バクー
アゼルバイジャン バクー 4月24日 0931時
アゼルバイジャンの首都、バクーは上へ下への大騒ぎになっていた。海上油田に続いて、今度は空軍基地が攻撃を受けたのだ。大統領のオレグ・ネフスキーは深夜に叩き起こされ、やや不機嫌だった。「まず」大統領は集まった閣僚に向かっていった。「何が起きたのかを知りたい。わかっている限りでいいから情報を寄こしてくれ」国防大臣のイワン・ゼグレフは部下に渡された走り書きのメモを見ながら答えた。
「つい30分前、キュルミダル空軍基地が空爆を受けました。航空機、車両、基地施設あらゆるものが破壊され、基地機能は完全に停止しています。言い換えれば全滅しました」
「生存者は」
「絶望的です。連絡が入ってすぐに通信が途絶えました。これほどの攻撃ができる軍は、この周辺ではロシア以外ありえません」
「しかし、どうしてロシア軍が我々を攻撃する?目的は?」
「わかりません。先日のカスピ海での撃沈事件は、イラン空軍によるものと結論が出ています。我々は北と南から挟み撃ちにあっています」
「待った」声をかけたのは副大統領のロスタだ。
「どうして犯人を特定できる?もしかしたらテロリストの仕業かもしれないじゃないか」
「その可能性はありますが、そういった組織がそのような重装備を・・・・」
「PMCは?」その言葉にゼグレフは沈黙した。確かにPMCにはそのような能力をもった組織がごまんといる。しかし、メリットはあるのだろうか?
「可能と言われれば可能です。しかし、彼らにはテロリストには加担しないという不文律があって・・・・」
「そんなものを全てのPMCが絶対に守ると言い切れるのか?」
「い・・・いえ、しかし」ネフスキーが手を挙げて止めた。
「もういい。とにかく、何者の仕業だったのかを早急に突き止めてくれた。以上」大統領は会議を打ち切った。