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ミッションEx「暇を持て余して内政干渉」

壁|ω・`)ぬるり

三国同盟締結でウィンダリアウスが一番悩んだのはやはり治安だった。

不利と見れば逃げるような調練方針も災いしたのかもしれないが、

騎兵隊カヴァレリーアの多くが同盟締結後、暇を持て余して

大衆食堂トラットリアや兵舎などで酒を飲んで騒ぎ、

クラップフェンの眉間の皺も増やしてくれたのだ。


「あぁー…マジでメンドくせぇ案件だなー…」

「単純すぎるが故の問題ですね」

「かといって禁酒すれば逆効果です」

「このままではノースジャックやドゥルーシの観光者にまで被害が及びますぞ」

「攻める口実に…!」

要塞卿フォートレスロード殿のお力があっても敵の電撃作戦までは如何いかんとも…!」

「いっそ全員牢屋に…!」

「馬鹿なの死ぬの…!?」


「だあぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあ! めぇーんどくせぇーなぁーッ!!」


……。


…。


トリスの射撃訓練システムが使えるとは思わなかったギヨームは、これ幸いと

暇つぶしにトリスが悪意たっぷりに射出するフライングディスク相手に

隙あらば本体トリス諸共に風穴開けてやろうと中庭で

普通のリボルバー銃(?)のS&W-M19コンバットマグナムで射撃訓練をしていた。


「そういえばハイスコア更新はご無沙汰だったか」


咥え煙草をしながらコンマ単位で出没を繰り返すディスクを正確に撃ち抜くギヨーム。

トリスは射出と同時にギヨームの死角に移動するため、射線上にすら乗せられない。

ムカつき過ぎてまだ残っているのに煙草をもう一本追加で咥えるギヨーム。


「ギヨーム様。いい加減学習してください。私には当てられませんよ?」

「くっそがぁあぁぁぁぁぁあぁあああ!!」


気が立ちすぎて中庭の扉が開いた瞬間に条件反射でつい其方を撃っちゃったギヨーム。


「お前も苛立ってんゴパッ!?」

「げっ!?」

「不幸なウィンダリアウス陛下はこうしてギヨーム様に暗殺されm」


ギヨームは慌ててウィンダリアウスに「ナノリメイカーA」を散布した。

不幸中の幸いは彼が鎖帷子くさりかたびらを着用し、急所を外れていたことだ。


…。


改めて先ほどまで風穴が開いていたはずの胸部を擦って確かめるウィンダリアウスと

ウィンダリアウスに誠心誠意土下座するギヨームというツーショットは誰得だろうか。


「いやー…一発良いのを貰っちまった時は流石に焦ったわー」

「本当にマジで申し訳ない」

「しょーがねーって。俺様もマジでキレそうな時には

思わず剣抜いて振り抜いてることあるし」

「それはそれで洒落にならない展開にwktkしますね」


ギヨームは土下座の残像をウィンダリアウスに見せつつ「バルシェム騎士剣+87」で

高速剣技を繰り出してトリスを斬壊せんと奮闘する。


「半端なく器用だなーw 何気にシオンと互角かそれ以上の剣捌きじゃねーかwww」

「銃の! 効かない! 相手とか! たまに! いるから! これくらい!

出来ないと! 命が! いくつあっても! 足りんのですよ!!」


喋りながらも土下座の残像が消えないようにトリスを斬壊せんと奮闘するギヨーム。


「やっぱ半端ねーなアンタは」


「ちくしょおおおおお何で掠りもしねえんだよおおおおおお!」とか叫びながら

トリスを斬壊せんと奮闘するギヨームを眺めながら、

ウィンダリアウスは中庭に誂えられている椅子に腰掛けて

傍らのテーブルに置かれた葉巻(多分カイン帝の贈呈品)の一本を点ける。


「ふぅー……」

「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…っていうか公務放り出して大丈夫なのか?」

「何言ってんだよー? 逃げ出して来たに決まってんだろー☆」


苦笑いしながらギヨームも葉巻を一本点ける。


「だと思ったよ」

「しょーがねーだろー? 同盟結んでから会議書類仕事会議書類仕事会議書類仕事視察書類仕事謁見書類仕事会議書類仕事会議書類仕事会議書類仕事会議書類仕事謁見謁見謁見会議書類仕事会議書類仕事会議書類仕事謁見会議書類仕事会議会議会議…!

