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初戦闘

この話より城下街を王都に変更します。

ちょこちょこ変更してすいません。他の話もすぐ直します。




 僕とリンがお互いに魔法を教えあいながら歩ること半日で町が見えてきた。

 僕にとって、この世界ではイーベルの王都についで二つ目の人が住む町の為、ちょっとテンションが上がっていた。

 王都が近いのに町があるのにも理由があるらしい。

 なんでも王都に住みたくても、お金やらなんやらの理由で住めない人たちが、それでも王都の近くに住みたいから、近くに村を作ったのが始まりらしい。

 どこの世界でも、都会の近くに住むのは一種のステータスになるみたい。


 町に入る前にリンが提案してきた。


 「ねぇ、これからの事を考えると、この町に数日滞在して、路銀を稼いだ方がいいと思うのだけど? ついでにノゾムの魔法の試し打ちも出来るし一石二鳥じゃないかしら?」


 確かに悪くない案だと思う。旅の準備でお金も使っちゃった分の補充をしておける内にしておいた方がいいに決まっている。まぁまだ王都から出発して1日しか経ってないけど、急ぐ旅でもないからね。


 「僕もそれでいいよ。じゃあ最初にギルドに行く? まだ何か依頼が残ってるかもよ?」

 

 「それよりもまずは宿を探しましょう。夕方頃だと、どこも空いてない可能性があるらしいわ」


 そう言われて、宿屋に泊まるのはこの世界に来て初めてだったと思い出した。それまでは城の部屋だったからね。そう思うとなんだかまたテンションが上がってきた。



 「ノゾムが目をキラキラさせてい…る?………なるほど」


 リンが僕を見て様子が変だと感じたのか、左目の包帯を外して僕を見直すと、一応は納得したようだ。

 けど、そんな安易に魔眼使って平気なんですか?



 町に着いた僕たちは寄り道もせず、町の人を捕まえて、宿屋の場所を聞く事にした。


 「すいません、宿屋ってどこにありますか? 僕たちこの町に着いたばかりでして。出来れば、新人冒険者でも泊まれるぐらいの宿屋がいいんですが…」


 「宿屋かい? ん~、その条件の宿屋ならこのまま真っ直ぐ進むと右手に『泊まり木』って宿屋がいいんじゃないかな?」


 「『泊まり木』ですか。そこに行ってみます。ありがとうございました」


 宿屋の場所を教えてくれた男性にお礼を言って僕たちは宿屋『泊まり木』に向かった。

 


 『泊まり木』は1階が酒場になっていて2階から宿として、使っているらしい。


 「すいませーん」


 「はーい、いらっしゃいませ。食事ですか?」


 元気よく接客してくれたのは僕たちぐらいの歳の女性だった。

 身長はリンより少し低いぐらいで、髪は茶色のショートカット、そして小動物みたいな雰囲気がある。

 看板娘って言われても納得する可愛さだと思う。

 そんな事を考えてると後ろからとんでもなく冷たい視線を感じる…。


 「食事じゃなくて、泊まりの方をお願いしたいのですが…」


 「宿泊ですね。1泊2日の朝夕2食付きでお1人様15ギルです。お湯はタオル付きで1回につき5ギル別料金掛かります」


 「じゃあ4泊を1人部屋2つでおね…」


 「2人部屋1つでお願い!」


 「ちょっとリンさん! なに言ってるんですか?」


 僕はリンがいきなり割り込んできた事にビックリしていると、リンは頬を膨らませながら睨んできた。


 「何でも言う事聞くって約束したのに…」


 まさかここでそれを使ってきますか…。

 僕が困っていると、少女が助け船を出してくれた。


 「ベッドはツインとダブルのどちらにします?」


 そうか! いくら2人部屋と言ってもベッドが1つとは限らない!

 これ以上リンが余計な事を言う前に決めないと!


