大食漢
十一月に入り、文化祭が開催され、一時間が過ぎた辺り。これから学校全体が祭りの熱に侵されていくと言う雰囲気意包まれていた中での重大と言っても差し支えの無い事件が起きた。
校庭のフェンス周りに展開された一つの屋台での出来事である。
「塩とソースを」
「もう勘弁して下さい」
常盤が部活の先輩である数奇屋に半分涙目で懇願していた。その様子に数奇屋はきょとんとする。
「何でだ? 折角椿んとこの売り上げを上げようとしてんのに」
「その心遣いは嬉しいんですけどねスキヤキ先輩。もう万単位で焼きそばを頼んで感謝してます。でもマジで勘弁して下さい。店頭に置いてる他のお客さんの分が無くなるという事態を通り越して文化祭が始まってから一時間足らずで在庫がもう切れて急遽近所のスーパーに即席の買い出し班が食材調達に行ってるんですからね」
呪詛とも取れる声音で常盤は数奇屋に今し方自分達のクラスが追い込まれた状況を告げる。
競輪部所属の精鋭達プラスアルファがスーパーへと赴く事になった現状。
理由は簡単だった。
少し時間を遡って説明をする。
文化祭で何を出すかと言う議題が持ち上がったホームルームで常盤のクラスは無難に焼きそばを提供しようと言う手筈になった。焼きそばが選ばれた理由は祭りで大概目にする縁日物であるし、鉄板の上で野菜と肉と麺を焼いてプラスチックの容器に入れるだけの簡単なお仕事だったからだ。また、縁日定番のソース焼きそばだけではなく、塩焼きそばも作る事によって目を引こうとした。
大繁盛でなくとも、少しは黒字を出して打ち上げに費用にでも当てようと言う意気込みで文化祭開催と同時に焼きそばを提供する屋台はオープンした。オープンする前に鉄板を熱して幾らか作り置きを作成しておくのも忘れてはいない。
その記念すべき最初に訪れた客が災厄であり元凶の数奇屋宏大であった。
「あ、スキヤキ先輩。おはようございます」
「おはー」
独特の挨拶をする数奇屋の手には既にお好み焼きのパックが収まっていた。因みにお好み焼きの枚数は十五枚であるが、常盤は気にしない事にしていた。
「スキヤキ先輩は今日最初の時間が自由時間なんですか?」
常盤が焼きそばをパックに詰めながら訪れた常盤に質問をする。常盤のクラスでは五、六人で店を回すようにローテーションを組んでおり、常盤は文化祭初日は最初の方に割り振られた。
「あぁ。自由時間終ったらずっとお化け屋敷の方だけどな」
数奇屋はあっけらかんと答える。数奇屋が所属する進学科では二年生全員が協力して二つの店を出しており、一つは定番のお化け屋敷で、もう一つは和服喫茶である。
何でも前年度に行った結果和服喫茶は思いの外好評であったので、なんなら今年も同じのを出そうと言う事になったのだ。また、それだったらお化け屋敷もしようぜ、との事。因みに和服喫茶は去年とほぼ同じ料理を出すが、お化け屋敷は趣を変えている。前年度は和性ホラーの巣窟にしていたが、今回は洋風ホラーに路線変更。何でも今年は他にもお化け屋敷をするクラスが存在するから差別化を図ったそうだ。
「よかったら椿も俺のクラスの店に来いよ。お化け屋敷だったら俺が夜に一人でトイレに行けなくなるような恐怖のサービスを提供するぞ」
「それってサービスに入るんですかね? と言うかその台詞はやんちゃ盛りの低年齢層の躾の際に使うべきかと。……そうですね、個人的に和服喫茶が気になるから最初にそっちに行って、次にお化け屋敷の方に行くと思いますから」
最も、夏休み中に人生最大級の災難に見舞われたと言っても過言ではない出来事があったので人工的に作られたホラーではもう動じなくなってしまっている常盤だが、それはそれとしてどのようにして人を恐怖に陥れようと仕掛けを組んでいるのかを見て楽しもうと割り切るのであった。
