ミサイル・ハンティング-8
グルジア某所 地上部隊 6月7日 2001時
ロスたちはミサイルランチャーを発見した。よく調べてみたところR-17。いわゆる"スカッドB"だった。既にランチャーの近くにいた敵兵は鉛詰めになって転がっている。排除は簡単だった。敵兵は気づいた時には、頭に鉛弾を撃ち込まれていた。
「ぼーっとし過ぎだ。馬鹿め」
バークは転がった死体に向かって言った。斃した敵はロシア系の人間のようだ。持っていた武器はAK-74。
「弾頭は通常弾頭だな。これなら爆破しても問題は無さそうだ」
ロスは弾頭部分をドライバーで開けて、中身を確認していた。中には1000ポンドの通常の高性能爆薬弾頭が入っている。熱核弾頭や生物化学弾頭に比べたら爆発時の被害は少ないが、それでも使われた場合の破壊力は抜群である。
「こいつを使おう。リモコンで爆破する」
ロン・クラークはセムテックスと起爆装置を取り出した。
「取り掛かるぞ」
ランチャーとミサイル本体に丹念にプラスチック爆薬と導爆線や信管を仕掛けていく。液体燃料が入っていて誘爆が期待できるため、それほど多く仕掛けずに済みそうだ。
「爆発物に詳しい奴がいれば、弾頭にリード線を繋いで手持ちの爆薬が無くても吹っ飛ばせるんだろうが、俺らは素人だからな・・・」
クラークがぼやきながら爆弾の用意をしていた。
「それをやるのに、どれだけの爆破技術が必要だか・・・・」
ロスはセムテックスをミサイルの燃料タンクのすぐ真下に丹念に貼り付けて、信管を差し込んでリード線を繋いだ。
「完了したぜ。後はこいつを繋いで・・・・」
ロスは15本のリード線を遠隔起爆装置に繋いだ。これは高価な専用のものでなく、プリペイド式の携帯電話を利用したものだった。こっちのほうが格段に安上がりである。
『まだ終わらんのか?そろそろ帰ってきてくれ』
前哨補給地点で待機していたオスプレイに乗ったブリッグズが無線でせっつく。
「もう終わるぞ。あと15分で予定の地点に着く」
『了解。15分だな』
「完了だ。ずらかるぞ」
ロスは起爆装置としてリモコンとタイマーをセットした。これならば、例えリモコンからの信号が届かなくても、あと35分で爆発する。しかも、解除妨害装置も仕掛けたため、何かが下手に信管に触れた途端、すぐに爆発するようにしてある。
グルジア某所 6月7日 2018時
オスプレイやチヌークが林の近くにある開けた原っぱに着陸した。上空ではアパッチやコブラがホバリングして敵の攻撃に備えている。
「早かったな。かなり時間がかかると思っていたが」
ジェームズ・ルークが戻ってきたロスたちに話しかけた。すぐ近くでは、UH-60やMi-8がローターを回したまま着陸して、傭兵たちを回収している。
「ようし、3人ともいるな。爆発までの時間は?」
「あと15分くらいだな。まあ、上空に全機上がったのを確認したら、すぐにリモコンで爆破するさ」
「なるほど。制空権はこっちのものだからさっさと帰ろう。敵機に追いかけられるのはゴメンだからな」
グルジア上空 6月7日 2021時
「制空権は完全に確保。ターゲット破壊準備完了。離脱する」
地上部隊を回収したチヌークやブラックホークが次々と離陸する。そのキャビンの中では、傭兵たちが次々と爆破装置のリモコンのスイッチを押した。
地上では次々とスカッド、ムスダン、アル・フセインといった弾道ミサイルのランチャーが爆発した。これによって中央カフカス連合のミサイル攻撃能力が殆ど無くなり、周辺国に長距離攻撃を仕掛けるのが難しくなった。




