ザカラタ=バカラン奪還戦-2
アゼルバイジャン ザカラタ上空 山岳地帯 5月19日 0552時
傭兵部隊のCV-22とCH-47、Ka-62が荒れた山に着陸し、歩兵部隊を降ろした。彼らの装備はAK-47からG-36Kまで様々だ。アゼルバイジャン陸軍正規兵と傭兵、PMCのオペレーター、さらには世界各地からやってきた義勇兵という、なんともちぐはぐな編成であるが、訓練は十分受けており、士気も高い。
「まずは対空ミサイルを持った奴らを殺す。見つけ次第、ぶっ殺せ!」傭兵の一人が言った。いくつかのスナイパーチームが部隊から離脱し、隠れた。
「こちら"マムシ"、"ハヤブサ"対空部隊の位置は?」
「こちら"ハヤブサ"そちらが降りた山から2km程西側だ。そろそろまずい」
「了解。攻撃を開始する」
歩兵たちは120mmから81mmまでの様々な迫撃砲を展開し、砲撃を開始した。ポンポンと軽い音を立てて砲弾が飛んでいく。砲弾は敵の部隊に雨あられと降り注ぐ。破片が歩兵の腕を引きちぎり、腸を抉り出した。
アゼルバイジャン陸軍の車両部隊がザカラタへ進軍していた。前方の敵地上部隊は傭兵部隊のシュペルエタンダールやハリアーが排除していた。
「ようし、このまま行くぞ。ここを突っ走ってザカラタを奪還するぞ」
先頭を行く指揮官の中佐は意気込んでいた。今までやられっ放しだったが、ようやく反撃の機会が巡ってきたのだ。
「やってやりましょう、中佐。奴らを地獄に送ってやりますよ」
「その意気だ。我慢するな。ロシア人かアルメニア人か知らんが、奴らを皆殺しにしてやれ!」
しかし、そんな彼らを狙っている敵がいた。Su-25フロッグフット攻撃機が3機、接近していたのだ。爆弾、ロケットポッド、機関砲を満載し、地上部隊を叩きのめそうとしている。
「砂漠の西側にいる味方歩兵部隊に敵攻撃機らしき機体が接近しています。3機です。このままではまずいです」
戦場からやや離れた所の上空にいるE-737が敵機を発見し、原田がスタンリーに報告した。
「連中、そんなものまで持っているのか。佐藤たちをそっちに向かわせろ」
「"ゴッドアイ"より"ウォーバード1"へ。敵機がエリアチャーリー・エコーにいる味方地上部隊に接近中。援護せよ」
リー・ミンが佐藤に指示した。
「こちら"ウォーバード1"了解。4、5目的は明らかか?」
「4了解」
「5了解、敵機を排除する」コルチャックとカジンスキーが答える。3機の戦闘機が方向を転換し、敵機へと向かった。
テロリストのSu-25は高速で戦車部隊に向かっていた。この攻撃機の見た目はお世辞にもあまり格好よくは無く、レーダーも装備されていない上にエンジンにアフターバーナーも無いため超音速飛行はできないがそれには理由がある。低速で飛び回り、地上部隊に適切な近接航空支援を行うために、必然的にこのような仕様になったのだ。コックピットまわりは敵の対空砲火からパイロットを守るために強固な装甲が施されている。別名"シュトルモビク"ともいうこの攻撃機はアフガン内戦などで使用され、地上部隊にとっては大きな脅威となっている。
「見つけた!"ウォーバード3"、Fox2!Fox2!」
コルチャックはAA-10ともR-27ETとも呼ばれるミサイルを2発ずつ発射した。このミサイルは中射程ながら赤外線誘導という不思議な仕様となっている。IRH-AAMの利点はミサイル警報装置を搭載していないと(レーダー警報装置には認識されないことが多い)接近に気づかない場合も多い。旧型のSu-25にもちろんそんなものが搭載されている訳は無く、パイロットは命中してから初めて気が付いた。一人は命中してから緊急脱出したが、もう一人にはそのチャンスは無かった。3機目のSu-25は慌てて逃げ出そうとしたが、後ろから接近してきたF-15Cから機銃弾を浴びせられて燃料系統をいくつか破損したため、離脱せざるを得なくなった。




