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ミッション6「今更かもしれない異世界の定番”ギルド”にて」

多分本編としては短いと思います。

そもそもがダメ元だったノースジャックとの交流が、

まさかドゥルーシよりもあっさりと決まって

アウグストゥス高官達はかつてないレベルの連日多忙だった。

イーグニウスは無論、スラッシュロードもウィンドルールも

イーグニウス使節団来訪の日が変わらないうちに相次いで使節団を送ってきたのだ。


ウィンダリアウスは普通の大国の王様(?)らしく謁見の毎日が続き、目を回している。


スヨーヴィンとマウナは以前に比べて遥かに多くなった

騎士団の新兵たちや予備部隊の調練に次ぐ調練。


クラップフェンは逆に嬉しそうに忙しく働いているように見える。


ゾンゲルは相変わらず何処に居るのか不明だ。きっと何処かで

スパイ同士の激戦でもしているのかもしれないが、正直どうでもいい。


ユーリとジルベルは大使としての本業で溜まりに溜まっている…

というか大量にドゥルーシ帝国から送られてきた仕事の山に頭を抱えている。

まぁ頭を抱えているのは主にユーリだけだが。


「だからこそ、だからこそ俺はゆっくりアウグストゥスの大衆食堂トラットリアで…

のんびり酒でもひっかけようと思ってたのに…」


まったりのんびり過ごしたかったギヨームはため息をついた。


「私事の時間も上手く作ってこそ強者だ、まだまだ貴様は詰めが甘いようだな。

余も少し安心したよ」


とニヤニヤしながらギヨームの肩に手を置くのは、ドゥルーシ帝国の皇帝

カイン・マシーネンツァーリ・ドゥルーシ三世。


「ごめんなさいギヨーム様…私も上手く私事の為の休日を別にできれば良かったのですが…」


と言いながらギヨームに謝罪の意を示すのはノースジャック連合イーグニウス炎王国女王

アルテナ・ダーナニア・イーグニウス。


「監視に私事も公事も無い」

「そうね…ゾンゲルの場合確かに趣味の潜入捜査だし…あまりお勧めしないけど」


そしてシオンとシュリールも傍に居た。

流石にギヨーム以外は全員変装も兼ねた私服なので、

顔なじみ等に間近で直視されない限りは彼らが大国の重要人物と判明して

大騒ぎになる事も無い。


とはいえ彼らが雁首揃え護衛を一切付けず

種も職も様々な人々が行きかう商店街などをウロウロして良いモノなのだろうか?


