エクササイズ・ディエゴ-2
インド洋上空 4月17日 0941時
一方、コルチャックとカジンスキーは別の標的を目指していた。
「昨日まで模擬爆撃の訓練をしていた甲斐がありそうだなニコライ」
『そっちはどうだオレグ?』
「機体の調子はいいようだ。今回はいい成績を上げられそうだ」
『こちらロス。標的は明らかか?』
ボートで観測している地上部隊のジャック・ロスの声が無線から聞こえた。
『こちら"ウォーバード5"。そっちが座標を送ってレーザーで照らしてくれたら粉々にしてやるよ』
インド洋上空 ディエゴガルシア島より南約250kmの岩礁 0956時
標的から10km程離れたところに停泊している高速艇には地上管制員であるジャック・ロス、ロン・クラーク、デヴィッド・バークが双眼鏡で演習の様子を観測していた。彼らの役目は、地上標的の選定、照準、攻撃機の誘導と攻撃後の評価だ。
「さてさて、こいつで照らしてやるとするか」
クラークはレーザー照準器を岩礁に打ち上げられている錆びた漁船に向けた。
「まーあ。いつもの事だ。外しはしまい」とロスが呑気そうに言う。
暫くすると低空飛行する戦闘機の轟音が聞こえ、彼らの頭上を通り過ぎるとKAB-500を投下して行った。
「あと3秒・・・2・・・1・・・爆発!」
爆弾が炸裂し、辺りが煙に包まれた。やがて煙が晴れると、真っ二つになって炎上する漁船が見えてきた。
「こちらクラーク、直撃だ。成績表にはAを付けておくよ」
『こちら"ウォーバード4"、辛口だねー。さっきのは完璧にAプラスだと思ったのに』
「こちらロス、まだ終わってないぞ。つぎの標的を指示するまで待機せよ」
これに対してニコライはジッパーコマンドで答えた。
「さて、こっちも移動しよう。奴らの方が速いから、きっと次のターゲットに着くころには火の海になってるぞ」
ロスはボートのエンジンをかけるとフルスロットルで事前に指定された海域へと向かった。