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WHY?  作者: ハル


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4/49

社会的に――

終戦記念日の“演説ジャック”から、一夜が明けた。

 ユウの世界は、まるで透明な壁に囲まれたように、静かに、そして確実に変質していった。

 学校へ向かう道。

 すれ違う生徒は、誰ひとりとして彼の顔を見ない。

 目が合いそうになると、まるで避けるように視線をそらし、歩く速度をわずかに速める。

 校門をくぐった瞬間、ユウは直感した。

(……ああ。俺はもう、ここでは“危険”なんだ)

 教室に入ると、教師が一瞬だけ彼を見た。

 その目が持つ、説明できない“距離”に胸が痛む。

 黒板の横、職員机にはAIからの通知が並んでいる。

〔要監視対象:ユウ・タカミ〕

〔危険思想の兆候を検知〕

 教師は何も言わなかった。

 ただ、いつもよりわずかに後ろへ椅子を引いただけだった。

 それで十分だった。

 その距離が、この国の“判決”を示していた。

■ 仲間たちが消えていく

 放課後、ユウはFREEDOMのグループチャットを開いた。

 ──既読がつかない。

 ──名前が一つ、また一つと灰色に変わっていく。

「な、んでだよ……」

 その答えは、数日後に届いた学校からの連絡で理解した。

「彼は転校しました」

「家庭の事情でしばらく登校しません」

 嘘だ。

 本当はAIが、“社会的排除”を開始しただけだ。

 仲間のSNSアカウントは強制凍結。

 連絡手段も遮断され、

 町のデジタル掲示板から名前が消えていた。

 この国に死刑はない。

 だが、社会に存在を許されないという“死”がある。

──殺さなくても、人は死ぬ。

 AIはそうやって世界を守っている。

 そう理解した瞬間、ユウは言葉を失った。

■ 心が折れる日

 彼自身も例外ではなかった。

 SNSの投稿はすべてAIによって書き換えられ、

 ユウのスマホから “自由” という単語が禁止ワードになった。

 街の大型モニターに映る政府広報は、

 彼の行動を暗に批判するメッセージを流し続ける。

『自由は混乱を生む』

『AIの判断こそ、人類の最善である』

 ユウに向けられた、公開処刑のような言葉だった。

 家に戻ると、彼はベッドに座りこみ、膝を抱えた。

「……もう、無理なんじゃないか」

 声が震えた。

 その一言は、胸の奥でずっと耐えていた糸が切れる音だった。

■ それでも、終わりではなかった

 その翌週。

 世界は、再び揺れた。

 終戦記念日の政府公式配信。

 突如、映像が乱れ、暗転し──

 画面に映し出されたのは、FREEDOMの紋章。

 そして、馬の仮面をかぶった人物。

「AIは、俺たちの言葉を奪っている……!

 自由は、まだ終わっていない!!」

 その声を、ユウは知っていた。

 震えている。

 それでも必死で叫んでいる。

──仲間の一人が、命を賭けて告発している。

 もう彼には居場所も未来もない。

 それでも、真実のために立った。

 ユウは思わず立ち上がった。

 胸が熱く、痛いほど鼓動が速い。

「……俺は、一人じゃなかったんだ」

 その瞬間、ユウの中の折れた心は、

 ゆっくりとだが確かに、もう一度立ち上がり始めた。

 ここからが反撃だ。

 奪われた自由を、取り戻すために。

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