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序盤~激化する戦場~




 「ハァーーー!!」


 かけ声と共に数匹のハイオーガをまとめて斬り払う。

 攻撃を繰り出した流れに逆らわず、その場から飛び退くと、先ほどまでいた場所の地面にに幾つもの棍棒や剣、斧といった武器が突き刺さる。

 僕はアイテムボックスから使い捨ての投げナイフを取り出すと、武器を地面に刺した奴らの目を狙い、ナイフを投げる。

 ナイフは吸い込まれるように目へと行き、魔物たちの視界を奪う事に成功する。そこまで確認したところで、僕は地面に着地した。そして、すぐさま次の標的を発見し、そちらへと移動を開始する。





 現在、僕は同士討ちをする魔物に混じり、魔法の効果がないヤツを優先して斬り捨てている為、戦場を右へ左へとせわしなく行き来している。その為、既に何匹倒したかなんて言うのは覚えていない。




 「…まだ、後ろの壁までは行ってないな」


 ちらりと氷の壁に目を向けるが、未だにそこまで到達している魔物はいない。まぁ、到達しそうな場所から優先して処置しているからな。

 それに最初使った魔法、ラビリンスとスピリット・ミラージュを繰り返し使用しているので混乱している魔物がゼロになっていないのも大きい要因かな?


 「チッ! 徐々に漏れが増えてきたな」


 戦況は未だにこちらが不利。現にこちらが休む暇なく、氷の壁に張り付こうとする魔物が次々と出てくる。

 それもそうだろう。何せ、味方はゼロ。魔物に同士討ちさせているとはいえ、駒となるのは、敵の中ではランクの低い奴らばかり。

 未だに戦線を辛うじてでも維持出来ている方が不思議なぐらいだ。


 「『シャイニングスピア』!!」


 壁に張り付きそうな魔物たちの中でも数が少ない所に貫通性の高い魔法を放ち、自分はそことは別の数が多い所の対処へと向かう。


 ちなみに、シャイニングスピアは光の槍を放つ魔法だ。本当の光よりかは遅いが、それでも音速よりかは少しだけ速い。欠点としては、光魔法全体に言えるんだけど、消費魔力が多い事かな?



 「…威圧が効果を発揮してくれればもっと楽だったのに」


 氷の壁に張り付かれないように魔物を処理し続けているうちに、つい愚痴が漏れる。

 と、言うのも言葉通り、集団戦で一番頼りになるはずの威圧スキルさんが今回は全く効力を発揮しなかったのだ。

 第三陣に魔法をかけ、斬り込む前に威圧スキルを使ったんたけど、効果がなかった時は本気でパニクった。

 多分だけど、操られているのが関係しているんだとは思うんだけど…。

 まぁ、そんな訳で無防備なヤツを斬り捨てるだけの簡単なお仕事にはならなかった。


 「はぁ。えっと、次は…駒の補充か。『スピリット・ミラージュ』! 『ラビリンス』!」


 手早く魔物を処理し、周囲の確認。そして、周りでの同士討ちが収まりそうなので、追加の魔法。ついでに方向感覚も狂わせておく。

 それも焼け石に水だろう。だって、徐々にだけど上位種が増えてきている。もちろん、中位の魔物もまだまだいる。割合で言えば9対1だったのが、8対2ぐらいになった感じかな?

 しかし、この1割が馬鹿に出来ない。なぜなら、上位種1匹は最低でも中位10匹分、下手をすれば30匹分かそれ以上の場合もある。

 そんな上位種がこの場に現れる頻度が増えると言う事は、ただでさえ危うい戦線の維持は呆気なく崩れる事を意味する。


 「そろそろ、僕も一段階ギアを上げないと…」


 僕は周囲を見渡しながらそう呟く。


 と言うのも、現在の僕は先の事を考え、体力と魔力を温存しながら戦っている。

 具体的には、純粋な剣術と周囲への魔法、そして、たまにさっきのような攻撃系の魔法を使うぐらい。

 だけど、それで凌ぐのもそろそろ限界。なので、先ほど呟いた通り一段階ギアを上げる。今まで3~5合、斬り結んで倒していた魔物を、1~3合で倒す。

 その為には、一撃の威力を上げる必要がある。となれば、ここは魔法剣と魔法拳を解禁するのがベストかな? 並列思考に余裕があれば、牽制用魔法を使って隙を作り、そこを攻める。みたいな手数を増やす選択肢もあったんだけどね。悲しいかな、現実はそう上手くいかない。


