偵察-1
アゼルバイジャン 4月24日 1811時
夕闇のアゼルバイジャン上空を1機のピラタスPC-12が飛んでいる。それには何のマークは無かったが、ロシア籍を表すレジナンバーが描いてある。PC-12は滑走路の無いまっさらな平原に向かってアプローチし、やがて着陸した。ドアが開き、中からパイロットとコパイロット、さらに迷彩服をきた兵士が3人出てきた。5人は飛行機を押して林の中に隠すと、行動を開始した。パイロットとコパイロットはヘッケラー&コッホHK416を持って、飛行機の見張りについた。兵士3人は2人がパイロットと同じ銃を持っているが、1人はワルサーWA2000という、妙に寸詰まりな銃を持っている。この5人、実は"ウォーバーズ"のメンバーである。PC-12を飛ばしていたのはロバート・ブリッグズとイアン・コナリー、兵士はジャック・ロス、デヴィッド・バーグ、ロン・クラークだ。彼らは情報収集のためにこっそりと潜入偵察を開始したのだ。ロスは衛星無線機のスイッチを入れて本部へと連絡した。
「イーグルネスト、イーグルネスト。こちらスパロー。潜入成功」
「了解、スパロー。行動を開始せよ」
ディエゴガルシア島 4月24日 1843時
ディエゴガルシア島の基地では、アラート要員を除くほぼ全員がオペレーションルームに集まっていた。
「どうだ?」スタンリーが聞いた。
「順調です。地元民や民兵、兵士などとの接触は無し。このまま作戦を続行します」
「了解。スパロー、まずい事になりそうなら、即座に作戦は中断。撤収すること。以上」
「了解。イーグルネスト。まずは無人機を飛ばしてみます」
ロン・クラークは大きなバッグパックからWASPという無人機を取り出して組み立てた。この魚雷のようなイスラエル製の無人機は使い捨てタイプで、長方形の迫撃砲のようなランチャーから射出して、タブレットで操作できる。WASPは圧搾空気の力でランチャーボックスから飛び出して、黄昏の中に消えていった。まるでミサイルだ、とその様子を見ていたバーグは思った。