「そうかそうか。だったら牡丹に部活の後輩が来るから少しはサービスしてくれって言っとくか」
「あ、紅先輩は和服喫茶なんですね」
紅牡丹とは数奇屋と同じ進学科で文系クラスに所属する女生徒であり、普通科で学年も違う常盤は数奇屋繋がりで少しばかり面識があった。
「去年も和服喫茶だったし、それに牡丹は着物の着付けが出来るからな」
「へぇ、凄いですね紅先輩は。今時の女子高生の枠超えてますよ。あっ、所で注文はどうします? いくら二列にしているとはいえ、こう先頭で立ち話してると他のお客さんに迷惑になりますし」
片手で数えられるくらいとは言え流石に客が並び始めて来たので、常盤は数奇屋との話を打ち切って注文を窺う。
「それもそうだな。じゃあ注文すっか」
取り敢えず、と数奇屋はお好み焼きを一枚頬張る。
「ソース焼きそばを三十パック」
「「「「「えっ!?」」」」」
常盤以外の当番のクラスメイトがつい声を上げてしまったが、次の瞬間には恐らく今仕事をしている数奇屋のクラスメイト達の為に食料調達をしているんだろうと解釈して納得した。実際に当たりを見渡せばそのような生徒が他の屋台でも見受けられる。
しかし、常盤だけはそう思わなかった。
「…………取り敢えず、ですか?」
眉根を寄せ怪訝そうに部活の先輩に問い掛ける部活の後輩。
「あぁ、取り敢えずな」
お好み焼きを頬張りながら数奇屋は頷く。因みにもう十五枚全部完食し終えている。その様子を常盤以外のクラスメイトは見ていない。もし見ていたならば、結末は少しだけ変わっていたかもしれない。見ていないが為に、いきなりこれだけ売れてよかったと安堵していたりする者もいる。ソースだけ急激に減ってしまったので直ぐに塩味にしようと焼いていたものをソース味へと変更する。
「はい。三十パックで六千円になります」
「ほい」
数奇屋は財布から千円札一枚と五千円札一枚を出して常盤に渡し、焼きそばを受け取ると、更に人が並び始めた列の最後尾に並び直した。
「「「「「ん?」」」」」
つい目を疑ってしまう。誰だって疑ってしまうだろう。
「彩矢ちゃん、それに皆川君」
そんな中、唯一驚いていない常盤が隣で焼きそばをパックに詰めている同級生に声を掛ける。
「何?」
「どうした常盤?」
「今直ぐ西校舎の家庭科室に行って冷蔵庫から食材全部持って来て。あ、野菜は火が通りやすいように今のより更に細く切って、少し電子レンジで加熱しといて」
「「は?」」
何を言われたのか一瞬分からず素っ頓狂な声を出してしまう同級生二人。
「それは」
「どういう?」
「いいから早く」
「「りょ、了解」」
首を捻ってしまう二人に常盤は有無を言わさずに命令する。二人は言われた通りに西校舎へと走って行く。
「奏美ちゃん」
「な、何かな椿?」
焼きそばの麺が入った袋を裂いている学友に声を掛ける常盤。
「悪いけど、皆に食材を追加で買ってきてって言ってくれない?」
「どうし「早く」わ、分かった」
学友は敬礼をして即座に携帯電話で現在校内を徘徊中の同級生に連絡をする。
「で、斉藤君と葛西君は」
「「は、はい」」
最早流れ的に異議を唱える事は不可能と悟ったクラスメイト二人。
「どんどん焼きそばを作り続けて。接客は私一人でやるから。あと、奏美ちゃんも連絡し終えたら焼きそば作りに加勢してね」
「「イエス、マム」」
三人は敬礼(内一人は二度目で電話中だが)し終えると即座に焼きそば増産に取り掛かった。
で、列は進んで焼きそばは売れて行く。列の半分程で作り置きが無くなってしまったので暫く待って貰い、家庭科室に向かった二人が食材を持って来て調理を再開させ、二人には残りの食材を全て持ってくるように告げて再び家庭科室に言って貰う。
