密使-2
インド洋上空 4月20日 2156時
「こちらウォーバード1、国籍不明機 の方角は?」
『北西から来ています。方位346、マッハ0.7、高度エンジェル12。マッハ1.3くらいで向かってください』
「了解。目視で確認するが、敵対行動があった場合は撃墜する。ニコライ、明らかか?」
コルチャックは無線のスイッチを2回いじった。暫く飛ぶと、レーダーに反応があった。
「レーダーコンタクト。今のところ、向こうからのレーダー照射などは無い」佐藤が報告した。
『了解。向こうから照射が無い限り、武器の使用は禁止する。まずは目視で確認せよ』
スタンリーが指示を出した。暫く飛んでいると、相手の正体が見えてきた。
「ビジュアルコンタクト!国籍不明機はガルフストリームG550だ。繰り返す、ボギーはガルフストリーム!」
ディエゴガルシア島基地管制塔 4月20日 2158時
「何ですか?もう一回言ってください」
ミュラーが佐藤に尋ねた。
『奴は戦闘機じゃない。ビズジェットだ!ただ、ここに向かっていることは確かだ。指示を待つ』
「どうした?」スタンリーが言う。
「どうやら非武装の民間機だそうです。ただ、こちらに向かってきているのは確かだそうです」
「国際緊急周波数で呼びかけさせてみろ」
『了解です。GUARDで呼びかけます』
インド洋上空 4月20日 2202時
「あーあー、そちらは飛行禁止空域に侵入しつつある。目的と所属を明らかにせよ。繰り返す・・・・」
『良かった。通じた!』
無線から返事が来たのは意外だった。
「誰だ」
『アゼルバイジャン共和国特使のセルゲイ・ジューコフだ。君たちに用があって来た。訳があって、事前に知らせることができなくてすまなかった。大統領の依頼を持ってきたんだ』
「そのままの速度で方位を216に変針せよ」
『了解。216に向かう』
ディエゴガルシア島基地管制塔 4月20日 2207時
「どうします?ボス。このまま追い返しますか?」
ミュラーが尋ねた。
「いや。ここまでして来るからには何か理由があるはずだ。強制着陸させろ。警備部隊には銃を携行させろ」
「わかりました。ウォーバード1、そのまま着陸させろ。ただし油断するな」