ミサイル・ハンティング-7
グルジア上空 6月7日 1949時
空中給油を終えた3機の戦闘機がウェッジテイルの周りで護衛編隊を組む。F-15Cが先導し、MiG-29とSu-27が最も危険な後方を固めている。AEWやAWACSは高価値目標なので、簡単に失うような事があってはならない。制空権はほぼこっちのものだが、油断大敵だ。
「"ウォーバード1"より、"ウォーバード4"および"ウォーバード5"へ。残弾を知らせろ、こちらはAMRAAM4発、サイドワインダー4発」
『こちら"ウォーバード4"。R-27が3発、R-73が2発、R-74が4発』
『"ウォーバード5"。R-27は4発、R-73を4発、R-74を2発』
「十分過ぎるくらいだな。これならば敵機が出てきても十分だ」
戦闘機乗りたちは、周囲を警戒しながらも、リラックスした様子で護衛飛行を開始した。
一方、対地攻撃を任された部隊はそうもいかなかった。地上部隊は突然現れた中央カフカス連邦軍の機甲部隊の攻撃に晒された。
「畜生!BMPやら戦車やらがこっちに突進してくる!対戦車ミサイルを!」
アゼルバイジャン軍の大尉が叫ぶ。
「最後の1発だ!」
傭兵がFGM-148ジャベリンのランチャーを構える。ミサイルは真っ直ぐ飛んで行くと、T-72にぶつかって沈黙させた。
「やっているな。どんな状況だ?」
ジャック・ロスが仲間を連れて混戦の中にやって来た。手には"ハンマー"と呼ばれるレーザー・デジグネーターを持っている。
「4キロメートル先にスカッドを見つけて無力化しようとしたが、敵の機甲部隊が護衛に付いていて近づけない!あの陸橋の先だ!戦車や装甲車が仁王立ちして、完全に塞がれてしまっている!」
T-80UとBMP-3が橋の向こう側で隊列を組んでいるのが見える。これでは、突破するのは難しそうだ。
「ちょっと待ってな。"ゴッドアイ"こちら"サソリ"。敵を航空機に排除させてくれ!座標は・・・・」
「こいつか。これでは文字通り立ち往生してしまうな。近くに攻撃機は?」
スタンリーが原田に尋ねる。
「目標地点まで8分の所に"スカイハンマーズ"の攻撃機がいます。支援を要請しますか?」
「やってみてくれ。このままでは任務を達成できない」
原田は上空を飛んでいる傭兵軍のAC-130Uのパイロットに繋いだ。
「了解だ、お嬢ちゃん。で、どこを攻撃すればいい?」
AC-130Uの機内ではようやく出番が来たと言わんばかりに、クルーたちは盛り上がっていた。
『ゴルフ・ブラヴォー・0・9です。繰り返します、ゴルフ・ブラヴォー・0・9です。その北側に味方がいるので、くれぐれも撃たないようにお願いします』
「任せときな。ようし、野郎ども!仕事だ!」
グルジア上空 "スカイハンマー01" 6月7日 1951時
「見つけた。君らはどの辺りだ?」
ガンシップのクルーが訊く。
『待ってくれ。赤外線フラッシュを焚く。そこが標的だ。繰り返す。赤外線フラッシュが光っている所が敵だ!』
「了解だ。少し待ってくれ」
グルジア 地上部隊 6月7日 1952時
ロスは赤外線フラッシュを思いっきり放り投げた。相当距離が離れてはいたが、四角いプラスチック製品は上手いこと敵のBMP-1の砲塔の上に乗った。
「やったぞ。早い所ブチかましてくれ」
グルジア上空 "スカイハンマー01" 6月7日 1952時
「確認した。105mmと40mmで撃つ」
AC-130Uのガンナーは赤外線フラッシュの位置を確認した。
「兵装システム異常なし。安全装置解除、残弾数確認。ターゲットの位置を確認、おい、今の旋回のままでいろよ」
彼はパイロットに注文を付ける
「任せといて。ちゃんと狙えるように飛ぶから、その代わりちゃんと畑を耕すのよ」
「わかっているさ・・・ようし、ブチかませ!」
グルジア 地上部隊 6月7日 1953時
敵の銃撃が激しく、進むどころか頭を上げることすらままならない。ノルマンディーに上陸する70数年前のアメリカ兵もきっとこんな状態であっただろう。傭兵たちは地面に這いつくばり、完全に釘付けにされていた。やがて、そのうちの一人の肩から上が消し飛んだ。だが、突然、凄まじい爆発とともに敵の車両や兵士が吹き飛んだ。さらなる攻撃が中央カフカス連邦軍を襲う。
「やったぞ!もっとやれ!」
『レーザーで敵の位置をマークしてくれ。だいたいでいい』
無線からさらなる声が聞こえてきた。
「任せとけ、ちょっと待ってろ」
ロン・クラークがレーザー・デジグネーターで敵のBTRの車列を指示した。暫くすると、金属音混じりの飛行機のエンジン音が聞こえてきた。
「"バイソン1"、敵を攻撃する」
『2了解。あの装甲車だな』
『そうだ』
傭兵部隊のA-10Aが高速・低空で飛んできた。この攻撃機は何度もアメリカ空軍から全機退役の危機に晒されてきたものの、しぶとく生き残っている。しかし、冷戦期に比べて配備数が減らされたことは確かで、削減された分はPMCがその多くを引き取ったのだ。
A-10は30ミリのアヴェンジャー機関砲を発射した。巨大な劣化ウラン弾が敵の装甲車の天井を穴だらけにする。
攻撃機は反転して、ターゲットの生き残りを撃ってから飛び去っていった。
「こちら"バイソン1"、敵の脅威を排除。繰り返す。敵の脅威を排除した」




