拠点
グルジア某所 4月28日 1921時
サンガチャルィを傭兵部隊が防衛した翌日、グルジアのとある飛行場にMiG-21やTu-95が密かに運び込まれた。ここは、グルジア政府の関与が無く、また、好きなだけ様々な物をプールしておくことができた-武器でも金でも何でもだ。
ゲオルギー・バラーノフは集まった武器を眺めていた。大半は旧世代の戦闘機や戦車等で、殆どがアフリカやアジアの正規軍から流れてきたものだ。
「あんた、本気でアゼルバイジャンを乗っ取れると思ってるのか?」仲間のうちの一人が言う。
「今は、企業が政府を滅ぼすことだって珍しくも無い。規模のでかいPMCの戦力を考えてみろ」
バラーノフの言う事は確かだ。シエラレオネとリベリアは貴金属の商社と手を組んだPMCによる攻撃で政権が倒れ、ダイヤモンドや金の鉱山を全て接取された上に、新政府は彼らの傀儡となっている。トリニダード・トバゴに至っては水産会社と果物商社、PMCが倒した政府に代わって国を"運営"している有様だ。
「ふむ。政府を倒してどうする気だ?」
「新しく、自分らの国を建国するのさ。まずはグルジア、アルメニア、アゼルバイジャンを統合する。次はオセチアとチェチェン、そしてイラン、トルコ」
「おいおい、本気か?イランならまだしも、トルコに手を出したらNATOが・・・・」
「いいや。本気だ。今やNATOの戦力など、たかが知れてる」
「そういえば、サンガチャルィの陥落は達成できなかったな。どうする気だ?」
「あそこは厄介だが、今の我々の戦力ではどうにもできない。先に他を攻撃しよう」
「それから、以前、近接航空支援用に改造した輸送機を撃墜した連中は?」
「どうせ義勇兵かゲリラだろう。気にすることは無い」
「だと良いのだが」
「ところで、どれだけ人数は集まっている?」
「傭兵崩れを500人程。中東や南米から雇った」
「ふむ。使えるのか?」
「NATOの軍人に比べたら劣るが、腕は確かだ」
「なるほど」バラーノフはAN-94を持つと、歩き始めた。
「この間の攻撃は失敗したが、今度こそ成功させる。そして、ここ一帯に新たに我々が建国するのだ」
「だが、向こうも傭兵を雇ったと聞いたぞ」
「面白い。我々とアゼルバイジャン政府、どっちがより優秀な傭兵を雇ったのか確かめてみようじゃないか」そう言うと、テロリストのボスは歩き去った。