「無いわー…基本的じゃなくても無いわー…」


ちなみにアルクはユーリに捕まって仕事を手伝わされている。

副長気質なのが彼女の命運を分けたのだろうか。


「女王様は兎も角…カイン帝…アンタ何しに来たんだよ?」

「貴様を我がドゥルーシに本格的に抱き込むつもりだが?」

「………」


ギヨームは懐をまさぐる。すると目の前に葉巻を差し出してくるカイン。

逡巡したが煙の悪魔に負けたギヨームは葉巻を楽しむ。


「堂々とし過ぎてて逆にどう切り返せばいいのやらわかりませんね」

「優秀な人材は如何なる手を以ってでも得る、

それが余のドゥルーシを本物の大国へと昇華させた手段の一つだからな。

で、どうだ? 今なら余の帝女むすめ達を全てくれてやっても良いぞ?」

「ごっふぉ!? げぇっほ!?」


ギヨームがむせたのは本来吹かして香りを楽しむ葉巻を

普通に煙草のように吸ったせいだ。

決して誘惑と妄想に精神が乱れたわけではないはずだ。


「流石は統一帝国騎士団上がり…下品です」

「統一皇帝に最初に手を貸した諸侯と言う名ばかりで大した実を取れぬ

島国の連合なんぞには言われたくないな」


ギヨームは葉巻の味すら楽しむ余裕が無かった。

だって両脇にシオンとアルテナ女王様が引っ付いてるわけで、

そのアルテナ女王とカイン帝が静かに笑顔で睨みあってるわけで、

視線でシュリールに助けを求めるも今回は通じないわけで、

こういう時は絶対トリス達シーカーは助けに来ないわけで、


「ん…?」


どうしようもないのでギヨームは辺りを見回しながら足を動かす。

すると商店街の一角に木造だが立派なビルのような建物が目に付いた。


「アウグストゥスの冒険者の組合所ギルドは未だに木造なのか…これでは

敵飛行部隊から対地魔法攻撃をされただけで大惨事になりそうだな」

「ウィンダリアウス王は視野に入れているのでしょうか…?」

「三国同盟以前はそれなりに考えていたのですが…同盟締結とともに

"もー良いんじゃね?"と言って手つかずです」

「アウグストゥス王らしいといえばらしいが…」

「思慮が浅い…とは言いたくないのですが…」


いやお前ら二人が言えるセリフなの?

などとギヨームは思っていたのだが、ふと、ある事を思い出して


「そういえば俺ここでの正式な身分証作ってないんじゃね?」


…。


なんとなく想像がつくことだが、ギルド内は喧騒に満ちていた。


「ほう、中々の賑わいだな。些か無秩序なのは気に入らんが」

「交流も増えてきましたからね…あら…? 何故、私の連合王国ノースジャックの兵が…?」


周りを見渡せば、恰幅の良い男たちがバーカウンターで酒をひっかけ騒いでいたり、

静かに受付前の待相席で呼ばれるのを待つ玄人らしき剣士がいたり、

目の前で獣人ライカン冒険者たちの小競り合いがあるにも関わらず、

笑顔を一切変化させない亜神族エルフの受付嬢を拝見したり、

どう見てもお前はビビられる側なのに、どうしてお前がビクビクしてんだよ

そこの亜巨人トロール冒険者! …などが見える。


「Oh…何か始めて異世界に来たって感じがする…」

「正しくは異星でしょうね」


眼前にテレポートしてきたトリスを見て驚かないのはギヨームだけだ。

今回はクミンはいない。流石にマスターであるアルクを放置はしないのか。


―可視精霊…?!―

―おい、何やら見慣れない光沢の鎧をした奴がいるぞ…?―

―何処かで見たことあるような…無いような…―

―両手に花かよ爆死しろ―

―端っこのオッサンが何か怖いんだけど…―


「トリス。そういう表現は何か風情が無くなるからやめろ」

「実は風情もヘッタクレも無い兵装盛り沢山なギヨーム様が言えた義理でしょうか」


ギヨームは無拍子ノーモーションで「バルシェム星人騎士剣+87」を抜き、

トリスを刺し壊すべく連続突きを放つ。


苦も無くテレポートしまくってかわしまくるトリス。


電光剣ビームソード「ニンジャスレイヤーANK+243」も装備して

二刀流となって再びトリスに斬りかかるギヨーム。


ギリギリ届かない距離で絶妙に躱していくトリス。


ちなみにこの一連の動作は常人には残像付きで見えている。


「はぁ…ぜぇ…クソが…何で…当たんねぇんだよ…

痛覚遮断機構ペインアブソーバーが基本常時機能しないんだぞ…?