より細く切った食材と更に家庭科室の電子レンジで加熱処理を施した御蔭で鉄板での加熱時間が大幅に短縮され、増産効率は上がり、出来立てをパックに詰めてそれを順次客に渡していく。
「スキヤキ先輩。次は塩ですか?」
再び先頭に躍り出た数奇屋に常盤は注文を予想しながら訊く。
「塩で」
数奇屋はこくりと頷きながら焼きそばを啜る。
「一応社交辞令として訊きますが個数は?」
「さっきと同じで」
その言葉に残った三人は愕然としてしまった。今、何と言った? さっきと同じ? つまりは……三十個? と顔に出ている。
そしてよく見ると、先程買った筈の焼きそばが既に消失しているではないか。数奇屋の手には空になったプラスチック容器の束が重ねられている。この状況に更に驚きを隠せない学友を余所に常盤は淡々と会計を済ませていく。
「塩三十個で六千円です」
「ほい」
先程と同じように千円札と五千円札を一枚ずつ常盤に渡して塩焼きそばの入ったパックを受け取り、今度は列に並ばずに近くのベンチに座って食べ始める。
その様子を窺っていた三人は目を見張った。
何故なら、ほんの二口で塩焼きそば一パックが消えたのだから。
「「「…………まさかっ」」」
「そう、そのまさか」
三人の口から漏れた言葉に常盤は淡々と答える。
「あの人が大食いで有名な数奇屋宏大先輩だよ。だから焼きそばの増産をお願いしたの」
その言葉に三人は納得した。数奇屋の噂は校内でも少しは上がる。顔は知らなくても名前と評判が一人歩きの状態だ。因みに、スキヤキで三人が反応しなかったのはスキヤキと言う渾名が周りに浸透していないからである。
ついでに言えば、近頃食べる量が増えているそうだ。と常盤談。数奇屋にそう言われた時に常盤は「先輩は巻数が増える毎に食べる量も増える高○聖也ですか?」と突っ込みを入れ、数奇屋は「流石に大型トラック二台分の弁当は食べられないぞ」と返していたりするが、その事はクラスメイトには関係無い事なので告げない。
「まぁ、御蔭でもう在庫が危ないんだけどね。イレギュラーな存在だけど、その分売り上げが比較的鰻登りになったからいいとしよう」
「あ、競輪部の人達に買い出し頼んだから食材は早く着くかも」
「ナイス奏美ちゃん。あ、彩矢ちゃんと皆川君、御苦労様」
学友にサムズアップをして、今し方家庭科室から戻ってきた二人に労いの言葉を掛ける。
「言われた通り全部持って来たよ」
「この後どうすんだ? 誰か買い出しに行くか?」
「あ、それは大丈夫。奏美ちゃんが競輪部の皆に頼んだから。取り敢えずは今ある分で事足りると思う」
そう安心する常盤。数奇屋が序盤に現れる事は想定外だったが、それでも全てを食い尽くすまでの胃袋を持っていなかった事に安堵する。
それから暫くは客足が落ち着き、在庫が切れるまでは持つだろうと全員気が緩み始めた。それに交代の時間までもう少しなので、精神的な負担(急激な焼きそば消費)を受けてしまった心をリフレッシュさせたいと思っていたりもする。
「じゃあ皆。交代まで頑張ろう」
「「「「「お……ぉ……」」」」」
腕を挙げて再度やる気を漲らせる為に声を上げようとした五人だったが、何故か途切れ途切れになってしまう。そして表情も固まった。
常盤は不思議に思う。常盤も彼等と同じ方を向いていれば同じようになっていただろう。現在、常盤は客に背を向けており、他五人は客が並ぶ方に顔を向けている。
「注文いいですかー?」
固まってしまった店員に先頭まで進んだ客が声を掛ける。
「あ、済みません。で、何に、しま、す……か……」
