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《因果逆転のギフトを持って転生したら、タロット戦争に巻き込まれました》  作者: 猫宮みけ


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◆第6話 「揺り戻しの代償」

◆第6話 「揺り戻しの代償」


 草原を抜け、森の縁に戻った頃には、空はすっかり夕焼けに染まっていた。

 アリアの腕からはまだ血が滲んでいる。

 カイトは何度も振り返りながら歩いた。


「アリア……本当に大丈夫なのか?」


「ええ……少し切られただけよ。

 あなたがいなかったら、もっと酷いことになってたわ」


 アリアは笑ってみせたが、その顔色は明らかに悪い。


(……俺のせいだ。

 俺が因果逆転を無理やり使ったから……)


 胸の奥が重くなる。


 そのとき――


 空気が震えた。


 森の奥から、低い地鳴りのような音が響く。


「……カイト。

 揺り戻しが来るわ」


 アリアの声は震えていた。


「え……?

 さっきの戦いの……?」


「ええ。

 あなたは《正義》の均衡補正を“力づく”で突破した。

 あれは、本来なら起きない因果を無理に成立させたの。

 その分の“帳尻合わせ”が……今、来る」


 地面が揺れた。


 木々がざわめき、鳥たちが一斉に飛び立つ。


「ちょ、ちょっと待て!

 こんな規模の揺り戻しが来るなんて聞いてないぞ!」


「私も……ここまでとは思わなかったわ」


 アリアが唇を噛む。


「あなたの因果逆転は、世界の根幹に触れる力。

 均衡補正を突破したことで、世界が“大きく歪んだ”のよ」


 カイトは息を呑んだ。


(……俺のせいで……?)


 地面が裂けた。


 森の奥から、巨大な倒木が転がり出てくる。

 まるで“何かに押し出された”ように。


「カイト、避けて!!」


 アリアが叫ぶ。

 カイトは反射的に飛び退いた。

 倒木が地面を抉りながら転がっていく。


「な、なんだよこれ……!」


「揺り戻しは“あなたが生み出した因果の反動”。

 あなたが“アークの剣を滑らせた”ことで、

 本来滑るはずだった“別の因果”が、別の形で現れているの」


 アリアの説明は冷静だが、声は震えていた。


「つまり……俺が助かった分、世界のどこかで“滑るはずだった何か”が、

 今ここに押し寄せてるってことか……?」


「そうよ。

 あなたが因果を変えた分だけ、世界は“別の不運”を生む」


 カイトは拳を握った。


(……俺のせいで、こんな……)


 そのとき――


 森の奥から、さらに大きな音が響いた。


 ――バキバキバキッ!!


 巨大な木が、根元から折れて倒れてくる。


「アリア!!」


 カイトはアリアを抱き寄せ、横へ飛んだ。

 倒木が二人のいた場所を押し潰す。


 アリアが息を呑む。


「カイト……!」


「大丈夫か!?」


「ええ……でも……」


 アリアの顔色がさらに悪くなる。


「アリア……?」


「……ごめんなさい。

 私……あなたの揺り戻しを“抑える”ために……

 ずっと運命調整を使ってたの……」


「な……!」


「今回の因果逆転は、揺り戻しが大きすぎる。

 だから……私が“確率をずらして”抑えてたの。

 でも……もう限界……」


 アリアの膝が崩れた。


「アリア!!」


 カイトは慌てて支える。


 アリアの身体は熱く、呼吸が荒い。


「アリア……!

 なんで言わなかったんだよ……!」


「言ったら……あなたが……

 自分の力を使えなくなると思ったから……」


 アリアは弱々しく笑った。


「あなたは……優しいから……

 自分のせいで誰かが傷つくのを……

 何より嫌うでしょう……?」


 カイトは言葉を失った。


(……こいつ……

 俺のために……ずっと無理してたのか……)


 そのとき――


 空気が一変した。


 森の奥から、黒い霧のようなものが溢れ出す。


「な、なんだ……これ……!」


「……揺り戻しの“本体”よ……

 あなたが因果を変えたことで、

 本来起きるはずだった“不運”が……

 “形”になって現れているの……!」


 黒い霧は、まるで意思を持つようにうねり、

 二人に向かって迫ってくる。


「カイト……逃げて……!」


「馬鹿言うな!!

 お前を置いて逃げられるわけないだろ!!」


 カイトはアリアを抱き寄せ、黒い霧に向き直る。


(……俺のせいで生まれた揺り戻しなら……

 俺が受け止めるしかない……!)


 黒い霧が迫る。


 カイトは叫んだ。


「《因果逆転》――発動!!」


 世界が反転する。


 黒い霧の“発生原因”が、

 “森の湿気による自然現象”へと置き換わる。


 霧は一瞬だけ薄れた。


 だが――


「カイト!!

 ダメ!!

 それ以上使ったら……!」


 アリアの叫びが届く。


 次の瞬間、カイトの視界が真っ白になった。


 頭が割れるように痛い。

 胸が焼けるように熱い。


(……これが……揺り戻し……!?)


 膝が崩れ、地面に倒れ込む。


「カイト!!」


 アリアが必死に抱き起こす。


「カイト……!

 お願い……死なないで……!」


 カイトはかすれた声で言った。


「……大丈夫だ……

 アリアを……守れたなら……

 それで……」


「違う!!」


 アリアの声が震える。


「あなたが死んだら……私は……カードになるのよ……!

 そんなの……嫌……!」


 アリアの涙が、カイトの頬に落ちた。


「お願い……カイト……

 生きて……

 私を……一人にしないで……!」


 カイトは、朦朧とした意識の中で、アリアの手を握り返した。


「……アリア……

 俺は……絶対に……死なない……

 お前を……カードになんて……させない……」


 アリアは泣きながら頷いた。


「ええ……

 ええ……カイト……

 生きて……一緒に……生き残るの……!」


 黒い霧は完全に消え、森に静寂が戻った。


 だが、カイトの身体は限界に近かった。


 アリアは震える手でカイトを抱きしめた。


「カイト……

 あなたの力は……強すぎる……

 このままじゃ……あなたが壊れてしまう……」


 夕焼けの光が、二人を照らす。


 アルカナ戦争は、容赦なく続いていく。

 そして――

カイトの因果逆転は、確実に彼の命を削り始めていた。


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