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異世界で家政婦  作者: 時間旅行
第1章
3/4

異世界召還(家政婦になる)

男が起き上がるのを待つ間、少し頭の中を整理してみた。

元の場所に戻れない、と言われたときは軽くショックを受け、怒りが沸いたが

冷静になると、疑問というか恐怖が襲ってくる。

元に戻れないのなら、魔法が有るこの変な世界で暮らすということだ。

仕事もないのに?住む所は?お金は?戸籍は?

ぞっとした。


私は縋る様な目でレルナを見る。

サニーを宥めていたレルナは私の視線に気付きこちらを見る。

口を開こうとしたその時


男が起き上がった。


「・・うう。さすがにキツイ。」

頭を振った後、こちらを見る。


「ついて来い。」

男は杖を振り、床にあった魔方陣を消す。

その後、よろよろとドアへ向かった。


私たち4人はお互いの目を見た後、頷き、男の後について行く。


螺旋状の階段を上り、いくつかのドアを開けた所で男がまた倒れる。

意識はあるようだが、もう動けないようだ。

私と金髪ロングの女性は視線を交わし、「しょうがない。」と肩を貸す。

はっきり言って、めちゃめちゃ重い。

「わ、悪いな・・。」

ボソリと謝罪を男が口にした。


「そんなデブなのに、なんでこんな広い家を作ったの?お金持ちってやっぱり分からない。」

凄く嫌そうに銀髪の少女が後ろから悪態をついてくる。


目的地の部屋に着いた時、男と金髪ロングの女性と私は、床に膝と手をつき、肩で息をしていた。


「ロル・キーリン。そろそろ質問してもいいかしら。」


レルナは腕を組み、男に近寄る。

男は荒い息で答える。


「・・なん、だ。」


「なぜ、私たちを呼んだの?まさか、ハーレムを作ろうとかじゃないわよね?」

最後は男を睨み付けていた。

私と残りの2人は目を開き男を見つめる。


「はっはっはっはははーーーーーーーー!ごほっごほっ。」


後半は蒸せてしまったが、レルナをバカにするような笑い方をした。


「お前らみたいなガリガリの女を!?タイプじゃないな。

ハーレムを作るなら、もっと見め良い、ふくよかな女性を呼ぶ。」


レルナはむっとする。


「じゃあ、なぜ呼んだのよ。」


「ふふん。おいお前。」

ロルは金髪ロングの女性を指差す。


「名前は何だ。」


「・・・ルル・ディバシーだ。」

金髪ロングの女性、ルルは眉を寄せながら答えた。


「ふん。ルル、お前は今日から、俺様のサンドバッグだ。」

「は?」


「おい、お前の名前はなんだ。」

今度は私のことを指差して聞いてくる。


「ササキ カナです。」

男はにやりと笑う。

「ササキ、お前は今日からこの家の雑用をすべてやるんだ。

お茶くみ、料理、掃除、洗濯、とにかく全部だ。」


私の変わりにレルナが声を出す。

「はあ!?何言ってんのあんた。」

「俺様が呼んだんだ、こいつらは俺様のものだ。」

「はあ~?」

レルナがまた何か言おうとしたのを私が横からさえぎる。


「それは、家政婦として雇ってもらえるということですか?住み込みで働いていいですか?」

一瞬にして、皆が静かになる。


ロルはまたにやりと笑う。

「ああ。そのために呼んだんだ。部屋は空いてる。好きな部屋を選べ。

ただし、最上階はすべて埋まっているから駄目だ。」

「分かりました。」


「何言ってんの!こんな所に住む事ないわよ。

城に訴えればいいのよ。こいつに連れてこられたって!

そんで、馬車でも何でも使って、元の場所に戻ればいいのよ。」

レルナが私に考え直せというが

「私は、戸籍や身元を証明するものがありません。信用してもらえるでしょうか。」

それに、馬車で戻れるような場所でもないと思う。

レルナがはっとした顔をする。


出来ることなら、警察に駆け込み、この男を訴え、保護されたいが

この世界の警察は信用できるのかどうかも、何一つこの世界のことが分からない。

だから、先ほど聞こえてきた男の「悪いな」という言葉を信じて賭けるしかない。

素直に謝ることができる人はいい人である可能性が高い。

・・・勝手に召還されたけど。

それに、私はタイプではないらしいので、身の危険を感じる必要は多分ないだろうし

あの体系なら、私でも戦って勝てそうな気もする。

一応確認のため、レルナに問いかける。

「城に行けば、この国の民でない者でも手助けしてくれますか?」

「ど、うだったかしら・・。」


男はニヤニヤしながら、補足する。

「この国の法律で保護されるのは国の民だけだ。

身元を証明できるものがなければ、この町からは追い出されるな。

町の外は魔物がウロウロしてるから気をつけろよ。

それと、俺を訴えても無駄だ。証拠は消した。城に言うなら言ってみろ。

俺様は胸を張ってこう言うぞ。

家のない者達を拾ってやっただけだ。とな。

お前は計算外だった。帰っていいぞ。」

レルナはキッと男をにらみつける。


ふと、隣に誰かが来たので視線を移すと、銀髪の少女が私のスウェットの裾を掴んでいた。

「私も、お城なんか行かない。助けを求めたって、偉い奴らは動いちゃくれないんだから。」


「私も、護衛としてなら雇われてやる。」

ルルも賛同する。

「・・・本当に、戻れないのか?」

ルルが一応といった形で男に聞く。


「戻れんな。」

きっぱりといわれる。

3人とも肩を落とすが、先に言われていたので、ショックは少し軽い。


男は手を振り

「今日は解散だ。俺はもう疲れた。寝る。

雇っていた女共を全員解雇したばかりだからな、

奴らの服や持ち物が残ってるだろ、

後はそうだな、外に出る以外は、好きにしろ。」

そう言うと、のろのろと広間から出て行った。



私はため息をつく。

「働き手が欲しかったのね・・。」


レルナがその私の言葉を否定する。

「働き手なんか、そこらにいっぱいいるわよ。なんで、わざわざ召還してまで・・。」


ルルがその疑問に答える。

「あの、性格と顔では、誰も続かなかったんだろう。」


その言葉に、皆が納得した。

レルナは首をかしげ「何で私も?」と呟いていた。


その後、レルナが隣の家が自分の家だから、そこで暮らせばいいといわれたが

何も出来ないのに、ただでお世話になるのは気が引ける。

それに、

「あれがあなたの家?」

「そう、両親と兄弟3人と一緒に住んでるの。」

窓から見える家は、本当に小さなかわいらしい家で・・・さらに3人もお邪魔するには

気がひけるぐらいの小ささで・・。

「いざとなったら、お願いします。」

そう言うしかなかった。



召還されて気持ちを立て直すまでの行程が重くならないようにしてみたら、逆に軽くなりすぎた・・!

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