だったら意図的な友軍誤射フレンドリィファイアだって…」

「反応と演算処理とスキャニングのみにおいては、

マスターであるギヨーム様をも超えると自負しております」


そもそも表情があるのかどうか不明なはずなのに、なぜかトリスが

ドヤ顔しているような気がして、ギヨームの笑顔には青筋が一杯浮かんでいた。


「ギヨームさんの動きって時々不意に驚かされるわよね」

「故に監視継続を欠かさない。この間は公衆浴場テルマエの手前まで尾行したが、

残念ながら失敗した」

「この間の銭湯前での変な気配の正体はシオンちゃんだったのかよ…」

「貴様の底が見えない事に、余は嬉しくもあり恐ろしくもあるぞ」

「まだまだ私たちには底知れぬ実力を持っているのにもかかわらず

アウグストゥスの食客に甘んじるなんて…ギヨーム様は謙虚過ぎますよ…?」

「ちなみにギヨーム様。本来の要件をお忘れなのでは?」

「トリス…お前のそういうところが俺は嫌いだよ」


ギヨームは気付けば静まり返ったギルド内をテクテク歩いて受付に向かう。


「ようこそアウグストゥス冒険者ギルドへ。本日のご用件は?」


平静を装ってはいるが、受付の亜神族のお姉さんは営業スマイルが引きつっていた。


「冒険者として登録したいんですけど」

「えっ…? っと…もしかして新規登録なんですか?」

「あ、はい…色々あってできなかったもんですから。

……一応アウグストゥス王家から貰った身分証はあるんですけど」


そう言ってギヨームはアウグストゥスの王家の捺印が入った身分証(しかも巻物状)を

ちょっとばかし無造作にカウンターに置いた。


「お、王家…? は、拝見させていただきますね…」


すでに笑顔が綻びを見せているエルフの受付嬢は恐る恐る巻物を開いて内容を読む。

読んでいくうちに段々と青ざめていく様子を見ていたら、何だか

平社員時代むかしを思い出してしまってギヨームも胸が痛んだ。


「しょ、少々お預かりしても…?」


ただでさえ白い肌が青白くなっている受付嬢にギヨームも思わず畏まってしまい、

「あ、どうぞどうぞ」と一言。受付嬢はそのままゆっくり後ろのドアから出て行った。


…。


何か凄い汗びっしょりなギルドマスターらしき

恰幅の良いほんのりナイスミドルな顔の男がダッシュでカウンターへ突進してきた。

肩で息をするのが凄く苦しそうである。


「まさか…アンタが…いや、要塞卿フォートレスロードの貴方様が

冒険者の登録は初めてだとは思わんかったです」

「ちょ、待っ…要塞卿って俺の事?」

「その見慣れぬ金属の鎧を身に付けたお方は…世界広しと言えど、

貴方様以外にはまだ確認できてねぇです」


しょうがねぇじゃん! 他に異世界の世界観を壊さないような装備が無かったんだよ!

ギヨームはそんな言葉を辛うじて喉元で押し返す。


「うむ。余も貴様のその鎧等には興味が尽きない。

我が国で量産化に成功すれば大帝国も夢ではない気がするのだ」

「それは存外笑えませんよカイン様」


ギヨームは火こそ点けなかったが煙草を咥えずにはいられなかった。


「…俺、登録できるの?」

「それは何の問題もありやせんよ。むしろ要塞卿の初登録ギルドとして名が上がるんで

ウチとしちゃあ万々歳の熱烈歓迎でさぁ」

「そっか…じゃあ、登録の手続き良いかな?」

「勿論でさぁ。おい。アレ持ってきてくれ」

「はい」


ギルドマスターがギルドの所員たち数人に何かを持ってこさせるよう指示をすると、

数人がカウンターのドアの向こう側へ行く。数分後、豪奢な燭台(?)のような

モノの上に水晶玉のようなモノが乗せられた謎の物体を数人がかりで此方へ運んできた。


「これは…?」

「”世界の果て”にはコレすら存在しないのか? 余としては逆に意外だぞ?」

「ちなみにコレは古代魔道具エルダーアイテムの一つで『神格位測定器レベルチェッカー』と呼ばれる

未知なる古代魔導文明の遺産とも言われている国宝級のレアアイテムです」


レベルチェッカーなるアイテムにすかさずスキャンをかけるトリス。


「……これは大上位文明グレイトインテル級のアイテムですよギヨーム様…

推測ですが、ギヨーム様の身体能力ステータスから特殊技能スキル遺伝的才能タレント

果ては特殊性癖フェティズム薬物依存度ドランカーレベルまで分かる一品です」

「後半二つはお前の脚色だというのは看破済みだ! んなモン誰得だっつうの!」


再びトリスに連続牙突をぶちかますギヨーム。結果は言うまでもない。


「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ………で、これに何をすれば良いんだ?」

「その水晶玉を握って少しばかり待ってもらえりゃあウチで発行するギルドカードに

そこの精霊様が言ったようにステータスとかが記載されるんだよ。

こいつの便利なところは、全国のギルドや関所で使えるのは言わずもがな、

本人が見せたくない部分をある程度までは非表示にできる機能があるってところか」

「…例として私のギルドカードを見せる」


腕に両手を絡ませたままだったシオンが片手を空け自分のギルドカードを見せてくれる。

最初は何も写らなかったのだが、シオンがカードを注視すると文字が出現した。


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<基本情報>

名前:シオン【シオン・エルナス・グランヴェール】

年齢:16

性別:女

種族:紫闇魔族【混血】


身体能力ステータス

格位レベル:118【戦人】

生命:B(6235)