唯一平常運転出来た常盤が振り返って客に注文を訊くが、その最中に驚愕で眼を見開き、ある一点を凝視してしまう。
因みに言えば、常盤は今注文をした客に驚いた訳ではない。注文したのは三十前後の女性で、隣には二歳くらいの子を抱き抱えた男性が立っている。恐らく近所に住む家族か生徒の身内で文化祭に訪れたのだろう。そうと推測するくらいは常盤の脳はまだ稼働していた。
「塩一つとソース二つお願いします。……どうしました?」
「えっ? あ、いえ、何でもありません。塩一つとソース二つですね。少々お待ち下さい」
常盤は即座に我に返り、茫然としている五人を軽く叩いて現実に戻し、仕事を再開させる。
「はい、塩一つとソース二つで六百円になります」
夫人が千円札を出し、常盤はお釣りとして四百円を渡して焼きそばを手渡す。
「……奏美ちゃん」
「……うん、分かってる。今から買い出しに向かってる皆に更に追加を頼もうとしてるから」
「ありがとう。あと皆川君も別の誰かにお願いしてくれないかな?」
「了解……」
「…………お待たせしました。何にしますか?」
そこからが声から抑揚の欠けてしまったが、それでいて相手方に失礼の無いようにと必死になって営業スマイルを作る常盤達にはある種の悲壮感が漂う。
数人の注文を訊き終わり、その時は訪れた。その瞬間に常盤は半分涙目になった。
と言うよりも、時間を遡っての説明を終了する。
「スキヤキ先輩。どうしてそんなに食べるんですか?」
「俺だから」
納得出来るようで納得出来ない回答だった。
「いや、そもそもスキヤキ先輩の限界値はとっくのとうに訪れている筈なんですけど」
常盤の記憶が正しければ先週の部活帰りによったお好み焼き専門店で食べた記録(八十枚)を目の当たりにして(その日はカガチと園崎に予定があったので屋敷には赴いていない)許容量を把握していたのでもう大丈夫だろうと安堵していた時に訪れた不意打ちだった。流石の常盤も予想外でもう対処の仕様が無かった。
「あぁ、そう言う意味か。俺この後自由時間が無い=休憩も殆ど無いから今のうちに食い溜めしておこうと思って」
「それでもこの量で足りないって……」
「あ、ついでに言えば今日は寝坊して朝食抜いてきたってのも影響してるな」
ははは、と頭を掻きながら笑う数奇屋。目頭が変に熱くなったので押さえて液体が流れ落ちるのを留める常盤。実はもう交代の時間に差し掛かっているのだが、数奇屋の応対を次のグル―プに横流しで任せたくはないのだ。そのまま押し付ければこの精神的ダメージから逃れられるのだが、そうすると次のグループに迷惑を掛けてしまう。自分の都合で迷惑を掛けるのをよしとしないので常盤は頑張って数奇屋を難とかしてこの場から遠ざけようと説得と言う名の追い払いを開始する。
「さっきも言いましたけど、もう在庫が無いんです。スキヤキ先輩の一つ前のお客さんで完売しました。なので別の店に行って貰えませんか?」
「いや、ここで待っとくよ。食料調達を誰かに任せてるみたいだし」
「他の店に行って食い漁ったらどうですか? ほら、餃子とかフライドポテトとか蛸焼きとか変わり所ではフィッシュアンドチップスや温泉卵なんかも売ってますよ」
「いやいや、他は明日にするって俺の中で決めてんだよ。それに俺は麺類好きだしさ。今回の文化祭だと麺類出してんの椿んとこのクラスだけなんだよ」
「でもずっと同じ味ばかりだと飽きませんか? 飽きを無くす為にも是非他の出店に」
「それ防止の為に飲み物は大量にせしめてきたんだけどな。サイダーにコーラに烏龍茶にジュース類各種とそれから」
「でもですよ? そんなに一気に飲み物飲んで麺を啜ってると空気が胃に溜まって気持ち悪くなりません? それを予防する為にも別の固形物を」
