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相手が魅了使いならカルトをぶつければいいじゃないか?と結果的になってしまった令嬢の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/10/20

「やあ、アグネス、相談があるのだ・・・」



 婚約者のカール様がとんでもないことを言います。


「実はとても素晴らしい方がいるのだ。私の従姉妹ミルディーだ。新居にミルディーの部屋を用意して欲しい」


「はあー?」



 カール様とは政略ですが、屋敷は我が家門が用意する取り決めでした。

 彼は今までデートの時も時間も遅れずに来ます。


 愛を育んでいると思っていました。



「それは不誠実ですわ。新居に女性を伴うなんて」


「いや、政略だろ?体は君の物、心はミルディーの物だ」

「ヒドいですわ!」


「なら、逆にしようか?すぐにミルディーに会いに行く。だけど心は君の物だ」

「それは・・・」


「何、子供が出来たら、君も好きな男と付き合えばいいよ。僕もそうする」



 そんなことを言います。

 ミルディー様とは。


 突然、カール様の屋敷の前に現われたそうです。

 それから、あれよあれよと言う間に養子縁組をして、従姉妹の身分を取得して屋敷で暮らしているそうですわ。


 カール様は言います。


「ミルディーこそ最も尊敬出来る女性だ」



 と・・・・




 ・・・・・・・・・・・・



 私は身の上の相談を教会の応接室でしたわ。


 そしたら、対面して相談を受けてくれたシスターは手をプルプル震わせて眼鏡を取ったわ。机におく。中年ぐらいのお年だわ。



「最も尊敬出来る女性って、お仰せになったのね」

「はい。そうです」


「ゴホン、それは間違いです。最も尊敬出来る女性はこの私、マチャドですわ!!!」


「ヒィ!」


 何かおかしい。


「貴方、その家門を教えなさい!」

「はい、王都南通のフラナンド家ですわ・・・」



「信徒頭!青年部!女性部!を集めなさい!折伏大行進を行うわ!!魔が出現したわ!」

「「「はい、会長殿!」」」」


 え、え、部屋にワラワラと大勢入って来た。どちらかと言うとマダムが多い。


「あの、私はどうすればよろしいでしょうか?」

「あ、もう、帰りなさい!折伏して信徒にしようと思ったけど、それどころではないわ!」


「私は女神教徒・・・ここは女神教会では・・・」



 表に出て見たら、看板があった。

『王都大戦果報告会』と書かれていたわ。王都発祥のカルト宗教、異世界から持ち込まれたそうだわ。


 建物が女神教会に似せている。

 こうやって相談者をおびき寄せていたのね。



 大戦果報告会の皆様は隊列を組んでカール様の屋敷に向かったわ。



「「「「「ナムナムナムナム~~~~!」」」」

「魔を滅せよ!」

「最も尊敬される女性はマチャド様だ!」



 私は屋敷に戻った。


「アグネスよ。政略結婚はやめて共同事業は契約書だけにしようと思うが・・・」

「お父様、そうして下さいませ」

「うむ。いくら政略結婚でもカール君の言い方、娘はやれない」


「ところでお父様、大変なことが起きましたわ」



 私はカルト宗教団体がカール様の屋敷に向かったことを話した。


「・・・黙っておきなさい」

「はい・・・そうしますわ」



 放置と決まったわ。


 しばらくして婚約解消の話合いに行ったら・・・・


 カール様のお屋敷は・・・


「「「「ナムナムナムナム~~~~」」」」



「ヒィ、マダム達が屋敷を占拠していますわ!」

 信者達は口々に言う。


「ミルディー様最高!」

「ミルディー様こそ、最も尊敬出来る女性である!」



 取り込まれたのかしら。

 怖かったので、両親ともども屋敷に戻ることになった。



「これは・・・接触出来ないな」

「あなた、そうね。他の手段を考えましょう」

「そうだ。婚約解消の裁判を起そう」


 今後の事を相談していたら、来客があったわ。


 玄関が騒がしい。髪を振り乱したマダムが叫んでいたわ。



「キェー!ここの屋敷にはサタンがいる!この壺を買って浄化しないと大変だわ!」


 執事とお兄様が対応していたわ。

 悪質な物売りね。

 だから、私は事情を話して退散してもらったわ。



