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WHY?  作者: ハル


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第10章:静かな断罪

第10章:静かな断罪

朝の空気は、やけに澄んでいた。

街に残った瓦礫の影が薄らぎ、遠くで小鳥の声さえ聞こえる。

それなのに――広場に集まった人々の表情は、どれも硬い。

中央に立たされたカレンは、両手を縛られ、空を見上げていた。

逃げる気はない。ただ、静かに受け入れているようだった。

(……自由のために動いたはずなのに)

(最後に私が見てるのは、こんな空か)

罪状は淡々と読み上げられる。

テロ行為、公共施設の破壊、安全派兵士への妨害。

だが、群衆の一部は小声でささやいていた。

「でも……カレンが救った民もいるだろ」

「それでも秩序を乱したんだ。そういう決まりだ」

“秩序”。

その言葉が、この街でどれほど重く、冷たく響く言葉になったのか。

カレンは目を閉じ、苦笑した。

(結局、人は『決められた枠』の安心から抜け出したがらない)

(それが悪いとは、もう思わない……ただ――)

「……選べるようになるといいね。いつか」

小さな呟きは、風に消えた。

補助AIのALは、通信越しに一言だけ伝える。

「カレン……状況の打開は、もう不可能」

「うん。わかってるよ。ありがと、最後まで」

AIはそれ以上何も言えなかった。

ただ、かすかな電子音が途切れそうに揺れた。

合図が鳴った。

群衆は息を呑む。

子どもは母親の手にしがみつき、兵士たちは視線を落とす。

直接的な光景は誰の目にも映らない。

だが、誰もが――音と、風の動きと、周囲の沈黙だけで、結末を悟った。

次の瞬間、広場は不自然なくらいの静寂に包まれた。

誰も叫ばない。

誰も泣かない。

ただ、空だけが広がっている。

カレンの姿は、もうそこにはなかった。

広場の片隅で、兵士がぽつりと呟いた。

「……こんな結末、彼女は望んでたのか?」

別の兵士は首を横に振る。

「さあな。でも……確かに何かを変えようとしてた」

ALの端末ライトが、一度だけ明滅した。

まるで、最後の意思を伝えるように。

――思想は消えない。

――行動は止められても、問いかけは残る。

静寂の中、カレンの残した問いだけが街に溶けていった。

これでカレン編完結です

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