エクササイズ・ディエゴ-3
インド上空 4月17日 1003時
佐藤、ヒラタ、コガワは空中給油の訓練に入っていた。"ウォーバーズ"はアメリカでモスボールされていたKC-135Eを6機導入しているものの、人員の関係で一度に使えるのは1機までになっている。
『あと2マイル、エンジンパワー絞れ』
給油オペレーターのシャルル・ユベールが佐藤のF-15を誘導した。
『ちょっと右・・・・行き過ぎだ。左にほんの少し戻せ・・・・そこだ。そのままで』
F-15の機体左側の給油口にフライングブームが接続され、燃料が流し込まれる。
「一度に1機までとは辛いな。まーあ、フライングブームだから仕方がないか」佐藤が言う。
『ハリアーやF-35Bならベクタースラストが付いているから2機同時でも大丈夫じゃないのか?』とヒラタ。
「だな」
プローブアンドドローグ式でたまに行われる2機同時空中給油は、2機の戦闘機またはヘリ、給油母機の絶妙な編隊維持能力が必要なため、かなり難易度の高い技だ。
佐藤は燃料計を確認するとブーマーに親指を立てて合図して(それが見えるくらい戦闘機は給油機に接近する)、その場から離れた。
右隣を見ると、KC-135の翼端のポッドから流されているドローグからコガワのホーネットが給油を受けているところだった。
佐藤はF-16に乗ったヒラタにその場を譲ると、僚機が給油を完了するまでその場で待機した。
『こちら"ウォーバード2"、給油完了。離脱する』
この言葉を合図に3機は再び編隊を組んで飛び去った。