表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WHY?  作者: ハル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/49

第17章:残光の果て

第17章:残光の果て(完結章)

夜明け前の街は、瓦礫と煙で覆われ、戦闘の跡をそのまま残していた。

倒れた建物の間を、民衆が怯えながら歩いていく。遠くからは、避難誘導の声と泣き叫ぶ子どもの声が混ざって響く。

ユリウスは街の中心に立ち、破壊の余韻を眺めていた。静かな眼差しは、何も感情を映していないかのようだった。

(これでも……守るためなんだ……)

覚醒の力は圧倒的で、民衆に被害を与えた。しかしユリウスの中で、迷いも恐怖もなかった。

「守る」という理念だけが、まるで冷たい柱のように彼を支えていた。

瓦礫の間を歩くユリウスの背後に、ジャスパーの影があった。

彼は口元に微笑を浮かべつつも、胸の奥で複雑な感情を抱えていた。

(ロイが……壊れていくのを止められなかった。

 でも、ユリウスなら……)

ジャスパーはそう思いながら、ユリウスの行動を見守る。彼の目には尊敬と羨望、そしてほんの少しの恐怖が混ざっていた。

ユリウスの力は純粋で、苛烈だ。民衆を守るためなら、手段を選ばない。だが、その純粋さは、ジャスパーの歪んだ心を揺さぶる。

「……ユリウス、あんたは壊れないのか?」

小さく呟くジャスパーに、ユリウスは振り返り、静かに答えた。

「壊れる暇があったら、守る」

その言葉に、ジャスパーは何も言えなかった。ただ、胸の奥が締め付けられるような感覚だけが残った。

街のあちこちでは、安全派と自由派の残党が対立を続けていた。

安全派は、ユリウスの力を恐れ、制御や監視を試みる。

自由派は、彼の理念に共鳴し、民衆の中で支持を広げようとする。

しかし戦闘は終わった。新たな戦争の火種は、まだ小さな炎に過ぎない。

ユリウスは民衆の混乱を、ただ静かに見つめる。

彼の眼差しは、怒りでも恐怖でもない。

ただ、冷徹な決意が宿るのみだった。

(守る……たとえ、民が傷つこうと……俺は守る……)

瓦礫に隠れた子どもが泣き声を上げる。ユリウスはその場まで歩み寄り、膝をついて、手を差し伸べる。

手に触れた子どもは、恐怖と安心が入り混じった表情を浮かべた。

ユリウスは微かに頷き、再び街の奥へと進む。

屋上で、ジャスパーは一歩離れて立っていた。

夜空の星々が、街の破壊を淡く照らしている。

「次はどうなる……」

小さく呟くジャスパーに、ユリウスは振り返らずに答えた。

「次も、守るだけだ」

その言葉は祈りでも呪いでもなく、単純で力強い意思だった。

瓦礫の影に残る民衆は、恐怖と希望を同時に抱きながら、ユリウスの背中を見つめていた。

静かに夜が明け、街は少しずつ息を吹き返す。

民衆は傷つき、泣き、怒り、そして生き残った者たちは互いに助け合いながら歩き出す。

ユリウスの背中は遠く、瓦礫の中に溶けていくようだった。

しかし、彼の理念――“守る”――は、確実に残されていた。

ジャスパーはその影を追いながら、心の奥で決意する。

(歪んでもいい……利用でもいい……次は、絶対にユリウスを守る)

戦争は終わった。だが、思想の余波はまだ街に残っている。

ユリウスは変わらず、静かに、しかし苛烈に守る。

その影は、未来へと続いていく。

これでユリウス編は完結です!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