 「ツインでお願いします!」


 「分かりました。お部屋の方は3階の1号室になります。あと食事ですが、朝は6時から9時までの間で、夜も6時から9時の間でお願いします。こちらが部屋の鍵です」


 「ありがとうございます。えっと、」


 「あたしはリムっていいます」


 「僕はノゾム、こっちがリンスレットって言います。4日ほどですが、よろしくお願いします」


 そう言って鍵を受け取り部屋に行くなり、リンが不満をぶつけてきた。


 「…ノゾムってああいう娘がいいの?」


 「なにを言ってるんですか?」


 「だって名前聞いてた…。ナンパしてた」


 名前聞いただけでこれですか? もしかしてリンってヤンの素質があるんじゃ…


 「これから4日はお世話になるのに、その間名前を呼ばない訳にもいかないから聞いただけだよ」


 「…確かにそれもそうね」


 「それよりも1部屋にする為だけに、あの約束を使うとは思わなかったよ」


 「それは…いまさら1人になるのは嫌なのよ…」


 リンは部屋に1人になるのが嫌だったのか。

 まぁこればっかりはどうする事も出来ないか。



 とりあえず、依頼は明日から受ける事にして今日は町を散策してきた。

 流石に王都に近いだけあって、品揃えも王都と変らないような気がする。

 ある程度散策した僕たちは、宿に戻り夕飯を食べる事にした。



 「リムさ~ん、食事お願いします」


 「はーい、すぐ出来るから待っててね」



 席について待っているとリムさんが料理を持ってきてくれた。


 「はい、おまたせ」


 出された料理は黒いパンに豆と野菜のスープに何かの肉だった。


 「リムさん、これは何の肉ですか?」


 「えっと、今日のはオークのお肉ですね」


 えっ? 魔物の肉って食べられるの?


 「基本的に魔物の肉は食べられるのよ。多分お城でも出ていたはずよ」


 思っていた事が顔に出ていたらしく、リンがこっそり教えてくれた。

 それにしても城でも出ていたのか…。城での食事は1人だったから、料理について質問も出来なかったしなぁ。

 リムさんは僕の質問に答えたあとすぐに仕事に戻っていった。



 「とりあえず食べましょう」


 「そうだね。じゃあ、いただきます」


 僕がそう言うとリンは首をかしげていた。


 「ノゾム、前にも思ったのだけど、その『いただきます』って何?」


 リンの質問のおかげで僕は彼女がなぜ首をかしげていたのか理解した。


 「これは僕のいた世界での食事をする前にする挨拶だよ。確か…動植物の命を頂きますってことろからきている意味で、感謝を表しているんだよ」


 「なるほどね。なら私も…いただきます」


 僕の説明を聞いてリンも同じようにいただきますと言って食事を開始した。


 「パン固いね…」


 「それはスープにつけて食べるものよ。そうすれば食べやすくなるわよ」


 「なるほど!魔物の肉って聞いたときは抵抗があったけど食べてみると普通だね」


 「ノゾムの世界ではどうなのか分からないけど、この世界で魔物は害でもあるけど、益でもあるのよ。7対3ぐらいの割合だけどね」


 「そもそも僕の世界じゃ魔物なんていなかったし…」


 そんな話をしているうちに食事も終わり、リムさんに体を拭くお湯をお願いしてから部屋に戻って問題が発生した。

 リムさんが持ってきた体を拭く為のタオルが1つしかないのだ。


 「………」


 リンは困っているようだけど何か言いたそうにチラチラこっちを見ている。

 直感で危険を察知したので、僕はリンが暴走する前に行動に出た。


 「僕は剣を振ってくるついでに新しいタオルを貰ってくるからその間にリンは体拭いちゃって寝なよ」


 リンの返事も聞かないまま僕は部屋を出た。

 それから3時間ぐらい素振りをしてから部屋に戻るとリンはベッドには入っていたが寝てはなかったようだけど、僕が帰ってきた事で安心してのか、そのまま眠りについたみたい。

