第5章:決裂と選択
第5章:決裂と選択
朝の薄明かりが街に差し込む。瓦礫と焦げ跡が夜の戦いの痕を残していた。
カレンは屋上の端で端末を覗き込み、昨夜の戦況を再確認する。
ALの解析は淡く光り、残存暴徒の位置や民の避難ルートを示す。
だが、路地の端では、昨夜戦った自由派の一部が再び集結していた。
「人を守るために力を使う奴は、結局人を支配する!」
自由派リーダーの怒声が路地に響く。
カレンは深呼吸し、決意を固める。
(ユリウスは力で守る。正しい。でも私は……恐怖を生まず守る)
路地に飛び込む。瓦礫や破片がまだ散乱している。
自由派が突進する。手には即席の武器、燃える棒や鉄パイプ。
カレンは素早く避け、軌道を読み、刃でパイプを弾く。金属音が夜に響き渡る。
「民を右に誘導――迂回路確保!」
頭の中でALのデータを処理しながら、カレンは民を安全な方向に押す。
飛び散る瓦礫、火花、血――戦場は混沌としていた。
刃が自由派の攻撃を受け止め、手首に痛みが走る。微かな血が滲む。
「痛い……でも止める」
身体の悲鳴を押さえつつ、カレンは民を守ることに集中する。
その時、安全派の兵士たちも加勢に現れる。
「力で押さえ込め! 街の秩序を守れ!」
しかし、彼らは自由派の民衆に過剰な力を使い、民を恐怖させていた。
カレンは迷わず割って入り、兵士の動きを制御する。
「暴力は最後の手段! 無駄に傷つけるな!」
刃の一閃で盾を弾き、民に迫る兵士を制止する。
血と煙の中、カレンは理解する。
(ユリウスの力で守る道も正しい。でも、恐怖を生む力では本当の守りにはならない)
路地の戦闘が落ち着くと、ALが解析結果を示す。
「残存暴徒0、民避難完了率95%、兵士損耗率5%」
数字だけが正確に示す冷たい現実。
カレンは端末を握りしめ、深呼吸する。
(私は……私のやり方で守る。誰も傷つけないために)
その瞬間、自由派リーダーが目を見開く。
「……お前、本当に力だけじゃないんだな」
尊敬と悔しさが入り混じった視線がカレンを貫く。
彼女は短く頷き、路地の奥を見つめる。
(正しい方法は一つじゃない。でも、私は譲れない)
瓦礫と血の匂いが漂う路地で、カレンの影は長く伸びた。
戦いは終わった――しかし、思想の衝突はまだ終わっていない。




