サンガチャルィ防空戦-1
アゼルバイジャン サンガチャルイ基地 4月27日 1811時
アゼルバイジャン空軍、サンガチャルィ基地。ここはかつてはパイロットの候補生の訓練基地だったが、今では傭兵部隊や義勇兵の戦闘機や対空ミサイルが並び、防空戦力の一端を担っている。国籍も民族もバラバラなこの寄せ集め部隊を、アゼルバイジャン空軍の将校や下士官がまとめている状況だ。機体の数は多いものの、ここにある戦闘機はウーラガン、ドラケン、シュペルミステールといった骨董品ばかりでスミソニアン博物館の学芸員が狂喜しそうな状況だが、こんなジェット戦闘機ではPMCが主力にしている第4~4.5世代の機体を相手に空戦を挑んだならば、忽ちBVRミサイルの餌食になってしまうだろう。なにせ、一番新しい機体で元ドイツ空軍のF-4F-ICEやSu-24といった有様で、F-104スターファイターやホーカーハンターが第三次印パ戦争以来、実に47年ぶりに戦場の空を飛ぼうとしているのだ。兵装もバラバラで旧型のサイドワインダーであるAIM-9Bや旧ソ連製のR-3まである。ここの司令官はいざ攻撃されれば、3時間も持たないことはわかっていたが、『無いよりはマシ』ということで備えていたのだ。
セルゲイ・パーシキンは自分のMiG-21にミサイルと機銃弾が整備兵の手で搭載されるのを見ていた。彼はこの基地で唯一のアゼルバイジャン正規兵パイロットで、寄せ集めのパイロットの連携を取らせる訓練にここ1週間、取り組んできた。この出身国の違うパイロットをここまでまとめるのは容易ではなかった。初めのうちは傭兵同士のいざこざも絶えなかったが、今はなんとか一つのチームとして纏まり始めたところだ。
「我々が戦う相手は何者なんですかね?隊長」ポーランド出身でSu-22に乗っている傭兵が話しかけた。
「全く正体は掴めていない。情報によると、奴らは無人機すら持っているようだ」
「ほう。パイロットが乗っていない飛行機と戦うだなんて、なんだかぞっとしないですね」
「まさにな。今はCAP に出ている飛行機はあるのか?」
「ええ。スイス人とトルコ人のコンビが。例のPMCは来てくれますかね?」
「さあな。お偉い方と当人が決めることだ。我々には口を出す権利は無いよ」
「そういうことですか。彼らが来てくれれば、心強いのですがね」
「政治家連中の交渉次第だ。まあ、期待しないで待とうではないか」