精神:S(10155)

腕力:A(335)

体力:B+(251)

速力:A(323)

理力:AA(696)

抵抗:A+(489)


<属性親和性【耐性】>

地:26【軽耐性】

水:55【半減】

火:95【高耐性】

風:81【高耐性】

雷:28【軽耐性】

冷:50【半減】

光:-50【弱点】

闇:87【高耐性】

波:0

星:0


<加護>

直系勇者ブレイヴストレイン

『竜殺し』

龍脈中継者レイポインター

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「……アウグストゥス最強の名は伊達ではないのだな…

余のレベルを軽く一回り上回るとは…流石は魔王の子孫と言ったところか…」


覗き込んでいたカインはため息をついた。


「加護って何だ?」

「基本は生まれ持ってくる天からの才能という扱い。

でもここにあるように強い敵を倒したりとか、苦行を乗り越えたら得られることがある」

「加護についてはアウグストゥスにこんなうたがありますね…

『良い加護一つで幸運さ♪ 二つ持ちなら出世街道エリートコース

たくさん持ってりゃバケモノ三昧♪』という歌詞だった気がしますけど…」

「語彙の差はあれど連合王国にもそんな童謡があります」

「へぇ…」


他にもギルドカードについて色々な薀蓄うんちくを聞きながら、

ギヨームはタッチパネルに手をやる気安さでレベルチェッカーに手を置く。


「……あん…? まだ終わってねぇな…オイ、このレベルチェッカー大丈夫なのか?」


ギルドマスターがレベルチェッカーを持ってきたギルド職員を軽く睨みつける。


「えぇ?! 間違いなく一番良いのを持って来ましたよ? この水晶玉だって…」


ギルド職員も何処がどう良いのかという注釈までつけて釈明をする。


「……え、ちょ、マジで大丈夫なの?」

「あ、いやぁアンタが気にすることはねぇんですよ。

今まではカードへの書き込みは一分と掛からなかったもんですからね…ん?」


レベルチェッカー全体がぼんやりと煌いたかと思うと、勢いよくギルドマスターの

眉間目がけてシオンが見せてくれたのとほとんどデザインが変わらないギルドカードが

レベルチェッカーから発射される。


「ぬをぉ?!」


と言いつつもナイスキャッチなギルドマスター。そしてギルド職員をガチで睨む。


「ちゃんと魔術構文コードも確認したんだろうなァ…?」

「か、勘弁してくださいよ…」


困った顔のギルド職員を見ていたら、ギヨームは新入社員時代かなりむかし

思い出してしまって、何だか切なくなった。


「ちっとばかしお手数をお掛けしやしたが…これでアンタのギルドカードが完成したぜ。

本来なら登録料とか発行手数料とか頂くんだが、

要塞卿のアンタからは流石に受け取れねぇ。まぁ紛失なくした時の再発行は別だがな」


軽く笑いながらギヨームはギルドマスターからカードを受け取る。

無料で頂けたのは食客と言うことで何気に良い待遇を受けていたため、

未だ自由に使える現地通貨を持っていないギヨームとしては有難かった。


「ちなみに再発行の手数料ってお幾ら…?」

「アウグストゥス金貨なら一枚、ドゥルーシ帝国紙幣だと十万マルーブルク札二枚」

「基準がわからん…」

「アウグストゥス兵士の給料一か月分を吹き飛ばして余裕でお釣りが来ますよ」

「マジか」


給料一か月分と聞くと、昔味わってしまったギャンブル大失敗を思い出して

手のひらに汗をかいてカードを落っことしそうになるギヨーム。


「さて、それではギヨームよ。貴様の能力を拝ませてもらおうか」

「えぇー…」

「それは私も気になります」

「ギヨーム様の力の一端…興味が無いと言えばウソですね」

「当然カードを見せた私も見る権利がある」

「わかったからちょっと離れてくれ…みんな近付き過ぎ…」


辟易しているように見えて、内心異世界でのステータス表示が気になるギヨームは

ちょっとだけワクワクしながら自分のカードを注視した。


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<基本情報>

名前:ギヨーム【浪岡浄司】

年齢:27

性別:男

種族:人間【異界】


身体能力ステータス

格位レベル:2567【準邪神】

生命:OD(10234378)

