救出作戦-3
グルジア 地図に載っていない基地 6月10日 1110時
コーベンたちが脱出を図る直前、傭兵部隊の戦闘機が目的の基地に辿り着いたのだ。だが、そこでは中央カフカス連合空軍の戦闘機が空中哨戒を行っており、すぐに排除する必要があった。
「FOX1!FOX1!」
佐藤はAIM-120を発射してロックオンしたミグの排除にかかる。ミサイルの直撃を受けたファルクラムは真っ逆さまに地面を目指し、丁度、コーベンたちが閉じ込められている独房の真上に墜落したのだ。だが、機体を失って黙っている敵では無かった。すぐにF-15のコックピットに警報が鳴り響く。
「クソッ!ミサイルだ!」
佐藤はイーグルのアフターバーナーを全開にして、ほぼ垂直に上昇させ、9000フィートまで一気に駆け上がってから機体を反転させた。だが、ミサイルはぴったりとついてくる。
バレルロール機動をとりながら降下していき、エンジンの推力を絞りながらフレアをばら撒いた。今度は、しつこいミサイルも騙されたようだ。
コルチャックも敵機から追われていた。後ろからクフィルかミラージュと思しき機体が追ってくる。だが、彼は慌てなかった。レーダー警報機が未だに鳴っていないのだ。こいつは、撃墜することを楽しむタイプの奴だな、と彼は思った。もう、ミサイルを発射してきてもおかしくない距離なのに、未だに撃ってくるどころか、ロックオンしてくる気配もない。そこで、左右に機体を大きく振ってから、右に旋回させて反応を見てみた。敵機はリード・パシュートで追ってくる。そこで、コルチャックは敵の意図がハッキリと見えた。こいつは俺のことを、どうしてガンキルしたいらしい。だが、そんな余計な遊びは空戦においては命取りになることを教えてやろう!
コルチャックは少しだけエンジンの推力を絞って、わざとクフィルに接近させた。やがて、タイミングを見計らうと、一気に操縦桿を後ろに倒し、機首を垂直に近い角度まで持ち上げた。プガチョフ・コブラ。クフィルのパイロットには突然、フランカーが目の前から消えたかのように見えたため、彼は慌てて周囲を見渡して、さっきまで追いかけていた敵機を探した。そして、いきなり激しい衝撃を感じた。
コルチャックはHUDにクフィルの姿がいっぱいに広がるのが見えた。機関砲の引金を絞る。クフィルはエンジン排気口と垂直尾翼、主翼後端部を破壊された。アフターバーナーの炎がすぐに消えたので、エンジンを破壊したのだと、彼にはすぐにわかった。そして、落ちているクフィルを追い越して行く時に、視界の端で人間を吊ったパラシュートが開くのが一瞬、見えた。
グルジア 地図に載っていない基地 6月10日 1119時
コーベンは武器を持って、敵に見つからないように物陰に隠れながら仲間を先導した。目指すは格納庫にあると考えられるC-17だ。燃料は抜かれているだろうが、原型をとどめている限り、彼の頭には愛機を見捨てて逃げ出すなんていう考えは無かった。上空では、多くの戦闘機が飛び回っている音がする。一歩、踏み出した時、バタバタという音が聞こえてきた。ヘリらしい。だが、敵なのか味方なのかはわからない。仲間に"隠れろ"と合図をすると、すぐ近くの管制室が吹き飛ばされた管制塔の中に隠れた。
CV-22オスプレイが基地のエプロンに着陸した。幸いにも、対空兵器は全て排除されているようだ。すぐ上では、AH-64Dが獲物を探すジガバチのようにホバリングして警戒している。ベングリオンは地面を見回しながら、脅威になりそうなものを探す。オスプレイを破壊しようとする輩は、忽ちその30mm機関砲の餌食になってしまうだろう。オスプレイのキャビンからは完全武装のロス、バーク、クラークが降りてきて、囚われているはずの仲間を探しに向かった。
ロスは手に持ったM320グレネードランチャーを取り付けたHK416の銃口をあちこちに向けながら敵地を走る。格納庫や事務所など、建物の中を重点的に捜索した。やがて、3番めに入った大きな格納庫の中に、探していたものを見つけた。C-17だ。
「ゴッドアイ、ゴッドアイ。こちら"サソリ"。"ビッグバード"を確認。繰り返す。"ビッグバード"を確認。場所は・・・・」
一方、コーベンらはこの基地で囚われていた、アゼルバイジャン人やアルメニア人の一般市民や兵士らあわせて18人の捕虜を連れて脱出しようとしていた。彼らは地下の独房に監禁されていたのだ。収監されていたのは21人だったが、3人は衰弱が原因なのか、既に死んでいた。
「飛行機を探すぞ!片っ端からでかい格納庫を覗き見しろ!」
グラントが大声で指示を出す。格納庫の中を見る・・・無い!隣は?どうだ?無い!そして、その隣の格納庫は・・・・。
「よお、ここで何をしてるんだ?」
格納庫の中にいたのはなんと、ジャック・ロスだった。
「ジャック・・・・?それはこっちの・・・」
「探しものはあれかい?」
ロスは自分の後ろにある大きな飛行機を指さした。ロン・クラークが既にC-17に給油を開始していて、バークはコックピットの点検をしていた。