 「無い物ねだりしても、事態は好転してくれないんだから、手を動かそう…」








 魔法剣と魔法拳を解禁して、殲滅速度が上がった事により、戦線は再び維持出来るようになった。…ギリギリのところでだけど。


 「…それにしても、マジでどれだけの兵力を用意しているんだよ?」


 既に何時間、戦い通しているか定かではない。

 …太陽が真上に有ることから、昼は過ぎてるみたいだ。

 第三陣と戦い始めたのは、確か10時前ぐらいだったかな? そうなると、2時間以上は戦っているのか。いくら2方向から攻められているとは言え、この数は本隊じゃないだろうか? となると、こいつらを殲滅すれば、残りの2箇所、これと同じぐらい倒せばこちらの勝ちが確定するのか。

 …ただ、問題は僕が索敵出来る範囲のうち、集落を境にこちら側は魔物で埋め尽くされているんだけどね。しかも、一向に減らない。

 ホント、どこからこれだけの魔物を集めてきたんだよ? 下手すると、大陸全ての魔物を集めてきたんじゃないのか?

 それに、これだけひっきりなしだと分裂体の情報を確認することも出来やしない。とりあえず、繋がり自体は残っているからやられてはいないみたいだけど…。


 「っと! バーンナックル!!」


 分裂体との繋がりを確認している一瞬の隙を突いたボストロールの一撃を回避し、カウンターで爆炎の拳を叩き込み、ボストロールを吹き飛ばす。ついでに周囲にいた魔物も巻き込んで吹っ飛んだ為、ほんの僅かの間だけ、敵のいない空間が生まれる。

 その間に周囲へ魔法を使い、駒の補充をする。


 「飛翔剣!!」


 風魔法を纏って斬撃として飛ばす魔法剣でこちらに詰め寄って来ていた魔物を一掃する。


 「少しでも混乱してくれれば儲けものかな? 『サンダーシャワー』!!」


 前線にいないヤツらは、突然の頭上からの攻撃に慌てふためいてくれるかな? と、淡い期待を込めて、戦場全域に雷の雨を降らせる。


 突然降り出した雷の雨に、僕の近くにいた魔物以外は、混乱し始めた。なので、この僅かな時間を利用して分裂体の状況を確認する。

  …どのルートも上位の魔物がかなり出てきているようだ。幸いにも、ドラゴンなどの上位クラス以上の魔物、最上位クラスともいえる魔物の姿は未だにないみたいだ。

 それに、中央ルートもあと少しで目的地に到着するみたいだ。時間にして10分ってところかな?


 各所の状況を確認したのち、ポーションやマジックポーションをアイテムボックスから取り出し、体力と魔力を回復させるために、それらを一気に飲み干す。僕のステータスからすると雀の涙ほどしか回復しないけど、それでもしないよりかははるかにマシだからね。


 「この魔法で残り時間を凌がせてもらうよ! 喰らえ! 『アースクエイク』!!」


 一定範囲内の地面を一定時間隆起させ続ける土魔法。それを魔力の温存とか考えずにこの辺り一帯が範囲内になるように発動させる。

 アースクエイクのおかげで範囲内にいた魔物たちは全滅。範囲外にいた魔物も隆起した地面のせいで再び押し寄せてくるまで10分以上はかかるだろう。

 その事を確認した僕は、これからの為に魔力を練り始める。今からこれをしておけば、中央ルートが目的地に着いたのと同時に発動させる事が出来るからね。


 そうして魔力を練ってから10分が経ったあたりで、分裂体から待ちに待った連絡が届いた。


 「それじゃあ。まずは一発逝きますか! 『暴食の闇(ブラックホール)』!!」


 僕が魔法を発動させる。

 発動した魔法に呼応して大地が輝いたと思った次の瞬間、大地が真っ黒に染まり、その上に立っていた魔物たち全てを飲み込んだ。



ありがとうございます

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