「あぁ、その心配してくれんのは有り難いけど、俺そう言うので気持ち悪くなった事ないんだわ」
「私的には今回出てる店で御勧めなのは焼いた秋刀魚を出してる所ですよ。この寒空の下で焼いた魚を食べるのはいいと思いますよ」
「でもなぁ、あそこは秋刀魚をガスの直火で焼いてるからあんまり旨くないんだよ。魚はやっぱり七輪でそれも炭で焼いた奴でないとな。同じ養殖の魚使ってても風味が格段に違うし」
「それだったら私達の所の鉄板もガスの火で熱して」
「直火じゃないだろ? それにお前んとこはそう言うのあんま関係無いし」
「………………」
何を言っても無駄だと悟ってしまった常盤は天を仰ぐ。
数奇屋は自由時間が終了するまで常盤のクラスの焼きそばを蹂躙するようだ。
恐らく直で「営業妨害です」と言っても素直に聞き入れて貰えないだろう。ここまでの会話を訊いている限りでは。もしかしたら焼きそばをやっていなかったらここまでの事態に発展しなかったのではないかと思うが、後の祭りである。
「という訳で、材料が届くまで待つぐるばぁ!?」
と、いきなり数奇屋が頭を押さえて蹲った。何事かと常盤がそちらに目を向ければ腰まである少し撥ね気味の髪をした眼鏡装備、藤色の着物姿に身を包んだ女子が握り拳を作って数奇屋を睨みつけていた。
「全く。貴方は何をやっているんですかスキヤキ君」
「あ、紅先輩」
常盤は数奇屋の後ろで溜息を吐く女子生徒が紅だと分かると目を輝かせた。何故目を輝かせたかと言うと、彼女が数奇屋のストッパー的な役割を担っているからだ。
「こんにちは椿さん。それと椿さんの御学友の皆さん。本日はうちの馬鹿が色々と迷惑を掛けてしまい誠に申し訳ありません」
「「「「「「あ、いえ」」」」」」
紅は礼儀正しく挨拶をし、謝罪で頭を下げる。それにつられて常盤達も頭を下げる。
「ぼ、牡丹。お前何しやが」
「黙って貰えますか? アタシは今少し――いえ、大分イラついているので貴方の声を訊くとつい拳を振り上げてしまいたくなっています」
「いや、もう振り上げ」
「何か?」
「い、イエス、マム」
紅の冷ややかな眼差しを受けた数奇屋は顔を青褪めながらこくこくと何度も頷くのであった。
「さて、うちの馬鹿が迷惑を掛けてしまった御詫びと言っては何ですが、よろしければこちらをどうぞ」
と、紅は袂から紙幣とほぼ同サイズの紙を常盤達に渡す。それには『羊羹・カステラ無料券』と書かれている。
「私共が営んでおります和服喫茶でその券を出していただければ結構ですので」
更に、と紅は続ける。
「それに加えまして、緑茶も無料で提供させて頂きます」
「「「「「「あの、そこまでされなくても」」」」」」
売り上げとしては黒字確定なので流石にそれは駄目だろう、と六人は思ったのだが。
「いえ、きちんとけじめをつけなければいけませんので」
ときっぱり告げる紅であった。
「それでは、失礼致します。ほら、行きますよスキヤキ君」
「……はい」
「スキヤキ君にはこの後たっぷりと働いて貰いますからね」
「……はい」
「あと、アタシも休憩に入ったので節度を持って一緒に回って貰います」
「……はい」
と数奇屋を引き摺り、会話を繰り広げながら紅は去って行った。
台風が過ぎ去った後のように静かになった常盤のクラスが営む焼きそば屋台。
「……あの人って誰?」
そんな中でぽつりと疑問を零す同級生に常盤はぽつりと答える。
「紅牡丹先輩。スキヤキ先輩――数奇屋先輩と同じく進学科の二年生でスキヤキ先輩の彼女さん」
「「「「「……………え?」」」」」
常盤の言葉で、今日何度目か忘れてしまった驚きを呈してしまうクラスメイト達であった。




