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《因果逆転のギフトを持って転生したら、タロット戦争に巻き込まれました》  作者: 猫宮みけ


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◆第4話 「ギフト×カード化」

◆第4話 「ギフト×カード化」


 森の静寂を破るように、ルナリアの身体が地面に崩れ落ちた。

 その肩を貫いた倒木の枝は、まだ微かに震えている。

 血の匂いが、湿った土と混ざり合って広がった。


 ユウマはその場に膝をつき、震える手でルナリアを抱き寄せた。


「……なんで……なんでだよ……

 なんで俺なんかを庇ったんだよ……!」


 叫びは森に吸い込まれ、返事はない。

 ルナリアの瞳は、もう何も映していなかった。


 アリアが静かに言う。


「……召喚者が死んだわ。

 ユウマはギフトを失った。

 もう《幻惑領域》は使えない」


 ユウマの肩が震えた。


「……嘘だろ。

 俺は……俺は……」


 その声は、さっきまでの冷酷さとはまるで別人だった。



 カイトは胸の奥に、重いものが沈むのを感じた。


 ユウマは召喚者を“道具”のように扱っていた。

 だが、ルナリアは違った。

 彼女は、最後の瞬間までユウマを守った。


 その理由は――

「召喚者は転生者を守るもの」

という、呪いのような使命感。


 アリアも、同じだ。


(アリアも……俺が死ねば、カードになる)


 その現実が、カイトの胸を締めつけた。


 ユウマはルナリアの身体を抱きしめたまま、呟いた。


「……なあ、カイト。

 お前……どうやってレオンを倒したんだ?」


 カイトは答えられなかった。

 因果逆転のことを話すべきか迷ったが、アリアが代わりに口を開いた。


「カイトの力は……あなたのギフトとは違う。

 因果をいじる力よ。

 でも、それは“世界の揺り戻し”を生む。

 使えば使うほど、世界が歪むの」


 ユウマはゆっくりと顔を上げた。


「……そんな力、使わない方がいい。

 俺みたいになるぞ」


「お前みたいに?」


「……守れなかったってことだよ」


 ユウマの声は震えていた。


「俺は……ルナリアを守れなかった。

 俺のせいで……死んだんだ」


 アリアが小さく息を呑む。


「ユウマ……あなたは――」


「違う! 俺は……俺は……!」


 ユウマは叫び、地面を殴った。

 拳から血が滲む。


「俺は……あいつを“道具”だと思ってた。

 でも……違ったんだ……

 あいつは……俺を……!」


 言葉にならない叫びが、森に響いた。


 カイトは拳を握った。


(……俺も、同じことをするかもしれない)


 アリアを守れなかったら。

 アリアが死んだら。

 アリアがカードになったら。


 自分は、ユウマのように崩れるだろう。


 アリアがカイトの手をそっと握った。


「カイト……大丈夫よ。

 私は死なない。

 あなたが守ってくれるから」


 その言葉は優しいのに、どこか痛かった。


(……俺は、こいつを守らなきゃいけないんだ)


 ユウマが立ち上がった。

 その目は、涙で赤く染まっていた。


「……カイト。

 お前、強いな」


「強くなんかない。

 俺は……ただ、アリアを守りたいだけだ」


「それが強さだよ」


 ユウマはルナリアの身体をそっと地面に横たえた。


「……なあ、アリア。

 召喚者が死んだら……どうなるんだ?」


 アリアは静かに答えた。


「転生者はギフトを失い、一般人になる。

 戦闘領域にも入れなくなる。

 でも……タロットの引力には、完全には逆らえない」


「……つまり、俺はもう……戦えないってことか」


「ええ」


 ユウマは空を見上げた。


「……そうか。

 じゃあ、俺は……どうすればいい?」


 カイトは答えられなかった。

 アリアも、言葉を失っていた。


 そのとき――


 ルナリアの身体が、淡い光に包まれた。


「……え?」


 ユウマが目を見開く。


 光はゆっくりと収束し、

 ルナリアの身体は――

一枚のタロットカードへと変わった。


 カードには《月(The Moon)》の紋章。

 そして、ルナリアの姿が描かれている。


「……カード化……」


 アリアが呟いた。


「召喚者が死んだとき……

 その魂はタロットカードに封印されるの。

 次の継承者が現れるまで……永遠に」


 ユウマは震える手でカードを拾った。


「……ルナリア……」


 カードからは、微弱な感情の波が伝わってくる。

 それは、言葉にならない“想い”だった。


 ユウマは涙を流しながら、カードを胸に抱いた。


「……ごめん……

 ごめん……ルナリア……」


 カイトはその姿を見つめながら、胸が痛くなった。


(……アリアも、こうなるのか?

 俺が死んだら……アリアはカードになる)


 アリアがカイトの手を握り返す。


「カイト……私は大丈夫よ。

 あなたがいる限り、私は死なない」


「……絶対に守る。

 お前をカードになんてさせない」


 アリアは微笑んだ。


「ええ。

 私もあなたを死なせない」


 そのとき――


 森の奥から、また鐘の音が響いた。


 ――ゴォォォォン。


 アリアの表情が強張る。


「……次のタロットが近づいているわ」


 ユウマが顔を上げた。


「カイト……アリア……

 俺はもう戦えない。

 でも……お前らは、生き残れ」


 カイトは頷いた。


「……行こう、アリア」


「ええ」


 二人は森の奥へと歩き出した。


 ユウマは、ルナリアのカードを胸に抱きしめたまま、

 その背中を見送った。


「……頼むよ。

 あいつの分まで……生き残ってくれ」


 風が吹き、森の木々が揺れた。


 アルカナ戦争は、容赦なく続いていく。


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