エクササイズ・ディエゴ-1
インド洋 ディエゴガルシア島 4月17日 0930時
アフターバーナーの轟音を轟かせ、F-15Cが飛び上がる。佐藤は両方のエンジンをフルスロットルで吹かして先に上がっているヒラタのファルコンとコガワのホーネットに追いつこうとした。演習の目的は空対空戦闘訓練と模擬対地攻撃。と言っても、戦闘機同士の模擬戦ではなく、実弾を利用し無人標的機を撃墜したり、地上の標的を撃つ実射訓練だ。今回の演習は佐藤が空対空戦闘を、ヒラタ、コガワ、カジンスキーとコルチャックが空対地攻撃を訓練する事になっていた。
「こちら"ウォーバード1"、訓練空域にマッハ1.2で向かう。全員、作戦の目的は明らかか?」
"ブチッブチッ"コガワとヒラタがジッパーコマンドで応えた。
「よし。全部撃ち落とすぞ」
佐藤はイーグルの翼を振って僚機についてくるように指示した。
インド洋上空 4月17日 0934時
そこから200マイル程離れた場所にはE-737が巡航し、レーダーで演習の様子を管制していた。
「いつも通りやってるな。だが、この間とやはり動きを変えている」レーダースコープを見ているスタンリーが言った。
「佐藤が上空を警戒している間にヒラタとコガワが爆撃する、というやり口だからな。合理的だが、少し単調な気もするが」
「まあ、二日間休んだから疲れは取れているんじゃないですか?」
リー・ミンが答える
「そうだな。さて、始まったようだぞ」
佐藤はレーダーで無人標的機を捕えた。このF-15CにはフェーズドアレイレーダーのAN/APG-63(v)3が搭載されており、複数目標同時追尾・処理能力が向上している。しかし、コックピットはアナログ式であることは変わりがないためヒラタのF-16CJやコガワのF/A-18Cのグラスコックピットと比べたら、情報処理能力は及ばないものの、この戦闘機は空対空の戦闘のみを想定した設計のため、それほど影響は無い。佐藤は2つの標的をロックオンし、AIM-120AMRAAMを発射した。このミサイルは一度ロックオンすると、あとは勝手に敵機へ飛んで撃墜してくれるため撃った後すぐに回避行動に移れる利点がある。AMRAAMはあっという間に標的であるQF-8Aに追いつき、破壊した。
「こちら"ウォーバード1"、敵機撃墜。空域は安全。爆撃せよ」
「"ウォーバード2"了解」
ヒラタが答え、地上の標的を破壊すべく急降下した。
地上の標的は廃棄された装甲車や戦車だ。
「あと5秒・・・3,2,1投下!」
ヒラタはCBU-87を2つ、投下した。爆弾の外殻が割れ、中から数十個の子爆弾がばら撒かれ、地上で炸裂した。F-16は機首を持ち上げ、アフターバーナーを蒸かしながら上昇した。これは、通常は敵の対空砲火を避けるための機動だ。一方、コガワはAGM-84Eでコンクリートの建物を狙った。このミサイルはハープーン対艦ミサイルを対地攻撃用に改造したもので、射程が長く、破壊力も十分だ。SLAMと呼ばれるこのミサイルは、発射された後、急加速し、建物に突っ込んで破壊した。
「こちら"ウォーバード3"。第一目標破壊。次に移る」
3機の戦闘機は上昇しながら加速し、第2の標的に向かった。