「あの、今、当家は最も尊い女性を名乗る方問題でそれどころではございませんの」


「キィー!どなたですの?最も尊い女性は現人イブのザザン様ですわ!」


「あっち・・」


 人差し指で方角を示したわ。

 そしたら、兎のように走り込んで行かれたわ。


 何故か、効果抜群ね・・・・


「アグネス・・・更に大変なことになりそうだ。このことは黙っていなさい」

「はい、お兄様」



 私は屋敷で裁判の準備と釣書を見ていたら・・・



「大変だ!何か『ナムナム』と叫びながら壺売るのが流行しているぞ!」

「しかも、高額だ!」



 使用人達が騒いでいるわ。


 聞いた話ですけど、カール様のお屋敷はミルディー戦果報告家庭の平和の会の看板が立てられ。その勢力は拡大しているらしい。



「おい、アグネス、大変だ!王宮からお呼びがかかったぞ!」

「お父様・・・何故かしら」

「バレたらしい」

「えっえー!」

「ワシも行く。正直に話すのだ」

「はい」



 王宮に呼び出されて、陛下に諮問されたわ。


「これ、へロンド伯爵令嬢よ。今回の騒動の発端と聞いたが、正直に話せ」

「はい。陛下、お答えします」



 正直に話したら。

 陛下の顔はみるみる真っ赤になった。


「な、何だと、王国で一番尊い女性は我が妃、ローズマリーだ!近衛騎士団よ!鎮圧せよ」


「「「御意!」」」


 しかし、このとき、待ったをかけた廷臣の方がいましたわ。



「陛下、発言の許可を求めません。火急の案件です。これは魅了ではございませんか?」


「な、何だと、魅了?」

「はい、近衛騎士団が取り込まれる可能性がございます」

「うむ。なら、どうすれば良い?」


「はい、まず枝を切ります。末端を捕まえて治療、魅了でも悪質な勧誘や物売りをした者は刑に処します。そして。ミルディーなる者についてはこんな情報を流すのです」



 何だか、ロクでもない話になったわ。


「これ、アグネスとやら、妾とお茶でもいたしましょう。ヘロンド伯爵、お嬢様を借りますわ」

「王妃殿下、分かりました。アグネス、お受けしなさい」

「お誘い有難うございます」


 王妃殿下とお茶会になったわ。


「フフフフフ、陛下とは政略結婚でしたけど、もおね。あんな感じよ」

「陛下を愛しておられるのですか?」


「そうね。政略って不思議よね。陛下の地位がなければ間違いなく結婚しなかった。

 でも、陛下は陛下、王族って不思議よね。地位と一体化しているのよ。

 同志であったり。夫婦であったり。私でも分からないわ。

 陛下を愛しているのか。ダグマイヤーという個人を愛しているのか・・・」


「すみません。分かりません。実感がわきません」


「いいのよ。でもね。政略だから愛人を連れてくるという殿方はやめた方がいいわ」

「やっぱりそう思われますか?」



 ・・・・・・・・・・・・



 王妃殿下とお話が終わってから数日間でこの騒動は終わったわ。

 ミルディー様は船に乗せられて・・・いや、自分で乗ったようだわ。

 帆は一つの小舟で、ドレスとジュエリーが山積み。



『東の大陸に女神圏がすっぽり入る大国があっって、そこの皇后になるの!』

『ミルディー、行かないでくれ!独りでは危険だ』

『大丈夫よ。カール、海流に任せれば7日で着くって』


 何か、恐ろしいほどの甘い計画で出航した。王宮の工作でそそのかされたそうだわ。


 カール様をおいて船は出航したと聞いたわ。


 恐らく、異教徒の大陸に生物兵器として送り込まれたのだろうと推察されたわ。

 それとも、荒海で難破を狙っているとも・・・社交会でささやかれたわね。


 もう、私には関わりのないことだわ。


 ある日、カール様が訪ねて来た。


「やあ、アグネス、久しぶり」

「カール様・・・」


「気がついたのだ。本当に尊い女性は君だ!」


「まあ、カール・・・様」


 カール様は魅了が解けたようだ。

 花束を持って屋敷に来られたわ。


 私は・・・


「帰って下さいませ!」


 何故か、体が拒否をした。今のカールはまともかもしれないが、

 花束を持って甘い言葉をささやく殿方が信用できなくなったわ。


 愛は理屈ではないのかもしれないわ。


最後までお読み頂き有難うございました。

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