第3章:迷路の攻防
第3章:迷路の攻防
街は静まり返っていたはずなのに、路地の奥ではまだ混乱が残っていた。
倒れた自転車、破れた看板、散乱する瓦礫。カレンは息を整え、端末を握りしめる。ALが光の粒子のように情報を解析し、次の動きを示していた。
「残り暴徒7。民4人、H通りで混雑。迂回経路を確保せよ」
カレンは深呼吸して夜の闇に溶ける。
(私はユリウスじゃない……力だけじゃ守れない。恐怖を生まずに守る方法がある)
◆
路地を進むと、暴徒の一群が突如現れた。
一人が棒を振り上げ、もう一人は石を投げる。瓦礫が飛び、破片がカレンの肩をかすめた。
「避けろ!」
カレンは瞬間的に足を跳ねさせ、壁に蹴りを入れつつ横に飛ぶ。
弾かれたゴミ箱が暴徒に当たり、思わず一人がバランスを崩す。
ALが端末越しに解析音声を流す。
「左前方2m、障害物を利用可能。右側通路は封鎖、迂回せよ」
カレンは瞬時に判断し、壁を蹴って斜め方向に飛ぶ。
突進してきた暴徒の刃先が空を切る。血が地面に跳ねる。致命傷ではないが、彼女の行動は明確に戦局を制御していた。
民は恐怖に震えながらもALの指示に従い、狭い路地を安全に抜ける。
カレンは暴徒たちを通路ごと誘導し、逃げ道を完全に確保する。
◆
一瞬の静寂。だが背後には別の暴徒が待ち構えていた。
「こいつ、どうやって逃がした……?」
小さくつぶやく声。カレンは無言で端末を確認。ALが解析する。
「左側障害物を破壊して、制圧可能」
彼女は瓦礫を蹴り上げ、暴徒の前に障害物を作る。飛び散った破片が暴徒の視界を遮り、攻撃のタイミングを狂わせる。
「これで終わりじゃない……」
声には迷いはない。
◆
路地の出口まで民を誘導し終え、カレンは深く息を吐く。
(ユリウスは力で守る。でも私は……恐怖を最小限に抑えて守る。道具も、仲間も、計算も――すべて使う)
背後で瓦礫が小さく崩れ、夜風が冷たく頬を撫でる。
ALが解析音声を流す。
「民全員避難完了。残存暴徒は3。次の標的はI通り」
カレンは端末を握りしめたまま、再び影の中に消える。
孤独で緊張の連続。だが、彼女の信念だけは揺るがない。
(誰も、傷つけさせない――そのためなら、私は何度でも立ち向かう)
闇に伸びる影は長く、路地の迷路の中で、唯一揺るがぬ灯火のように輝いていた。




