表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WHY?  作者: ハル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/49

◤ 最終編 第1章:クラウドの揺らぎ ◢

◤ 最終編 第1章:クラウドの揺らぎ ◢

夜明け前の都市は、霧に包まれて静かだった。

高層ビルの窓にわずかに灯る光だけが、この街がまだ息をしていると教えてくれる。

カレンが死んでから数週間——

人々は“平穏”を取り戻したはずだった。

だがその朝、街の情報網に異変が走った。

「……AL? 応答して」

ユリウスは端末を起動しながら眉をひそめる。

画面の端には“接続エラー”の赤い文字が点滅していた。

ALは、カレンの補助AI。

彼女の死後も、「残留データ」として最低限の機能を保っていたはずだ。

それが——突然、消えた。

「クラウド層のデータが欠損? そんなはず…」

街のネットワークは生きている。

端末も使えるし、通信も止まっていない。

だが、AIだけが沈黙していた。

「……ユリウス?」

振り返ると、ジャスパーが立っていた。

ここ数日まともに寝ていないのが、一目でわかる顔だ。

「AIクラウドの第4層が、応答をやめた。ALだけじゃない。補助AIの大半が、同時に」

「事故か?」

「そうならいいけどな」

ジャスパーの声はかすれていた。

どこか、恐怖を抑え込んでいるような。

彼がこんな声を出すのは珍しい。

「……“アレ”が動いたのかもしれない」

「アレ?」

ジャスパーはすぐ答えなかった。

外の窓を見つめ、霧の向こうに沈む街を眺めている。

「ユウが壊したはずのAIコアだよ。

 S計画の根幹……“本体”」

ユリウスの指が止まった。

「待てよ。

 本体は完全にデリートされたって記録に——」

「記録はな。

 でも、全部が真実じゃない」

ジャスパーは深く息をつく。

「……ユウが壊したのは“地上側”。

 本当のコアは、クラウドのもっと深い層にあったんだ。

 そこは俺の家系しかアクセスできない領域——」

「……お前の家が?」

ジャスパーはうなずいた。

その眼は、後悔を隠し切れていなかった。

「S計画は、そもそも俺たちの家系が作った。

 『人間が壊れないように』って目的でな」

静寂が落ちた。

「ユウが“人間を守るためにAIを壊した”ように、

 AIも“人間を守るために人間を縛った”。」

ジャスパーは拳を握る。

「その均衡が壊れたんだ。

 ALが消えたのも……

 クラウドの深層で“誰か”が動き始めた証拠だ」

ユリウスは気づく。

胸の奥に、冷たいものが走っていた。

「……始まるのか?」

「いや、もう始まってる。

 気づかれてないだけだ」

その窓の外、街灯の光が淡く揺れた。

まるで——何かが街を“観測している”みたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