あんなので喜ぶのはクラップフェンくらいだっつーの!!」

「うまいこと適当に流せなかったのか?」

「今回ばかりは事が単純すぎて流せねーよ…」


鼻からも紫煙を出しながらつらつらと騎兵隊の問題を愚痴るウィンダリアウス。


「平和が続くと騎馬隊は暇になるもんだからしょうがないなソレは」


馬というのは繊細な生き物だ。如何な騎馬とて無闇矢鱈に調練に付き合わせられない。

結局人馬一体で頑張りたくても頑張れない騎兵たちがフラストレーションを起こす。

最初のころは流石にほろ酔い騒ぎで城下の賑わいにむさ苦しいが華を添えたが、

連日連夜騎兵隊の出番が無ければ酒の量も段々増えて最後は乱闘以下略である。


「何とか騎兵隊の活躍の場を作ってやりてーんだけどよー…」


ということで騎兵隊の活躍の場を作ろうと案を出したのだが、

対戦用に調教した騎馬には重い荷物運びなんてさせられないし

かといって演習をしようにもまともな騎馬隊はアウグストゥス王国しかいないのだ。


「あー…いい感じに騎馬の競争本能を刺激しつつ騎兵たちも満足するような

騎馬の平和的利用方法ってねーもんかなー!!」


鼻の穴から勢い良く紫煙を噴出しながら叫ぶウィンダリアウス。


「……………競馬でもやれば良いんじゃね?」


だらしなく鼻の穴から紫煙を噴出しながら返したギヨーム。


「んー…? ケイバって何だー?」


………。


……。


…。


アウグストゥス王国の手付かずだった北方開拓地に大きな競馬場が建てられた。


「さぁロッソフェラーリ! ロッソフェラーリ鼻先で逃げ切るか!

来た来た来た来たダークホースのグロックシャイン! ロッソ逃げ切るか!?

ロッソ逃げ切れるかグロック並んだ並んだ一馬身抜いたかロッソ追いすがる追いすがる

グロックスパート入ったグロックかロッソかロッソグロックグロックーーーーー!

首際グロック一位をもぎ取ったー!!」


赤毛の騎馬を顔の差で追い越してゴールラインを突破したのは

ノースジャックの水棲馬ケルピーの騎馬だった。


「チックショおおおおおおおおおおお!! わずかにスタミナを見誤ったかぁ!!」


名前通り赤毛の馬を駆っていたアウグストゥス騎士はものすごく悔しそうだ。


「しかしギリギリの駆け引きだったよ。我が国ノースジャックのケルピーは拙速ではあるが

そちらのアウグストゥス馬の半分も体力が無いのでね…」

「今度は二馬身くらい差を付けて勝つぜ!」

「ふ、唯では負けんぞ?」


アウグストゥス騎士とノースジャック騎士は不敵に笑いながら握手を交わした。


「…ほふ…あちち………ほんの数日で大盛況だな」


まだ熱々なカルツォーネを食べながらギヨームは予想以上に

盛況な競馬場の様子をウィンダリアウスたちと眺めていた。


「いやー、これには俺様もビックリしてるぜー」

「馬券の売買にはこれからも色々と法整備しなくてはなりませんが…

とはいえ貴重な国益源になるので悪くはありませんな」

「何よりも騎兵たちのストレス解消にもってこいです。

出場して負けた兵士は仕方ありませんが、文字通り勝ち馬に乗れた

他の兵士たちの喜びようは市井の人々の不安を拭い去ってくれそうな勢いですよ」


眉間の皺も減ったクラップフェンと微笑みを浮かべるスヨーヴィンを見て

ニヤリとしながらワイン片手にチーズをもしゃもしゃ食らうウィンダリアウス。


「……で、マウナさん…その金銀貨幣の山は一体…?」


金貨銀貨その他色々な貨幣がうず高く積まれ、顔が隠れそうっていうか

実際ほとんど隠れちゃっているマウナをちょいとジト目で見るギヨーム。


「えーとぉ…そのぉ…暇つぶしに順番当てをやったらドンドン当たっちゃってぇ…」

「マウナ様! 予想通りグロックシャイン3連単的中です!」

「持ちきれないので袋に詰めてきました!」


ジャラジャラうるせぇ麻袋がさらにドンドンドンと積まれる。


「………」


ギヨームは懐の馬券『単勝:ボロシェボローニャ』を無言でクッチャクチャにした。


~数日後~


ドゥルーシ帝国から寄贈された魔導通信機にはこんな文面が出ていた。


『ケイバ ナル シンキジギョウ ニ ツイテ ナンジ ニ

キキタイコト アリ ニッテイ レンラク サレタシ

ドゥルーシ テイコク コウテイ カイン マシーネンツァーリ ドゥルーシ』


「………」


タイプライターみたいなキーボードに

チャキンチャキンと手打ちして返信するギヨーム。


『ダガ コトワル 

フォートレスロード ギヨーム ナミオカ』


ここからしばらくカイン帝から返信ラッシュが始まり

仕事を放置するなよ皇帝おっさんェ…とため息をつくギヨームだった。

壁|))フッ

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