サンガチャルィ防空戦-4
アゼルバイジャン サンガチャルイ基地北270km 4月27日 1821時
ハリアーのパイロットは初め、サイドワインダーで撃墜しようと考えていた。しかし、それでは面白くない。あっさりと殺してしまうのは彼の流儀ではなかった。彼は空中での殺し合いを、敵機を追いかけるのを、敵機から追いかけられるのを心底楽しんでいた。そこで、ドッグファイトを挑み、時折30mmアデン砲でいたぶるように射撃した。それに、自分たちの目的は今のところ、達成しつつある。後続の攻撃機部隊が気づかれるまでの時間稼ぎをするという。
アゼルバイジャン サンガチャルイ基地北西140km 4月27日 1824時
F-111やSu-24、トーネードIDSといった超音速飛行ができるように設計された攻撃機が編隊を組んで飛行していた。胴体の下には滑走路破壊爆弾、対レーダーミサイル、対人/対装甲クラスター爆弾など盛りだくさんだ。護衛にはクフィルやビゲンが付き、敵の迎撃機に備えていた。
アゼルバイジャン サンガチャルイ基地 4月27日 1826時
「レーダーコンタクト!敵だ!迎撃機を上げろ!急げ!」サンガチャルィの管制官は敵機の編隊を確認すると、インターコムに怒鳴って空襲警報のスイッチを力いっぱい叩いた。
パイロットたちが銘々の愛機に走った。ミラージュⅢ、JA-37ビゲン、F-16A、MiG-29等、まるで戦闘機の見本市かと思われるほどバリエーション豊かな機体が離陸して行った。
アゼルバイジャン サンガチャルイ基地北310km 4月27日 1836時
最初にハリアーと戦っていた戦闘機のうちの1機が、ついに運を使い果たした。30mm機銃弾がコックピットに数発、侵入し、パイロットを直撃した。ヘルメットごと頭が砕け、赤色と灰色の粉末が飛び散る。「1機やられた!」ようやく先発隊に追いついたパーシキンがMiG-21のコックピットの無線で誰かがそう言ったのを聞いた。クソッ!彼は周囲を確認し、最初に接敵した戦闘機がいないかどうか見た。いた!しかし、一緒に上がっていたはずのF-5の姿が見えない。ファントムがサイドワインダーを発射する。赤外線追尾ミサイルは敵機を捕え、直撃した。ハリアーはエンジンを破壊され、真っ逆さまに墜ちて行った。やったぞ!次の瞬間、パーシキンは自分の機の前方にハリアーが突然現れ、真っ直ぐこちらに向かって来るのを見てギョッとなった。しかし、一瞬後には機関砲のトリガーを引いていた。30mm機関砲から曵光弾が飛び出し、敵機のレードームとキャノピーを砕いた。テロリストの体は腰を境に二つに分かれた。1機撃墜だ!よし。こうなったらいくらでもかかって来い。全部撃ち落としてやる!彼は口元に凶暴な笑みを浮かべて、次なる獲物を探し始めた。