精神:Ur(5242099)

腕力:Ex(1538790)

体力:Ex(1229821)

速力:S+(2562390)

理力:S+(696787)

抵抗:S+(530008)


<属性親和性【耐性】>

地:256【二種無効化】

水:97【高耐性】

火:10247【神大不可侵】

風:512【一種無効化】

雷:528【一種無効化】

冷:10256【神大不可侵】

光:128【三種無効化】

闇:1025【高次無効化】

波:25【軽耐性】

星:10【微耐性】


<加護>

殺虫王者インセクトマッシャー

真捕食者トゥループレデター

大量鬼葬オーガスレイター

万魔狩猟デビルズハンター

大軍竜滅ドラゴンバスター

龍撃滅者ワームスマッシャー

神格殴打デイチーダ

『森羅万象絶滅者』

『世界突破者』

『精霊の朋友』

『異界神が観てる』

『技術鍛錬+8515』

『廃人』


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「「「「……………………………………………………………」」」」

「………あれ?」


ギヨームのカードを覗き込んだカイン、アルテナ、シオン、シュリール。

四人全員がフリーズしたかの如く止まっているように見える。


「もしもーし」

「「「「……………………………………………………………」」」」

「おーい…? たかが一星団征伐大隊の部隊長だぞー…?」

「た、多寡が…? 貴様の能力を以ってして多寡がと言うのならば…

余 は ゴ ミ 以 下 で は な い か !」


ハッとしてギヨームの胸ぐらを掴んだカインだったが、

彼の顎が揺れたかと思うや否や直ぐに腰を抜かした。


「え? ちょ、カインさん…? どうしたんだよ…?」

「ギヨーム様。無意識にCQCが入っていますよ」

「………………………………………………………………………………………………あ、やべ…」


トリスの一言から自分とカインを見比べて数秒、

ギヨームは人に当て身を食らわせた後と思われるフォームになっていたことを理解した。

しかもさりげなくストレージに戻したはずの電光剣ビームソードも抜いていたのだ。


「本当にギヨームさんの突発的な動きは驚かされるわね…」

肯定スィ。何らかの事故を危惧する故に監視を継続している」

「……以後、気を付けるわ」


気を付けるとか言いながらも内心

「良かった体はちゃんと覚えてた…」とガッツポーズしているギヨームだった。


「シオン様の『竜殺し』はわかるのですが…ギヨーム様の『大軍竜滅ドラゴンバスター

とは一体…?」

「あぁコレ…? 多分…多分なんだけど今までドラゴンを…そうだなぁ…

大体一万頭くらいぶっ殺したからじゃないかな?」

「正確には一万と三百七十八頭ですね。先日もノースジャックでアルク様と掃討いたしました

ワイバーンと判別されるモノを含めると、六万と七千六十九頭となります」


…ざわ…ざわ……ざわ…


「なるほど…! では『神格殴打デイチーダ』という加護は…」

「止せノースジャック女王! それ以上は余の神経回路がブリッツして死ぬ!」


気絶から復活したカインが飛び起きつつアルテナの肩を掴んで叫ぶ。


「あ」

「もう一回カインさん気絶させとく?」


「ぐぁ抜かったつい喋っゲフォ?!」と言い終える前にカインに

今度は普通に当て身をぶち込んで黙らせ、担ぎ上げたギヨームは


「今日見聞きしたことは忘れてくれよ?」


と全員に営業スマイルで語ったのち、そそくさとギルドを後にした。

何気にこのエピソードが弾き語りの吟遊詩人なら誰でも一回は必ず

飯のタネに使いまわす定番の話になったと聞いたとき、

ギヨームは鼻からビールを噴射するのだが、それはまた別の話だ。


ミッション7に続く


更新遅くて申し訳ないです…。ネット環境が復活さえすれば…!

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