到着
アゼルバイジャン サンガチャルイ基地 5月17日 1743時
アゼルバイジャンに"ウォーバーズ"の部隊が次々と到着した。場所はパーシキンらが守ったサンガチャルイだ。最初にF-16とF/A-18が地上の安全を確認した後、MV-22で地上部隊を下した。次に着陸したのはE-737だ。戦闘機が次々着陸し、最後にC-17とKC-135が降りてきた。"ウォーバーズ"は機体を予め用意されていたハンガーに仕舞い込むと、簡単にデブリーフィングを行った。
「来ていただいて感謝します、ミスタースタンリー」
基地司令官のミハイル・カーメネフが直々に迎えに来たのだ。
「ここはまだ敵に攻撃されていないようですね。しかも、防御を大分固めているようで」
PAC-2やSA-11が林立し、ZSU-23-4が稼働状態でスタンバイしている。
「我々としては、もう基地を失う訳にはいきません。ここを最後の砦にするつもりです」
「これ以上、被害を拡大させる訳にはいかないですからね。あの中央カフカス連邦とやらを野放しにすると、問題は拡大する一方ですからね」
ゲオルギー・バラーノフが"建国"した国は中央カフカス連邦と名乗り、グルジア、アゼルバイジャン、アルメニアに対しておおよそ受け入れがたい数々の要求を突き付け始めていた。例えば、3か国が持つ全ての天然資源の掘削権の中央カフカス連邦への移譲、軍・警察組織の解体と全ての兵器の中央カフカス連邦へ寄こすなどといった事だ。さらに、彼らはイランやトルクメニスタンにも同様の要求を行い、受け入れられなければ空爆やミサイル攻撃を行うと脅迫すら開始している。弱体化したカスピ海沿岸国は有効な対策をなかなか打ち出せないでいたのだ。
「早速、本題に入りましょう。まずは、敵に首都への道が取られそうなので、それを奪還しようかと・・・・・・・」カーメネフはスタンリーに状況を説明し始めた。
「こいつを使えって?」
ジャック・ロスが渡されたのはタボールAR-21だった。
「ああ、そうだ。アゼルバイジャン軍が使ってる。証拠隠滅には、その国の制式小銃を使うのが一番だろ?」バークが銃を見せる。
「なるほど。何も、AKだけが擬装に最適な訳じゃないようだな」
「そういうことだ」
「おい」シモン・ツァハレムが声をかけた。
「ブリーフィングだ。早速、次の作戦で出番になりそうだ」
「まずは、奴らに占拠されているザカタラからバカランに至る道を奪還します。ここを奪えば、敵の補給路にかなりの打撃を与えることができます。実際、奴らの機甲部隊や輸送部隊が毎日通っているのを偵察隊が確認しています」情報将校の少尉が説明を開始した。
「奴らの戦力は?」ヒラタが質問した。
「戦車や自走砲、対空機関砲で守りを固めているようです。戦闘機の有無は不明ですが」
「と、なると、先に戦闘攻撃機であらかた吹き飛ばして、地上部隊で制圧するのが良さそうだな。狭いから、近接航空支援だと、味方の地上部隊を巻き込む恐れがある」
「それならヘリを使えばいい」ツァハレムが言う。
「攻撃ヘリを地上部隊の援護に使うんだ。戦車なんぞ蜂の巣にしてやる」
「地上攻撃を終えても、戦闘機にはCAPをさせる方がいい。ヘリは敵戦闘機に対して無防備になる」コルチャックが指摘する。
「これで決まりですね。やりましょう」情報将校の少尉はかなりこの作戦に乗り気なようだった。
「最終目標である、奴らのアゼルバイジャン国外への追放にはまだほど遠いが、これが最初の反撃になります。奴らに一泡吹かせてやりましょう」少尉はそう締めくくった。




