バツミ空爆-3
バツミ空港 5月24日 0907時
生き残っていたZSU-23-4やSA-11等がRPGの弾頭を受けて爆発し、屑鉄となった。歩兵部隊の任務はテロリストの攻撃能力を奪い、さらには情報を手に入れることだ。事務所にロス、バーク、クラークの3人が突入し、書類やCD-ROM、パソコン、USBメモリなどの押収を始めた。アゼルバイジャン陸軍特殊部隊の大尉も資料を回収し、敵の正体、規模、戦力を調べるための証拠物件とした。
「何かありそうか?」クラークが聞いた。
「いちいち一つ一つ調べている時間はありません。全部持って帰って、あとでまとめて分析してもらうしかなさそうだ。とりあえず、全部かっさらおう」大尉はクラークの持っているダフルバッグを開けると、書類もディスクもパソコンもまとめて投げ入れて始めた。
OH-58DがAH-64DとEC-665の編隊を引き連れるようにして飛んできた。カイオワは"デス・スパロー"、タイガーは"グリーンアナコンダ"というPMCの所属だ。
「どうやら対空兵器は死んだらしいな。一機に制圧しよう」ツァハレムが地面を見まわした。
「とはいえ、生きている敵らしきものがほとんどないぞ。そっちはどうだ?」
ベングリオンはタイガーヘリに乗っているマンフレート・シュナイダーという傭兵に無線で訊いた。
『無いね。暗視、赤外線、目視で探したが、敵らしきものは見当たらない。赤外線スティックを持っているのは全部味方だろ?』
「ああ」
『なら、多分、敵さんは全滅だ。撤収しよう』
CV-22やKa-62、S-70が荒れた飛行場に向かってアプローチを開始した。地上部隊の回収を終えると、上空で待機していた攻撃ヘリの援護を受けながら撤収を開始した。
『なにか手がかりはあったか?グラントがどこに連れていかれたかわかるようなものはあったか?』
スタンリーは部隊が撤収を開始するやいなや、無線でブリッグズに呼びかけた。
「待ってください。まだ資料を見てもいないのですから・・・・おい、ジャック、何か分かったか?」
「おいおい、勘弁してくれ!確かにキリル文字は勉強したが、スラスラ読めるレベルじゃないし、どれが何の資料なのかも滅茶苦茶だし、暗号みたいな書き方をしているのもある。それに、奴らが捕虜に関することをいちいち文章にするとは思えんぞ。持って帰って、分析に回した方が早い!」
キャビンで書類と格闘しているロスが怒鳴り返す。ブリッグズは再び無線のスイッチを入れた。
「分析員が必要です。どれも暗号のようで、素人に解読できるとは思えません」
『ううむ。そうか、すまなかった』
傭兵部隊のトーネード2機が低空飛行して、バツミの被害状況の確認を始めた。滑走路と誘導路は穴だらけでレーダーはへし折れ、格納庫は潰れ、外に置いてあった飛行機や車両は全て炎上している。完全な復旧には数か月はかかるだろう。テロリストはもとより、グルジア政府がここまでされて沈黙し続けることは無いだろうとこの攻撃に関わった者全員が考えた。しかし、その考えは大きな間違いだった。




