中盤~無尽蔵?~
今回はちょっとだけ短いです。
先ほどまで眼前を埋め尽くしていた魔物のほとんどが真っ黒に染まった大地に引きずり込まれていった。分裂体の方でも同じ現象を確認したので、予定通り、島面積の7割を魔法陣内に納めることが出来たみたいだ。だけど…
「はぁ、はぁ。よ、予想以上に、はぁ…魔力を消費した」
代償に想定以上の魔力えお消費し、僕は肩で息をしていた。
僕が使用した魔法は、合成魔法とドーピングマジックでようやく再現に至った魔法だ。合成した属性は土と闇。使用した魔法は、土魔法のグラビティを2つと闇魔法のダークネストの計3つ。
土魔法のグラビティは、数秒間だけ重力を操る事の出来る魔法。
闇魔法のダークネストは闇の霧を発生させる魔法だ。発生したその霧は魔力を吸収する性質を持っている為、主に対魔法防御用の魔法として使用されるのが一般的だ。
これらを合成した上でドーピングマジックを施してようやく劣化版として再現出来た魔法、暴食の闇は、本来なら地面と言う制限存在せず、空中に発生して僕の知るブラックホールの如く、全てを吸い寄せ喰らい尽くす魔法…のはず。
と言うのも、本来の暴食の闇がどんな魔法か分からないで、想像でしか説明が出来ないのだ。と、言うよりも合成魔法全般が一度はやってみないとどんな魔法になるのか判らないんだけど…。
まぁ、肝心の今使用した劣化版暴食の闇の効力は黒く染まった大地に触れたモノを全て引きずり込む魔法なの、本来の魔法は僕の予想でほぼ間違いないと思っている。
黒く染まっていた大地が元の大地へと戻っていく。ただ、魔物はもちろんの事だけど、木や草なども一切見当たらない。本当に全て喰らったらしい。
それにしても、ドーピングマジックも過去最大の範囲だったけど、上手く発動してくれたみたいで一安心した。
どうやってドーピングマジックに必要な魔法陣を用意したかと言うと、分裂体にやらせていた事が魔法陣の準備だったんだ。
分裂体に持たせていた武器生成で創った武器を媒体に魔法陣を形成したのだ。一応、各所に設置した武器は地中深くに埋めたと言うか、突き刺した。じゃないと防衛に人を割かないといけないからた。
しかし、武器を魔法陣の媒体に使うには数が一つだまたけ多い。その一つ多い分は、魔法陣の中心に突き刺した。理由は、今回の魔法陣が大きすぎたから。なので、魔法陣の中心に一つ、媒体を用意しておけば、最悪六芒星魔法陣じゃなくても発動するかなぁと思っての、7つ目の媒体だった。結果としては、必要無かったのかな?
「…流石に、分裂体は限界が近いな」
さっき、魔法の発動したかを確認した時にも思った事を口にする。
それは、これまでの強行軍にも要因はあるけど、一番の理由ではない。
そもそも、合成魔法は並列思考を幾つか使わないと、制御が難しいスキルだ。僕の並列思考のスキルは8。そして、今の僕は分裂体を7体使っている。つまり、スキルをフルに使っている為、合成魔法を制御する並列思考の余裕がない。
じゃあ、どうやって、暴食の闇を発動させたのか。
その答えが、限界の近い分裂体だ。
つまり、僕は一瞬とは言え、分裂体に割いていた並列思考を全てを、暴食の闇の制御、発動させるために注ぎ込んだ。
結果、魔物に囲まれていた分裂体たちは、並列思考が戻る数秒から十数秒の間に魔物たちの攻撃を無防備に受ける羽目になった。
現在は、思考を戻したので反撃を開始している。
「分裂体の心配の前に、自分の方もどうにかしないと」
暴食の闇の範囲のギリギリ外にいた魔物たちが我に返り、再びこちらに向かってくる。だけど、暴食の闇のおかげで、さきほどまで辺り一帯を埋め尽くしていた魔物たちも第二陣ぐらいの数までに減っていた。
なので手早く殲滅し、休憩兼向こうの出方を待つ為の時間を確保する。
「ひとまず、転移陣の様子も知りたいな」
残っていた魔物を一掃し、一息つけたので分裂体を各転移陣へと向かわせる。分裂体たちはかなりボロボロだけど何とかなるだろう。
「…おかしい」
分裂体をそれぞれ東西北の転移陣へと向かわせているのだけど、一向に魔物が底を尽きる様子がない。
僕の方にも何度か魔物が現れたけど、暴食の闇の範囲外にいた残存の魔物だと最初は思っていたのだが、それにしては数が多い。と、言うより徐々に一度に現れる魔物の数が増えていっている。
「マジ…か」
その時、北の転移陣近くに到着した分裂体の情報が届いたのだけど、その情報に驚愕する。
情報自体は何て事ないもので、今も魔物が転移し続けていると言うものだった。
が、問題なのは、これがつい先ほど合成魔法で殲滅した後だと言う事だ。この島を埋め尽くすほどの魔物は数にすれば、数百…いや、下手をすれば数千万にも届いたかもしれない。
それだけの魔物を出したにも関わらず、今もなお転移陣から魔物が転移してきている事実に汗が流れ落ちる。
さらに状況は悪化する。
各転移陣から空を飛べる魔物が出始めていた。
「ガーゴイルにヤタガラス、キマイラ…ワイバーンもか!」
地上の魔物もゴーレム種やリッチなど強力なヤツがちらほらと姿を見せ始める。
これは、相手も本腰を入れてこちらを潰しに来ているな。
ひとまず、分裂体には空メインで遊撃しともらうことにしよう。地上の方は暫く放置でいいか。一応もう何発かは、ドーピングマジックの魔法陣も使用できるだろうからな。一応、分裂体に武器に込められている残存魔力を調べさせよう。
魔法陣の媒体に武器を使ったのには理由がある。
今回の武器は、武器としてと魔力を大量に使ったのではなく、どちらかと言うと大量の魔力を武器の形にしたと言う方がしっくりくる。その為、武器としての性能は中の中か中の下ぐらいの物でしかない。
今回は魔法陣を何度か使えるようにするのが目的だったから、武器としての性能は度外視させてもらった。なので、分裂体たちはこれまでの戦いであの武器を使う事はなかったのだ。
閑話休題
「……うん。多分あと2回ぐらいは撃てるかな?」
埋め込んだポイントに近かった中央ルートからの報告で分かった残存魔力から、さっきの魔法でどれだけ魔力を使ったのか逆算して、あと何回魔法陣が使えるのか割り出す。
そんな事をしている間にも、戦況は移り変わっていく。それも悪い方向に…。
ありがとうございます。