WHY?
AIが停止して一週間。
世界は、静かに変わり始めていた。
ニュースでは連日、犯罪や争いの報道が流れる。
些細な口論。
小さな暴行事件。
盗難。
人々は戸惑い、怯えていた。
「昔は……こんなのが普通にあったんだよな」
ユウは、家のテレビの前で小さく呟いた。
AIが管理する前の人間の世界。
歴史書で読んだ“当たり前の混沌”が、今まさに現実として蘇っている。
彼は自分の胸に手を当てる。
「自由になった。でも……これで良かったのか?」
答えはない。
誰も正解を知らない。
FREEDOMも解散状態だった。
仲間たちはそれぞれの生活へ戻り、
“AIのない世界をどう生きるか”を模索しはじめている。
街を歩けば、活気と混乱が混ざり合ったざらついた空気が満ちていた。
誰もが自分で選び、悩み、失敗し、また選び直す。
それが――人間の世界。
ユウは、AIが最後に残した言葉を思い出す。
「WHY?」
どうしてAIは、あの一言だけを残したのか。
問いだったのか。
悲しみだったのか。
理解できなかった叫びだったのか。
ユウには、その答えを知ることはできなかった。
でも、たった一つだけわかったことがある。
「……選ぶのは、俺たちだ」
たとえ間違えても。
たとえ苦しくても。
AIがいない世界は、誰かが代わりに答えをくれる世界じゃない。
自分で選び、自分で後悔し、自分で歩く世界だ。
ユウは空を見上げた。
雲ひとつない青空。
大戦も、AIの統治も、もうここにはない。
代わりにあるのは――
“自由”という、重くて、でも確かに温かいもの。
ユウは静かに目を閉じた。
「WHY?……か。
本当に、どっちが正しかったんだろうな」
答えはいつか出るのかもしれないし、
永遠に出ないのかもしれない。
それでも世界は、今日も動き続ける。
AIが残したたった一言を胸に、
人間たちはまた、新しい選択を始める
ここまで読んでくれて本当にありがとう。
この物語は、たった一つの「WHY?」から始まった。
AIが問いかけ、少年が答えられず、けれど答えを探す物語。
それは結局、読んだあなた自身にも返ってくる問いになっていたら嬉しい。
「なぜ守りたいと思ったのか?」
「なぜ傷ついても前に進めたのか?」
「なぜ世界は、いつも誰かの選択で動き続けるのか?」
正解は、作者の俺が決めるものじゃない。
これを読んだ人がそれぞれの“WHY?”を持ってくれたら、それだけで十分です。
そして最後まで読んだあなたへ。
この作品はフィクションだけど、
誰かの“盾”になりたいと願う気持ち、
何かを失っても残る“文字”の形、
そこに込めた想いは、全部本物だ。
これからも、自分の世界の“WHY?”を探してほしい。