 僕も体を拭いてからベッドに入り眠りについた。




 翌朝、僕とリンはギルドで依頼を探していた。


 「Eランクで討伐依頼はないかな?」


 「Eだとないんじゃないかしら? 確かEランクまでが初心者って扱いでしょ?それなら適当に採取系を受けて、ついでに魔物を狩った方がいいわよ」


 まさかFランクである事が問題になるとは、ほんの数日前までは考えられなかったな。

 とりあえず、ランクは道中上げていくとして今はリンの案でいくしかないか。


 「それしかなさそうだね。じゃあ、定番の薬草採取にしておくよ。ここからならまだ北の森も広がっているから薬草も簡単に集まるだろうしね」


 「そうね。けど、王都から入る北の森とここから入る北の森はちょっと生態が違うから受付で情報を聞いた方がいいわよ」


 たった1日分離れただけで生態が違うのか。

 リンに言われた通り依頼申請のついでに聞いてきますかね。

 受付のギルド職員の話だと、この辺りの北の森ではゴブリンにウルフ、稀にオークなんかも出るらしい。けど最近はそのオークの目撃情報が増えているらしいから気をつけるようにだって。

 その事をリンに伝え僕たちは北の森に向かった。




 森に着いた僕たちはさっさと薬草を集め終え、今は魔物を探していた。


 「そろそろかしら…」


 何がとは聞き返さない。確かに僕もそんな気がする。

 もうそろそろ魔物が出てきそうな気がする。

 ヒトだった時には決して感じる事の出来なかった、動物ではない『何か』の気配が近づいてきている気がするんだ。

 今、僕はとても緊張してる。

 考えてもみれば、この世界に来て僕は一度も魔物を見ていないし、戦闘らしい戦闘もしていない。

 以前の盗賊との戦闘も何も出来ないで負けた。

 ちゃんと戦えるのか、魔物を殺せるのか、そんな事が頭の中をぐるぐると回っている。

 だから、リンの言葉も全然頭に入ってこなくなってきていた。



 「ノゾム! ゴブリンが3体よ!」


 リンが魔物を見つけて僕に声をかけてきた。

 相手もこちらに気がついて戦闘態勢に入っていた。

 僕は剣を抜いて構えた。

 リンは僕が負けるはずないと思っているらしく、すでにゴブリンを無視して周囲の警戒をしている。


 「「「ガァーー!!」」」


 ゴブリンたちは叫びながらこちらに向かって走ってきた。

 三体ともただ闇雲に突っ込んできた。

 僕はそんなゴブリンたちの敵意にのまれてしまい、棒立ちになってしまった。そしてそのままゴブリンの一体に押し倒されてしまった。


 「うわっ!」


 「ノゾム!?」


 僕が倒された音を聞いたのかリンがようやくこっちを見た。

 そして、リンに向かっていった2体のゴブリンを瞬殺して僕を助けようとこちらに向かって駆け出そうとした。

 その時には僕を押し倒したゴブリンは僕を食べようと、僕の喉に噛み付こうとしていた。


 「あ、うあああぁぁぁーーー!!」


 グチャ! って言う音と共にゴブリンの頭が吹き飛んだ。

 僕が無意識にゴブリンを殴ったらしい。多分出せる力の全てを使って。

 結果として制限を受けているステータスとはいえ、筋力7000超えのパンチをくらったゴブリンの顔面は吹き飛んでいった。

 そして僕は顔を吹き飛ばしたゴブリンから出る血を顔から浴びた事と、初めてヒトに近い生物を殺したと言う罪悪感で…



 「う、うえええぇぇぇっ」


 思いっきり吐いた。

 


 僕は圧倒的ステータスを持っているのに、初めての戦闘では無様にも何も出来ず、それどころかリンに迷惑をかけ、しかも吐いてしまうと醜態をさらす結果に終わってしまった。


仕事の関係上更新速度が多少落ちると思います。

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