さて、私はセシリアさんの邪魔にならないように、周りの蟲どもを斬って斬って斬りまくろうっと♪」


 限界の体に鞭を打って、私は雑魚の処理をしているヴェーラーとソリューと合流する為にフェリエルの背中に跨って、次なる戦場へと向かう指示を出す。

ありがとうございます。


補足として、今回の相手はレベル60後半ぐらいでした。

終始舐めプをしていたのが最大の敗因でした。

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