最初の交戦
アゼルバイジャン 4月24日 1842時
ロスたちは最初の潜入地点まで戻った。コナリーはWA2000で仲間が戻って来るのを確認した。
「帰って来たぞ。あそこだ」彼はブリッグズに言った。
「全く、いつまで待たせる気だ。何かいい情報を持ってきているだろう」
ブリッグズがロスに話しかける。
「ああ、まずは脱出が最優先だ。とっととこのヤバい森から逃げ出そう」ロスはすぐにPC-12の中に入った。
小さな飛行機は攻撃を避けるためにややジグザグ気味に飛んだ。こんな状況で戦闘機や地対空ミサイル 等の攻撃を受けたら最悪の状況だ。一応、ミサイル警報装置とIRジャマー、チャフ/フレアディスペンサーが取り付けられ、戦地での使用を想定した装備はあるものの、気休め程度にしかならない。
「早くバクー近郊に行かないと。ここは戦場だ。いつ撃ち殺されてもおかしくない」
ブリッグズはエンジンのパワーを少し上げた。
「くそっ!6時方向!敵だ!」
ロスはA-29が自分たちへ向かって来るのを見た。
「何だって?」コナリーが言う。
「敵だ!A-29だ!こっちに来る!」
ディエゴガルシア島 4月24日 1912時
「どうしたんだ?何が起きた!」
スタンリーが怒鳴った。
「敵に追われているようです!」
コルチャックがヘッドホンを耳に当てて言った。
「クソッ!」
アゼルバイジャン 4月24日 1851時
「こうなったら戦うしか無いか。奴を撃ち落としてやる!」
ロスはM2重機関銃を機体後部の銃座に取り付けて、焼夷徹甲弾を装填し、ガンポートを開いた。
A-29のパイロットは、PC-12に乗っている奴らの正体は何なのか考えていた。しかし、もうどうでも良いことだ。彼は機銃の引き金を引いた。
曳光弾がPC-12のすぐ隣を飛び去った。
「クソッ、クソッ!撃ってきやがった!あいつ、機銃を積んでやがる!」コナリーが考えられる限りの悪口や罵り言葉をばら撒いた。
「おい、ジャック!早くあいつを撃ち殺してくれ!」
A-29のクルーはPC-12を撃ち落とす事に集中していた。この飛行機はどうせただ逃げるしかできないのだ。反撃することはおろか、チャフやフレアも搭載していないだろう。戦場にフラフラ飛んでくるのが悪いのだ。残念だったな。自分の不運を恨みな。
ロスはM2の引き金を引いた。このM2からはサイトを取り外してある。正確な狙いよりも弾丸をばら撒くをことを主眼にしているために必要ないのだ。
敵のパイロットは、まさか小型機から反撃があるとは予期していなかった。曳光弾はコックピットのキャノピーを砕き、プロペラの一部を吹き飛ばした。彼は飛行機を上昇させて、一旦下がった。
「奴は逃げている。だが油断はできない。また追手が来るかもしれない」
ロスがコックピットに怒鳴った。
「わかった。とっととこんな所からトンズラだ」
ブリッグズは機体を旋回させ、グルジアへと向かった。




